第六話 17
劉ばあさんは言った。
「わ、わたくしめは姑太太や姑奶奶のお顔を拝み、親戚としての誼を全うしたかっただけでございます。そのうえ何かお伝えするなど滅相もない」
周のおかみは間髪いれずに、
「本当に何も言うことがないのなら別ですが、何かお話があるのなら奶奶に申し上げるとよいでしょう。太太に申し上げるのと同じことですからね」
と言い、劉ばあさんに目くばせをした。劉ばあさんはそれを「今お願いしなさい」という符牒だと悟ったものの、あまりにも恥ずかしいお願いのため、口を開くことすらできず顔を赤らめてしまう。だが、それでは家財を売り払い、長安から来た意味がなくなってしまう。
劉ばあさんは羞恥を振り捨てて言った。
「道理から申せば、初めて奶奶にお目にかかったのですから申し上げるべきではないのですが、遠路はるばるここまで参った以上……」
と言上していると、
「東の邸の小大爺がいらっしゃいました」
という声がする。
熙鳳は急いで劉ばあさんを押しとどめ、「おっしゃらなくて結構よ」という一方、「蓉小大爺はどこにいるの?」
と尋ねた。
すると軽快な靴音が聞こえてき、十七、八歳の少年が入ってきた。
顔立ちは清らかで整っており、身なりはすらりとしていて、衣服は美しく、冠は華やかに、軽やかな裘に玉飾りの帯を締めていた。
劉ばあさんは座ることも立つこともならず、隠れようにも隠れ場所が見つからない。
熙鳳は笑いながら言った。
「そのままお座りになって。これは私の甥です」
それを聞いた劉ばあさんはようやくもじもじしながら遠慮がちに炕の縁に腰をかけた。
賈蓉はうやうやしく挨拶すると、にこやかに言った。
「父から遣わされてきたのですが、明日お客さまをお招きするので、先だって嬸子さまが王家から任官の返礼にいただいた玻璃の炕屛をちょっとお借りしたいとのことです」
熙鳳の眉間に皺がよった。賈蓉は慌てて付け加える。
「すぐ返す、とのことなので」
「いらっしゃるのが遅かったわね。もう昨日、人にあげちゃいました」
賈蓉はそれを聞くなり、くすくす笑いながら、炕の前で跪くふりをして言った。
「嬸子さまが貸していただかないと。かわいい甥がこっぴどく打たれるはめになりますよ。どうかお慈悲を!」
熙鳳は笑って言った。
「まったく、王家のものだったら何だっていいの? 寧国府にだっていい物はたくさんあるっていうのに。人さまのものをすぐ持って行こうとするんだから」




