第六回 13
すると二人が炕のための卓を運びこみ、炕の上に置いた。卓には肉や魚をのせた皿が山盛りになり、箸がつけられている皿もいくらか見受けられた。
残り物が下げ渡されたのだ、と劉ばあさんは思う。次々と運ばれてくる華美な料理を板児がしきりに目で追っている。とうとう辛抱ができなくなったのだろう。
「肉が食べたい!」
と一声叫んだ。さほど広くない室のなかにその声が響く。一瞬の迷いが劉ばあさんに生じる。
思わず孫の腕に目がいった。触れれば折れそうなほどに痩せている。言うまでもなく板児はこの上なく愛しい孫である。だが、自分でも分からぬうちに劉ばあさんは板児の頬を打っていた。
呆然とする板児。それは配膳をしている丫鬟たちも同じだった。さきほどとはまったく質の違う沈黙がおとずれる。
劉ばあさんは丫鬟たちから少し離れた場所に板児を連れてゆき、顔を近づけながら小声で言った。
「いいかい。私たちはこんなちんけな食事を食らいにきたんじゃないんだ。あんたは王家の跡継ぎだよ。家を守るために今は我慢おし」
そう言い終わるとすぐに周のおかみが満面の笑顔でやってくる。すぐさま劉ばあさんを手招いた。劉ばあさんは板児を連れて炕を降りると、中央の室へと入った。
そこで周のおかみは劉ばあさんに耳打ちする。
「劉のおばあさん。覚えておいて。くれぐれも二の奶奶に粗相のないように」
「分かってるよ」
劉ばあさんはそっけなく言った。
「いえ、おばあさんは分かってないわ。鳳の姑奶奶は本当に恐ろしい人なのよ。あの方の前に出たら拝礼をし、必ずお礼を申し上げること。意地汚いお願いをしないこと。姑奶奶は賤しい人間をひどくお嫌いになられますからね。それから…」
劉ばあさんは周のおかみの話をほとんど聞いていなかった。
姑奶奶、姑奶奶と大そう持ち上げられているけれど、ただの小娘じゃないか。そう思おうとする。さきほどの平児とかいう一番の丫鬟のことも最初はそのめかしこみように少しばかり驚いたけれども、慣れてしまえば豚の尻尾の先の毛ほどにしか感じない。
何にせよ、なめられてはだめだ。私たちのような貧乏人がやつらのような金持ちを圧倒するには威勢しかないのだから。
扉の外側に掛けられた銅の鉤には、真紅の地に金の花模様がほどこされた簾がかかっていた。
劉ばあさんは自らの頬を張り、導かれるままに扉をくぐった。




