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紅楼夢  作者: 翡翠
第五回 賈宝玉 太虚境(たいきょきょう)に神遊(しんゆう)し 警幻仙(けいげんせん)紅楼夢(こうろうむ)を曲演(きょくえん)す
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第五回 11

 言い終わらないうちに数人の仙女が部屋から出てきた。蓮の花のような荷袂かべいひるがえし、羽衣ういはふんわりとたおやかに、春の花のように繊細せんさいな美しさ、秋の月のように魅惑的みわくてきだった。

 だが、仙女たちは宝玉を見るやいなや、口々に仙姑に文句を言い始めた。

「私たちは姐姐おねえさまが直々にお呼びになったお客さまがどんな方かと思って急いで出迎でむかえにまいったのですよ。それに今日のこの時分じぶんはいつぞやか姐姐おねえさまがおっしゃっていた絳珠妹子こうじゅさん生魂いきみたまが来られるとおっしゃっていたでしょう? だから私たちは首を長くして待ちのぞんでいたのです。それなのに何でこんな濁物だくぶつを連れてこられて、この清浄せいじょう少女しょうじょせかいけがされるのですか?」

 宝玉はこれを聞いて、おどろおそれれ、ここから立ち去りたいと思ったが足がすくんでできなかった。何より自分がとてつもなくけがれていることを感じ、じ入ったのだった。

 それを見かねたのか、警幻仙姑は急いで宝玉の手を取り、仙女たちに向きなおって笑いかけた。

「あなたたちには事情じじょうをおはなししていませんでしたね。今日はもともと栄国府へ行って、絳珠をお迎えしようと思っていたのですが、寧国府を通りかかったときちょうど寧国公と栄国公のれいにお会いし、こう言われたのです。

「われらの家は本朝ほんちょう創始以来そうしいらい、代々名声めいせい富貴ふうききそい、百年の間続いてきましたが、もはや命数めいすう挽回ばんかいのしようもありません。われらの子孫しそんは数多くおりますが、お恥ずかしながら本当の意味で家業かぎょうまかせるにる人間はいないのです。

ただ一人、摘孫ちゃくそんの宝玉だけはひねくれものでつかみどころがありませんが、元来賢がんらいかしこ聡明そうめいな子なので、一縷いちるの望みがございます。ですが、家運傾かうんかたむき、宝玉を教えみちびくに適当てきとうものがおらぬというていたらく。われら二人顔を見合わせてはなげいておりました。

今、幸いにも今仙女さまとお会いすることができました。どうか宝玉めに情欲じょうよく声色せいしょくのことについておしさとしください。さすれば宝玉は迷いの道より抜け出し、正しい道に入ることができるでしょう。もしそれがかなえばわれら二人これ以上に幸せなことはありませぬ」

そうおっしゃられたので、慈心じしんをかきたてられ、ここへ連れてまいったのです。そこでまず、かの家の上中下三等じょうちゅうげさんとうに分けた生涯の記録をじっくり読ませてやったのですが、これでもまださとらぬようなので、こちらまで案内あないし、酒食しゅしょく声色せいしょくまぼろしを一とおり味わってもらうことにしたのです」


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