第十二回 16
賈瑞はそれから先も熙鳳のことばかり考えていた。だが、さすがの賈瑞もあんな目にあった後で、再び栄府に赴く気にはなれなかった。
だが、賈蓉たち二人には、日々顔を合わせるはめになった。証文を盾にいくども銀子の取り立てに来る。その度に代儒の目を盗まなければならなかった。
賈瑞は幾度も頭を下げ、許しを乞うたが彼らの訪問は絶えることがなかった。
昼には科挙のための課業をこなさねばならず、二十歳に満たぬ、妻を持たない身には夜はあまりに寂しく、あまりに長かった。
「鳳姐! 鳳姐!」
夜具のなかでその名を小声で呼べば、おのずから指は股をまさぐり、精を漏らすことを免れない。
このような日々を過ごしているうえに、極寒のなか、二度もひどい目にあったのも祟って、賈瑞は病に臥せってしまった。
胸は張り裂けんばかりに苦しく、何を食べても味はしない。足は綿のようにもつれ、目は酢が入ったようにしみる。夜は熱に浮かされ、昼は絶えずだるかった。小便には精が交じり、痰を吐けばいつも血が滲んでいた。こうした両手で数え切れぬほどの症状がわずかの間に出そろってしまった。
ついには体すら支えられなくなり、ばったりと倒れこんだ。
目をつむれば、魂が夢に引きずられ、現の境も定かでない。口を開けばうわ言ばかり。異常なほど何かに怯え、苦しげに胸を押さえる。
そんな賈瑞に、代儒らもあらゆる手立てを尽くした。医の心得のある者を呼び、手当てを受けさせ、肉桂・附子・鱉甲・麦冬・玉竹などの薬を何十斤も飲ませたが、少しの効き目も見えなかった。
「鳳姐……」
まどろみのなかで、賈瑞は何度もそうつぶやきながら、天井に向かって手を伸ばす。推何はその度に彼の手を取り、そっと頬に当てるのだった。




