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紅楼夢  作者: 翡翠
第八回 通霊に比(なら)べ金鶯(きんおう)微(かす)かに意を露(あら)わし、 宝釵を探り、黛玉半(なか)ば酸(す)を含(ふく)む。
112/134

第八回 7

 後世こうせい、この宝玉の「まぼろし」と「うつつ」のさかいしめすものとして次のような詩が作られた。多少たしょうあざけりをふくんでいるもののかの宝玉の一端いったんを表していると言えよう。


 女媧じょか、石をることすで荒唐こうとうなり、荒唐こうとうむかひて大荒をえんず。


幽霊ゆうれい真境界しんきょうかいうしなひ、まぼろしたりてみずか臭皮囊しゅうひのうく。


よく知る、運敗はいすればきんいろ無く、へてなげく、時乖そむけばぎょくひかりあらず。


白骨はっこつ山のごとく姓氏を忘るるも、無非ただ公子こうし紅妝こうしょうとのみ。


★★ ★


 女媧じょかが石をきたえた荒唐こうとう

 紅塵うきよでいっそう大荒でたらめ

ゆうなるしんたましい

まぼろしびてくさ皮囊なまみすがる。

 運がきれば知れたこと

きんいろなく、なげくのみ

ときうしなたま光消ひかりき

 無名むめい白骨はっこつ山積やまづみに 

公子ぼっちゃん紅妝じょうちゃんなれの

 

 賈宝玉のまぼろし姿すがたであるその頑石がんせきはかのそうきざみ込んだ篆書てんしょしるしていた。

 宝釵はそのきざまれている文字もじの小ささに、何度も目を細めなければならなかった。爾来じらい、宝釵は「小さな赤子あかごにこんな玉をくわえることができるはずない」と疑念ぎねんいだいていたが、こうしててのひらせてみると、その手触てざわり、その華美かびさ、この世のものとは思えないほどの心地ここちよい感触かんしょくにこの玉の霊験れいけんは本物かもしれないと思い始めていた。

 その正面しょうめんには、


 通霊宝玉つうれいほうぎょく

 ちゅう

 うしなかれ、わすかれ

 仙寿恒せんじゅとこしえさかんならん

 

 と書かれてあり、その裏側うらがわには、

 ちゅう

 一に邪祟じゃすいのぞ

 二に冤疾えんしついや

 三に禍福かふくを知る


 と書かれてあった。


 宝釵は通霊宝玉つうれいほうぎょくを何度もひっくり返しながらながめていたあげく、口の中でこうとなえた。

うしなかれ、わすかれ、仙寿恒せんじゅとこしえさかんならん」

 二度にどかえしたあと、宝玉にうつりこんだ鶯児に気づいて笑った。

「あなたお茶を持ってくるんじゃなかったの? ずいぶんぼんやりしているじゃない」

 鶯児ははしゃぐように笑いながら言った。

「だってお聞きした二句にく姑娘おじょうさま首飾くびかざりにきざまれている二句にくとすっかりついをなしているように思ったんですもの!」


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