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紅楼夢  作者: 翡翠
第四回 薄命の女 偏(ひとえ)に薄命の郎(おとこ)に逢い  葫蘆(ころ)の僧 乱(みだ)らに葫蘆(おろか)な案(さばき)を判(くだ)す
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第四回 5

「私に分かると思うか?」

 雨村の挑発的ちょうはつてきな言いように鯫生は冷笑した。

「かの丫頭むすめ老爺だんなさまの恩人ですよ。他でもない葫蘆廟ころびょうとなりに住んでいたしん老爺だんなさまの娘子むすめごに他なりません。その幼名ようみょう英蓮えいれん

 雨村は驚きを隠せずに言った。

「そんな、あのの子とは! 五つのときにかどかわされたと聞いていたが、どうして今ごろになって売られてしまったのだろう?」

 鯫生は言った。

「こうした人さらいは十二三になるまでの子を養育よういくし、他のさとへ売りとばすのです。当時、私たちは英蓮と毎日遊んでいて、良く存じておりました。それゆえ、七八年の時を経て、もちろん少しは容貌ようぼうが変わっていましたが、おおまかに昔のままだったので、英蓮だと分かったのです。何よりそのひたいには母親の腹から生まれたときそのままの小さな赤いあざがあったので間違いはありません」

「だが、おまえはなぜそのことを知ったのだ」

 雨村は疑いのまなざしを送る。

「人さらいが私の家に間借りしていたからです」鯫生はこともなげに言った。「人さらいが外出したときにすきを見て英蓮にいろいろと尋ねてみました。ところが英蓮はなかなか口を開きません。ときたま少し話すと、人さらいは実父じっぷでその借金しゃっきんを返すため、売られるのだと言うばかりです。私は人さらいが英蓮を殴打おうだするのを見ておりました。とても本心とは思われません。あきらめずに何度もなぐさめましたが、そのたびに「私は子どものときのことなんて覚えてない!」と言うのです。ですが、そのころにはこの子が英蓮だという確信かくしんがありましたから、数日眺めておりますと、ちょうどそのころ馮の公子わかぎみ銀子かねを使って英蓮を受けだしました。英蓮は酔っぱらって寝ている人さらいを横目に見ながら、「私の罪業ざいごうは今日果たされたのだわ!」と安堵あんどのため息をつきました。ですが婚礼こんれいまでに三日かかることを知ると、また落ちこんでしまうのでした。私は我慢がまんできなくなり、人さらいが立ち去るのを待って、妻になだめさせました。「馮の公子わかぎみは必ず決められた日に迎えに来てくれるよ。丫鬟じじょなんかではなく、めかけとしてね。それに馮の公子わかぎみ容貌ようぼう人格じんかくもこの上ないくらい優れていて、お金もそれなりに持っているのに、女性の来客らいきゃくすら好まなかったんだよ。それでも破格の値段であんたを受けだしたんだ。これで分かったろう。あと三日だよ。辛抱しんぼうおし」

 それを聞いて英蓮もようやく落ち着いたらしく、自分がどうすべきか考えているようすでした。ですが、運命とはままならぬものです! その翌日に英蓮は第二の家へ売られてしまったのですから。その薛家が馮の公子わかぎみよりも良い人であったなら、何の問題もなかったでしょうが、薛の公子わかぎみは「呆覇王ほうはおう」とあだなされており、中華ちゅうかでもっとも金を湯水ゆみずのように使い、色欲しきよくおぼれるようなやからです。その名高なだかい薛の公子が英蓮を連れ去ったばかりか、馮の公子わかぎみを打ち殺したのです。英蓮の生死すらいまだ分かりません。馮の公子わかぎみはたいそうな金を使ったばかりか、思いをげられず、命までうばわれたのです。これを嘆かないものがありましょうか!」


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