表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅楼夢  作者: 翡翠
第六回 賈宝玉 初めて雲雨(うんう)の情(じょう)を試(こころ)み、 劉姥姥(りゅうばあさん) 一(ひと)たび栄国府へ進む
71/155

第六回 7

劉ばあさんは周のおかみと向き合いながら、わずかの間にこれまでのことを思い出していた。そしてもう一度覚悟を決める。

単純たんじゅんなことだ。狗児はあてにならない。私がここで一たび何かをたがえれば娘も孫も路頭ろとうに迷う羽目はめになる。

劉ばあさんはもう一度、周のおかみをなめるように眺めた。まどっている、と判断はんだんした。

まよっているのではない。まどっている。こういう相手には一言念を押しておくにかぎる。背中せなかしてやるのだ。そう。一言でいい。

「どうだろう。二の姑太太おくさまにはお会いできそうかね」

 それを聞いたとたん、周のおかみは強張こわばった顔をくず笑顔えがおになった。

「おばあさん、安心してちょうだい。こうして遠路えんろはるばる誠心誠意せいしんせいいたずねてくださったのだもの。あの慈悲深じひぶかい仏さまのような姑太太おくさまにお会いできないわけがないでしょう?」

 周のおかみはそう言ったが、劉ばあさんはそこにえ切らないものを感じた。そして考えるこのおかみは、私のような薄汚うすぎたなばあさんを王夫人に取り次ぐのをためらっているのだ。

 だが、無下むげにはことわれない。なぜか。

一つは夫である周瑞が田地購入でんちこうにゅうおりにもめたさい、狗児の父の田成が世話をしてやったこと、つまり恩があるからだ。そして何よりおかみは見栄みえりたいのだろう。「私のおかげで太太おくさまに会えたのだよ」という見栄を。

「周の姐姐おねえさんのお助けをどうにかりれないかねえ」

 劉ばあさんはあえて下手したてに出た。思ったとおり、相手はゆるんだほほをさらにゆるめて言った。

「本来お取次おとりつぎをするのは私の役目やくめではないの。私たちはそれぞれに仕事を持っていて、たとえばうちの男たちは春と秋の地租ちそのことだけ気にして、あとは暇なときに小爺ぼっちゃんたちを連れて出かけるくらいのもので、私は太太おくさま奶奶わかおくさまさまが外に出かけるときに付き添うだけ」周のおかみはここで一息つき、「あなたが太太おくさまのご親戚で、私のことを頼ってくれたから、決まりをやぶって太太おくさまに引き合わせてあげる」

 ともったいぶりながら言った。

 劉ばあさんは思わず笑いそうになってしまう。あからさまにおんを着せようとしていた。何かしてもらいたいわけじゃない。ただ恩を感じさせたいのだ。

「ありがとう。周の姐姐おねえさん

 そう微笑ほほえみを返した。憐れさを感じさせるほどの微笑みを。笑うだけなら免費ただである。

「ただ一つだけ」

 周のおかみが意味いみありげに言った。

「これだけは五年前とは違っているの。今栄国府を取り仕切っているのは璉さまの奶奶わかおくさまなのよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ