表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅楼夢  作者: 翡翠
第二回 賈夫人 揚州城(ようしゅうじょう)において逝去し 冷子興(れいしこう) 栄国府(えいこくふ)を演説(ものがた)る
12/134

第二回 4

「初代の栄国公えいこくこうが亡くなられた後のことはご存知でしょうか?」

「あらかたは知っているつもりだが……」

「栄国公が亡くなられたあと賈代善かだいぜんさまが官位を引き継ぎ、金陵の世継よつぎである史家しけのお嬢さまをめとり、賈赦かしゃ賈政かせいという二男をもうけられました。賈代善さまはすでにお亡くなりになっていますが、賈赦さまが官位を引き継がれました。ことに賈政さまは幼いころから学問が非常にお好きで、栄国公や賈代善さまにも大変気に入られておいででした。そんな折、賈代善さまが臨終のとき上奏なされると、そのことに心を痛めた天子てんしさまが、賈赦さまのみならず、学問の名高なだか賈政かせいさまにも官位かんいたまわるようご下命かめいになったのです」

「そこまではぞんじている。ことに賈政さまはかなりの高位こういにのぼられたということだった」

「ええ、初めは主事に任官にんかんされていましたが、すでに員外郎いんがいろうにまでのぼられたとのこと。ご夫人の王氏との間にはご子息しそくは三人おられます。ご長男は賈珠かしゅさまで、十四歳で秀才しゅうさいの資格を得られ、二十歳にならないうちに妻をめとり、一粒種ひとつぶだねを残されましたが、若くして他界たかいされています。二人目はおじょうさまで、それがめでたくも正月元旦のお生まれ。それから末子まっし男子だんしがおられるのですが、その方がなんと色とりどりの玉を口にふくんで生まれてきたそうなんです。その玉の表面にはたくさんの文字が刻んであったということで賈宝玉かほうぎょくと名付けられたそうですよ! なんと不思議なことではありませんか」

 雨村は笑いながら言った。

「たしかに不思議だ! それだけの生い立ちならきっとただ者じゃないんだろうね」

「ええ、たしかに」

 子興は含みのある言い方をした。

「一歳になったとき、この世のあらゆるものを前においてつかませると、他の物にはめもくれず、べに、かんざしやら白粉おしろいやら腕輪うでわなど女性の道具ばかりおつかみになったそうなんです。それに賈政さまが大変ご立腹りっぷくされたそうで、こいつは将来きっと酒色しゅしょくにふけるやからになるとおっしゃったそうですよ。ところがおばあさまの史太君したいくんは大変この子を可愛がられ、目に入れても痛くないと言った様子。七つ、八つになった今では頭がいいばかりかたいそうないたずらっ子で、百人が束になってもかなわないほどです。で、ここから先が振るってるのですが、女の子の身体は水でできてる。男の身体は泥でできてる。ぼくは女の子を見るとさわやかな気持ちになるけど、男を見るとくさくて胸がむかむかする、とのたまってるそうですよ。将来、色魔しきまになるのは間違まちがいなしでしょうね」

 雨村は子興の話をさえぎってかぶりを振った。

「いや、それは違う。あなたたちは、その子の因縁いんねんが分かってないのだ。賈政さまもしかり。あやまって淫魔いんまのたぐいと見られているようだがそれは違う。学問がくもん修養しゅうようをきちんとおさめたものでなければそのいきまでは分からない」

 子興はいまいちに落ちなかったが、その意図いとを深く知りたいと言った


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ