第十三回 7
あの夜を境に、秦氏は寝こんでしまった。ことがことだけに、栄府にはまだ知らせず、寧府でも知らせるのは限られた者だけにして、数日を経た。
瑞珠が体を崩してしまったため、秦氏の身の回りの世話は、主に宝珠がすることとなった。
賈蓉と尤氏が交互に容体を見に来る。目が覚めているときには。秦氏は夜着のまま、いかにもすまなそうに応対するのだった。
秦氏が伏してから三日が経つと、父である秦業が栄府の秦氏の上房を訪れた。
「秦業さま!」
宝珠は慌てて拝礼する。
「そんなにかしこまらなくてもよい」
秦業はうなだれたように言う。それから秦氏の方に目をやり、それがひどく痩せこけているのを見るや、大声で哭いた。
「……秦業さま。お悲しみにならずに。きっと奶奶はよくなられます」
秦業は頭を激しく振った。
「儂だ……。儂が悪かったのだ」
宝珠はそっと秦業の肩に手を置く。
「そうではありません。奶奶がお体を悪くされたのは……」
宝珠は少し言葉を詰まらせたが、やがて決したように言った。
「先年、奶奶の弟君が義塾で騒ぎを被られたのです。そのために……」
「ああ……。ああ……」
宝珠としては慰めの言葉をかけたつもりだったのだが、考えてみれば秦業にとっては秦氏も子であり、秦鐘も子である。親が悲しむのは当然ではないか。
宝珠は悔いたが、もう元には戻せない。
「お茶をお入れいたします。しばしお待ちください」
宝珠は隣の房へ向かいながら、ちらりと秦業を見やった。秦業は主の手を握り、滂沱と涙を流している。
「秦業さま……」
壁を隔てて秦業がすすり泣く声を聞いていると、こう問う声が聞こえてきた。
「そこからでいい。儂の話を聞いてくれないか?」
急な願いに宝珠が呆然としていると、
「宝珠は聞かない方がいい」
ささやくような声が頭上から聞こえた。寧府の公子、賈蓉が後ろに立っていた。




