表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅楼夢  作者: 翡翠
第四回 薄命の女 偏(ひとえ)に薄命の郎(おとこ)に逢い  葫蘆(ころ)の僧 乱(みだ)らに葫蘆(おろか)な案(さばき)を判(くだ)す
34/58

第四回 4

雨村がまだ読み終わらないうちに、「王の老爺だんなさまがいらっしゃいました」という知らせを聞いた。雨村は急いで衣冠いかんを整え、来客を出迎えた。食事を食べ終わるほどの長い時間が経った後、雨村は戻り、姿勢を正した後、鯫生に詳しく尋ねた。鯫生は言った。

「この四つの家はそれぞれ親戚しんせきとして結びついており、一家いっけさかえれば、他の三家さんけも栄え、一つがおとろえれば他も衰えるといった具合ぐあいで、いま人をなぐり殺したとされているせつは護官符に書かれているところの「豊年大“雪”」とあるあの薛家に他なりません。他の三家はもとより、その他の地域に住んでいる親戚や友人も少なくありません。これらは“情”や“縁”で結びついておりますが、老爺だんなさまはどのように下手人げしゅにんるつもりでしょうか?」

 鯫生があたかも自身が太公望たいこうぼう張良ちょうりょうなどのいにしえ名軍師めいぐんしであるかのごとく、すまし顔で言うので、雨村は半ばあきれながら笑った。

「それでは老師せんせいはどうしたらよいと思われるかな? おそらく老師せんせいは下手人の行方もよくご存じなのだろう」

率直そっちょくに申し上げれば、私は下手人の行方を知っているばかりでなく、死鬼しきとなった買い手のこともよく知っております。詳しく申し上げますので、老爺だんなさまはよくお聞きなされませ。殴り殺されたのは、地元の郷士ごうしの息子で、名を馮淵ふうえんと申します。父母ともに亡くし、きょうだいも無く、わずかばかりの財産を守りながら暮らしておりました。十八九を過ぎておりますが、男色だんしょくを好み、女色にょしょくには興味のない様子でしたが、これも前世ぜんせい因果いんがというものでしょうか? 偶然ぐうぜんにもかの丫頭むすめい、一目惚ひとめぼれしてしまったのです。馮の公子わかぎみ丫頭むすめめかけとし、これから男には近づかず、二人目を娶ることもしないと誓いました。そのため家中で話し合い婚礼こんれいの日取りを三日後としたのです。ですが、その人さらいが薛家にもその丫頭むすめを売ってしまうとは誰が予想したでしょうか? 人さらいは両家りょうけから銀子かねを奪って逃げようとしましたが、逃げきれず、両家に捕まえられ、半殺しにされましたが、両家とも銀子かねを取り返すことはせず、丫頭むすめ手中しゅちゅうに収めようとしました。その取り合いの末に、薛の公子わかぎみが馮の公子わかぎみを手下に命じて殴り倒させたのです。馮の公子わかぎみはすぐさま馮家へ運ばれましたが、三日後に亡くなってしまいました。薛の公子わかぎみみやこへ上る日をすでに決めていて、馮の公子わかぎみを殴り殺し、丫頭むすめを連れ去ったのち、何もなかったかのようにみやこに出発しました。人を殺したことなど薛家にとってはごくごく些細ささいなことです。今ごろきょうだいや使用人たちがうまく処理しているでしょう。……と、今はそのことは横におくとして、老爺だんなさまはこの売られたこの丫頭むすめとはいったい誰だと思いますか?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ