第十二回 17
年の瀬を過ぎると、ますます賈瑞の病は重くなり、一つ年経るめでたさなど毫も感じさせぬまま、代儒の一家は春を迎えた。
「ここに至っては独参湯を飲ませねばならぬだろう」
代儒はうなるように言った。傍らの賈瑞は、ひっきりなしに咳きこみ、細い息すらも絶えそうになっている。
「そんな難しいことばかりおっしゃって」
代儒の妻が顔を暗くして言った。
「うちのどこにそんなものを買う財があるというのです?」
「……分かっておる!」
代儒は叫んだ。
「分かっておるとも。だが、そうでもしなければこやつは……」
代儒はつい先ごろまで折檻を加え続けた孫を見やり、目尻をぬぐう。
「では……」
「栄府の徳にすがるより他あるまい」
「璉の大爺さまは明日ご出立とのことにございます」
平児が淡々と二人に伝える。
「そう、それではこちらからも路銀を用意しないといけないわね。今晩にもお渡しするわ」
熙鳳は黙りこんでいる。
「奶奶」
平児はそっと耳もとでささやいた。熙鳳はすぐに笑顔をつくり、
「ご温情感謝いたします。きっとあの人も喜びますわ」
「……それから」
平児は言葉を選ぶように言った。
「賈代儒さまが尊孫のご病気のために独参湯をいただきたいとお願いに来られております」
王夫人は眉を顰めた。
「それほどお悪いの?」
平児は熙鳳をちらりと横目に見ながら、
「そのようです」
と短く答えた。
「おかわいそうに。鳳ちゃん、二両ほど持たせてあげてちょうだい」
王熙鳳は小さくうなずくと、平児に一瞥をくれて王夫人のもとを辞去した。




