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紅楼夢  作者: 翡翠
第八回 通霊に比(なら)べ金鶯(きんおう)微(かす)かに意を露(あら)わし、 宝釵を探り、黛玉半(なか)ば酸(す)を含(ふく)む。
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第八回 8

 宝玉はそれを聞くと意地悪いじわるそうに笑った。

「ああ、姐姐おねえさま項圈くびかざりにも八字はちじが入ってるんですね。それは僕もじっくり見せてもらわないと」

 宝釵は微笑みながらため息をついた。

「この子にわないで。文字なんてどこにもありませんわ」

姐姐おねえさま、そんなに僕が信用しんようできませんか?」

 宝玉がそう言いながら、なおもにこにこするので、宝釵はやむをえず、

「ある人から縁起えんぎのよい対句ついくをいただいたのでっただけですよ。そうじゃないといたずらにおもいだけで気分きぶんのよいものではありませんわ!」

 そう言いながらボタンを外すと、ゆったりとしたあかあわせからきらびやかな宝石ほうせき黄金おうごんが散りばめられた瓔珞くびかざりを取り出した。

 宝玉はいそいでそのくさりを持ち、見てみると、篆書てんしょで四つの文字が両面りょうめんられており、そのいずれもが吉祥きっしょうを表していた。


 音註おんちゅう

 

 はなさざれ、てざれ

 芳齢ほうれいなががん

 

 宝玉はそれを見て、二回続つづけて声に出して読んだ後、さらに自分の宝玉の刻字こくじも繰り返して読むと、笑いながら尋ねた

姐姐おねえさま、やっぱり私のものとついになっているんじゃないですか?」

 鶯児は笑いながら言った。

「それはおかしな和尚おしょうさんからもらったそうですよ。それによれば金で作られたものにそれをきざんで……」

宝釵は鶯児がその言葉を言い終える前に、ちくりと言った。

「お茶をれるんじゃなかったの?」

 鶯児がいそいそとはなれていくのを確認かくにんしながら、

「今までどちらにいらっしゃったの?」

 とたずねたが、宝玉はそのいにこたえなかった。


 宝玉はすぐそばの宝釵から、涼しげで甘い香りがただよってくるのを感じていた。

姐姐おねえさま、これは何というこうですか? 僕はこんなこうを聞いたことがありません」

 宝釵は笑いながら言った。

「私は香をかれるのが苦手にがてなんです。お気に入りのふくけむりいぶされるなんて、ぞっとしませんわ」

「じゃあ、この香りは何の香りですか?」

 宝釵は少し考えて、笑いながら言った。

「ああ、今朝薬を飲んだから、その香りかもしれません」

 宝玉は笑いながら言った。

「ただの薬がこんなに良い香りをはなつとは夢にも思いませんでした。 姐姐おねえさま、僕にもためしに一粒ひとつぶあたえください」

 宝釵も笑って言った。

「あらあら、またいつものわるくせが出ていますよ。べにはお食べになるとお聞きしていたけれど、私のお薬までご所望しょもうなのね」

 その一語を言い終える前に、

「林の姑娘おじょうさまがおしになりました」

 という声が聞こえた。

 

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