凱旋
街の門が見えてきた。
そして大勢のトカゲに乗る兵がやって来るのも見える。
俺の前まで来たのが集団の偉い獣人なんだろう。
「我は、防衛兵長のミランと申す。退治されたドラゴンを確認するために来た。勇者に向かって言い難いがドラゴンを見せてもらえないだろうか」
ああ、生きていたら困るからね。
「アカ、出してやって・・・」
「デン」と黒いドラゴンが出る。
トカゲも驚き「グギャーー」と暴れだす。
何名かの兵が転げ落ちる。
「なんて未熟者が・・・」
そう言うあんたも必死にトカゲにしがみついてるぞ。
やっと落ち着いたようで、ミランが魔闘武を発動して槍でドラゴンの目を突き刺した。
やっぱ開いた目にブッスッと・・・「このドラゴンは死んでる」
何人かの兵は、あっちこっち突いたが刺さることはない。
おもいっきり突いた槍が曲がるハプニングもあった。
「あいつバカだな・・・槍を曲げやがった」
「おいおい、兵長がにらんでるぞ」
「お前ら、特別の荷馬車がやって来たぞ・・・気合を入れて解体しろ!」
トカゲが8頭も連なる荷馬車が4台もやって来た。
それなのに解体が出来ない事態に。
ドラゴンを傷1つもつけられないまま、大剣が曲がったり、ノコギリがなまくらになっていた。
「ダメです兵長・・・持ってきた物では斬れません」
「これでは凱旋を楽しみにしている国民に見せられないぞ・・・国王になんて説明したらいいんだ」
「はいはい、わかったよ。俺が斬ってやる」
ああ、期待のこもった眼差しは、よしてくれ。
赤刀を取り出すとドラゴンにジャンプしって首に向かって振り下げる。
一刀で見事に斬った。
「今度は、どこを斬ればいい」
「手足や羽を斬ってください。最後に体を台の載せれるように2つに斬ってもらえれば・・・」
「誰か腕を引張ってくれーー」
兵が6人で引張る。その状態から斬り下ろす。
すでに頭は荷馬車に載せられ出発。
斬られた腕も引張った連中が「よっこらしょ」と担ぎ上げている。
もう、「ズバッ、バシュッ、ズバッ、バシュッ」と斬る。
最後に支援隊と一緒に門に向かった。
門の近くまで来ると中ではドンチャン騒ぎが聞こえだす。
俺らが登場したら更にヒートアップして花火まで打ち上がった。
「勇者が着たぞ!」
「ドラゴンを倒した勇者だ!」
拍手や太鼓の音でうるさいよ。
猫隊長が近づき「国民に手を振ってやってください」
「え!恥ずかしいよ・・・」
「お願いします・・・」
『主殿、ここは手を振るしかありません』
女姿のハイデンは両手を振ってるぞ。
やっぱ恥を知らない。
『なにをやっとる・・・こんな簡単なことを』
顔を引きつりながら手を振ったよ。
猫の声で「ニャーニャー」と聞いたような・・・
ああ、悲鳴のキャーキャーがニャーニャーになるらしい。
もっと、早く進めよと思いながら手を振り続けた。
そして、城にやって来た。
出発時に来なかった城だ。
大きな部屋に案内されたが大勢の変な服を着た獣人たちが並んで待っていた。
『あれは、礼服ですよ。不思議に思いますが変な顔はおやめください』
え!シェリー、あれが礼服なの・・・
奥の高い所に立ってるのが国王と王妃か・・・
それぐらい見て分かる。
あ!隊長が膝をついて御辞儀をしてるぞ。
国王と王妃を見ているスキに俺もするのかな・・・
周りを見ても俺とハイデンだけが立っていた。
シェリーも膝をついて頭を垂れてる。
ちゃんと教えてよ。
遅れて俺もうやうやしく膝をついて頭を垂れる。
チラッと見ると一切動じないハイデン。
赤く長い髪に白い服は目立ち過ぎる。
「皆のものよ、立つがよい・・・」
立ち上がる音が・・・チラッと見て俺も立ち上がる。
「勇者よ、よくぞドラゴンを退治して参った。ミーニャ国を代表して礼を言おう・・・褒美を持って参れ」
「アルテラ貨100枚で御座います」
ちょっとよぼよぼの白猫が箱を持って差し出してきた。
俺は、持った瞬間・・・軽過ぎる。金なら重いハズなのにと思った。
皆が見てる前で箱を開けて見る。
「貴重なアルテラ金属で作られた硬貨で、1枚1枚傷がつかないように布袋に入ってます」
その布袋を取って紐をほどく、え!この色合いってアルミ。
軽さも感触もアルミぽい・・・そんなバカな・・・
隊長が「これがアルテラ貨ですか、私も始めてみました・・・なんて美しい色合いだ」
「これ1枚でどれだけの価値が・・・」
「1枚、大金貨100枚になります」
そんなこと言われてもね。
大きな1円をもらったようで微妙だ・・・
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