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紅楼夢  作者: 翡翠
第五回 賈宝玉 太虚境(たいきょきょう)に神遊(しんゆう)し 警幻仙(けいげんせん)紅楼夢(こうろうむ)を曲演(きょくえん)す
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第五回 10

その裏には古いびょうがあり、その中で美しい女性が座り、一人経を読んでいる。

そのはんじには、


勘破かんぱす 三春の景長からずを

緇衣しいにわあらた昔年せきねんけわい

あわれむ繡戶侯門しゅうここうもんむすめ

ひと青燈古仏せいとうこぶつかたわらに


 その裏には氷山ひょうざんの上にめす鳳凰ほうおうが乗っている。その判じにしたがえば、


 凡鳥ぼんちょうひとえ末世まっせより来たり

 みなこのひとの才を愛慕あいぼするを知るも

 一従二令三人木いちじゅうにれいさんじんぼく

 きて金陵きんりょうに向かい 事更ことさらあわれなり

 

 さらにその裏には、廃村はいそんさびれた宿屋やどやで美人が糸をつむいでいる。その判じは次の通り。


 勢敗れて貴を云うかれ

 家亡いえほろびて しんろんずるかれ

 たまたま劉氏りゅうしたすけらるるに

たくみに恩人おんじんうを得たり


詩の後には一鉢ひとはちらんのそばに、鳳冠ほうかんをかぶり、霞帔かひを着た美しい女性が描かれている。その判じにいわく、


 桃李とうり 春風しゅんぷう 子をむすおわるも

 到頭誰ついにだれかん一盆いちぼんらん

 氷水ひょうすいごとく好きもむなしく相妬あいねた

 げて他人たにんのために笑談しょうだんとなるのみ


 また詩の後には高楼こうろうが描かれ、美人がはりで首をくくっている。

その判じに言う。


 情天情海幻情じょうてんじょうかいげんじょうの身

 情既じょうすで相逢あいあわば かならいんつかさど

 言うかれ 不肖ふしょうえいよりづと

 造釁開端ぞうきんかいたんじつねい


 宝玉はさらに読み進めようとしたが、仙姑は彼が優れた才能さいのう智慧ちえの持ち主であることを知っていたので、天機てんきれることをおそれ、そっと冊子さっしおおうと、宝玉に微笑ほほえみながら言った。

「もっとこの素晴らしい景色を楽しみましょうよ。そんな悶葫蘆なぞときなんて放っておいて」

 宝玉はぼんやりとしたまま、自分でも分からないうちに冊子を投げ捨て、また警幻仙姑の後についていった。

 たますだれ刺繍ししゅうのほどこされたまく、その広間全体にきらびやかな装飾そうしょくがほどこされ、のきにも精緻せいち彫刻ちょうこくきざまれていた。朱色しゅいろとびらは光にれ、黄金おうごんは床にめられ、雪は宝石の窓に照りかえっている。

 仙境せんきょう草花くさばな馥郁ふくいくと香り、筆舌ひつぜつくしがたい。

 仙姑は微笑ほほえみながら言った。

「すぐに出てきて大切なお客様きゃくさま出迎でむかえてちょうだい」


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