第十二回 12
そんなふうにあれこれ疑っていると、冷気にまぎれて闇の中から人影がやってくるのが見えた。
――鳳姐!
賈瑞は人影を見ると、飢えた虎のように見境がなくなり、戸口にさしかかるや、ひしと抱きしめて叫んだ。
「ああ、嫂子! 待ちすぎて死にそうだった!」
と吼えながら、そのまま抱えこむようにして炕の上に押し倒し、口づけし、相手の褲子を引き下ろすと、「ねえ!」、「お願い!」などとめちゃくちゃにわめいた。しかし、その人影はただ押し黙り、毫も動かない。
賈瑞はやおら褲子を脱ぐと、そのままことに及ぼうとした。
そのとき、光がさっと差しこんだ。賈瑞は手のひらでそれをさえぎりながら、その源を探った。
「そこにいるのは誰だ!」
激しく叫ぶ男の声におののきながら、目を細めた。
――誰だ?
まばゆさを振り払うようにまばたきすると、戸外には賈薔が手燭をかざしたままこちらを見据えていた。
「瑞の大叔さんが僕なんかを抱きたいってさ」
炕の上では先ほど抱きかけた相手が笑っていた。
――賈蓉!
賈瑞はまたたく間に顔を赤らめた。どうしてよいか分からないまま、身を翻し逃げようとしたが、その細腕を賈薔にがっしりと掴まれた。
「逃がすかよ。もう璉の二の嬸子は太太のところへ訴え出ているんだ。おまえがわけもなく嬸子に言い寄ったってな」
賈薔は賈瑞の襟首をつかまえて言った。
「二の嬸子はひとまず脱身の計を用いておまえを待たせていた。おまえはまんまと足止めされたのさ」
賈瑞の顔から血の気がひいてゆく。
「おかわいそうに。太太は怒りで気を失われたぜ。俺があんたを捕まえにきた意味が分かるだろう?」
賈薔は白い息とともに言った。
「もう言い逃れはできない。おれと一緒に太太のところに行くんだ」




