第十三回 2
哥哥か姐姐がいてくれたら。賈蓉はいつもそれを考えていた。
誰かに頼りたかったわけではない。だが、せめて責を免れたかった。いつも寧府に難が生じたとき、巡り巡って賈蓉にお鉢が回ってくる。そうでなくても、それぞれの愚痴を聞かされるのはいつも賈蓉だった。母親が悲しむから。太爺の怒りがおさまらないから。
寧府の悲しみや怒りは、誰かが受けとめなければならない。そうでなければ母親も太爺も、その奔流のような情に耐えられないから。いつも僕は笑みを浮かべておかなければ……。
父親は不埒だと言われる。寧府の当主として器が足りないとも。だが、僕だけは父親の思いを分かっている、賈蓉はそう思っていた。
太爺の賈敬は世を棄てておきながら、当主の座を棄てながら、寧府のありかたを嘲るように、父親の賈珍に当たり散らす。それでも父親はいやごと一つ言わない。誰もそれを分かっていない。
太爺さまを寧府にかかわらせなければいいのに、そう考えることもある。当の本人が仙になりたいと願っているのだ。泰山のふもとにでも棄ててくればいい。
いつも、そこまで考えて、賈蓉は首を振る。そんなことが父親にできるはずがない。だって、優しすぎるから。
秦氏との良からぬ噂も、無理からぬことだ。賈蓉は他人事のように思ってしまう。父親と母親には情がなく、父親は人並み以上に情を求めている。だが母親も……。
考えれば考えるほど心が爆ぜてしまいそうになる。僕だって、僕だって……。
――いっそ……。
いっそ奪ってくれたらいいのに。そうすれば新しい媽媽ができるから。




