出会い1
早く離れようと後ずさった時に廊下を歩く人にぶつかってしまった。
「す、すみません!!」
慌てて謝って顔を上げると綺麗な女の子が立っていた。
実はこの子が、高校生になって初めてできた友達の千田笑愛ちゃん。
あの時は入学してからキラキラした人にばかり出会ってて目眩を起こしかけた気がする。
「いや、私もよく見てなかったから、ごめんね?大丈夫?」
ぱっちり二重に綺麗に上がった長いまつ毛、ふんわりと巻かれた髪が肩の上で揺れていた。
制服も着こなしていて唇もプルプルしていたが、まだ少女らしさが残っていて「こちら女神様です」と、言われても納得だった。
それくらい私は普通なんだと唐突に自覚したように思う。
「あの、何組ですか?」
思わず、クラスを聞けた自分に内心少し驚いた。
笑愛ちゃんは、手元に視線を落として紙に書かれた文字を確認すると優しく答えてくれた。
「3組だよ」
「あ、私も!私も3組なんです。三浦、三浦由宇花って言います」
「同じクラスなんだ。私は千田笑愛。笑顔が愛されるって書いて笑愛!よろしくね!」
そうやって自己紹介をした笑愛ちゃんの笑顔は本当に可愛くて思わず見惚れてしまった。
今思い出しても本当に可愛い。
クラスに向かうために歩き始めれば、後ろから山田が会話に混ざってきた。
「2人とも3組なの?俺も3組!よろしく!」
「え、由宇花ちゃんの知り合い?」
「いや、知り合いっていうか……」
突然会話に入ってきた山田に引いた笑愛ちゃんが小声で聞いてきたが、逃げ出してきたとも言えず、返答に困っていると被せるように山田が口を開いた。
「ゆうちゃんは俺の女神様であり、友達!」
いつの間にか家族にしか呼ばれたことのない呼び方とずっと謎に呼ばれ続ける「女神様」という言葉に恥ずかしさでいっぱいになっていた私は慌てていた。
後、いつの間に友達になっていたんだろう?
「あの!あの……とにかく!その女神様ってやめてください!!」
どうにかやめてほしいと願いを込めてはっきりと返したが、嬉しそうに話す山田を止めることはできなかった。
教室について早々、山田に起こった受験の日の出来事を聞かされ続ける羽目になり、その日から数週間クラス内で目立つ立ち位置に問答無用で立たされてしまった。
できれば入学式の日の記憶は忘れ去りたいように思う気持ちとそんな苦い記憶も薄れるくらい毎日のように隣の席から話しかけてきた山田のおかげで高校生活がとても心地良いものになった感謝の気持ちが今は混在している。