再会
無事に第一志望の高校に合格し、迎えた入学式。
新しい教室に向かいながら、受験票を渡した人は合格できたのかなと思い出していたら、廊下に大きな声が響いた。
「あ!!いた!!女神様!!!」
「そんなに大きな声で言いたくなるくらい美人な子がいるんだろうか」と、気になってキョロキョロと辺りを見渡せば満面の笑みの人…山田と目が合った。
目が逸らせずに、何事かとその場に固まっていると、急いで傍に来た山田は遠慮なく両手を包み込み、上下に大きく振った。
受験の日の山田には幼い印象をもっていたけれど、この時は記憶の中よりも少し身長が伸びたせいか制服のせいか分からないがさらに格好良くなっていたように思う。
「えっと、やま……ださん?」
正直、この再会の時は名前まで合っている自信がなく、どんどん声が小さくなってしまった。
そして、話しかけられてからなんとなく周りの視線が少し痛いような気さえした。
「あぁ!!覚えててくれた!そう山田!山田一舞!!よろしくね!!」
「よろ、しく?」
「受験の時はすごく助かったよ!!本当にあの時はありがとう!!改めてお礼言おうと思って振り向いたら、いなくなってたから。合格してて良かった」
相変わらず、ぎゅっと握られたままの手を見つめながら、いつまで続くのだろうと困惑していれば、背の高い男の子が山田を小突いた。
その拍子に握られていた手が離され、男の子の手って大きいんだなと呑気なことを思った覚えがある。
「カズ、お前、困ってんだろ」
「健!女神様も合格してた!!」
「いや、カズの喜びよう見てたら分かるから……ごめんな。えぇと……名前は?」
2人の会話についていけず、キョトンとしていれば名前を聞かれた。
いや、そもそも、女神様って誰のこと?今、私に向かって言ってるの?何を言ってんだこの人達と思ったとは言えない。
いや、やっぱり何言ってんだこの人達と今となっては言いたいかもしれない。
「あ、俺は、中峰健。カズとは小学校から一緒なんだ。よろしく」
私が名前も言えずにぼぅっとしていると中峰くんの方から自己紹介してきた。
こぅなってくると私も名乗らないわけにはいかなくなって、逃げ場ゼロだった。
「……三浦、三浦由宇花です。よろしくお願いします」
「カズ、三浦さんだって」
「何で、サラッと健が聞いちゃうんだよ」
「いや、お前、名前が分からないから『女神様』だったけど、そのまま女神様呼び定着される側の人間の気持ち考えたか?声をかける時にその呼び方するなって俺言ったよな?……心配になってきた。何で俺より成績良いのに同じ特進科受けなかったんだよ?」
「だって、俺にとっては女神様だし、それに、何度も言っただろ!俺は青春がしたいの!」
「その訳分かんない理由じゃ納得しないって言っただろーが!」
「だーかーらー」
言い合いが始まったようなので、この時の私はこのまま静かにフェードアウトさせていただきたかった。
実はこの2人、モテる人生を送る顔をしている。
山田を正統派イケメンとするならば、中峰くんは体格の良さからスポーツイケメンと言えると思う。
しかも、2人並ぶとキラキラが強まるし、通り過ぎていく女子の視線が先程から熱を帯びてる子が多かった。
やはりこれ以上関わると碌なことにならない気がして教室に向かうべく、私はその場をそっと離れること決めたのだった。