第四回 4
雨村がまだ読み終わらないうちに、「王の老爺さまがいらっしゃいました」という知らせを聞いた。雨村は急いで衣冠を整え、来客を出迎えた。食事を食べ終わるほどの長い時間が経った後、雨村は戻り、姿勢を正した後、鯫生に詳しく尋ねた。鯫生は言った。
「この四つの家はそれぞれ親戚として結びついており、一家が栄えれば、他の三家も栄え、一つが衰えれば他も衰えるといった具合で、いま人を殴り殺したとされている薛は護官符に書かれているところの「豊年大“雪”」とあるあの薛家に他なりません。他の三家はもとより、その他の地域に住んでいる親戚や友人も少なくありません。これらは“情”や“縁”で結びついておりますが、老爺さまはどのように下手人を召し取るつもりでしょうか?」
鯫生があたかも自身が太公望や張良などの古の名軍師であるかのごとく、すまし顔で言うので、雨村は半ばあきれながら笑った。
「それでは老師はどうしたらよいと思われるかな? おそらく老師は下手人の行方もよくご存じなのだろう」
「率直に申し上げれば、私は下手人の行方を知っているばかりでなく、死鬼となった買い手のこともよく知っております。詳しく申し上げますので、老爺さまはよくお聞きなされませ。殴り殺されたのは、地元の郷士の息子で、名を馮淵と申します。父母ともに亡くし、きょうだいも無く、わずかばかりの財産を守りながら暮らしておりました。十八九を過ぎておりますが、男色を好み、女色には興味のない様子でしたが、これも前世の因果というものでしょうか? 偶然にもかの丫頭に逢い、一目惚れしてしまったのです。馮の公子は丫頭を妾とし、これから男には近づかず、二人目を娶ることもしないと誓いました。そのため家中で話し合い婚礼の日取りを三日後としたのです。ですが、その人さらいが薛家にもその丫頭を売ってしまうとは誰が予想したでしょうか? 人さらいは両家から銀子を奪って逃げようとしましたが、逃げきれず、両家に捕まえられ、半殺しにされましたが、両家とも銀子を取り返すことはせず、丫頭を手中に収めようとしました。その取り合いの末に、薛の公子が馮の公子を手下に命じて殴り倒させたのです。馮の公子はすぐさま馮家へ運ばれましたが、三日後に亡くなってしまいました。薛の公子は京へ上る日をすでに決めていて、馮の公子を殴り殺し、丫頭を連れ去ったのち、何もなかったかのように京に出発しました。人を殺したことなど薛家にとってはごくごく些細なことです。今ごろきょうだいや使用人たちがうまく処理しているでしょう。……と、今はそのことは横におくとして、老爺さまはこの売られたこの丫頭とはいったい誰だと思いますか?」