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春1

高校2年生の春を迎えた。


あれから山田との関係は相変わらず「友達」を維持できている。

実は、山田が彼女と別れてから私と笑愛ちゃんが傍にいることを納得していない様子の人達に陰で言われていたようだけれど、最近は「女友達」の枠から出ないことを知ったようで特に何も言われていないようだ。

それもあって周りの目も前ほど気にならなくなった。

「女神様」という話もされなくなったので解放された気持ちになったけれど、山田だけは時々「女神様」と言って無駄に優しく扱おうとしてくるので困っている。


そして、何回経験してもクラス替えは苦手だし、慣れない。

だけど、隣にいる笑愛ちゃんは私とは反対のようで、駅で会った時から嬉しそうにしている。


「由宇花、そんなに心配しなくてもなんとかなるし、クラス違ってもお昼は一緒に食べよう?ね?」

「う、うん……」


はしゃぐ笑愛ちゃんに縋るような視線を送れば明るく返された。なんとか返事をする。


「三浦さん、そんなに不安?」


後ろからユキくんが不思議そうに話しかけてきた。

そして、その隣から山田が「まぁ俺達は同じクラスだろ?」と軽く答えたのが聞こえてくる。

「いつの間に」と思って、振り向けば笑顔の山田が立っていた。


「おはよう、ゆうちゃん」

「……おはよう、山田。ユキくんも」


一瞬、見惚れかけてしまって慌てて挨拶を返した。

ユキくんは欠伸をしながら「三浦さん、千田さん、おはよう」とそれに続いてくれた。

笑愛ちゃんはユキくんに簡単に挨拶してすぐに納得できなかったらしい山田に向き直る。


「ちょっと、山田、いつも隣の私のこと忘れてない?」

「……え?忘れてないよ?おはよう千田」

「…………なんでコイツがモテるのか私には一生分かんないかも」

「俺も千田がモテる理由は分からないなぁ?」

「はぁ???」

「ま、まぁまぁ笑愛ちゃん……もう少しでクラス表見える位置だから……」


笑愛ちゃんは、私の想いを知っているせいか山田の態度が気に入らないと突っかかることが多くなってしまった。

私とユキくんで宥めるけれど、山田も笑愛ちゃんのそんな態度を面白がって悪ノリしてしまうようになり、タチの悪さが増している。

ようやく見れる位置まできたので張り出された紙を見て自分の名前を探す。

名前を探し始めたけれど、先に山田と笑愛ちゃんの名前を見つけたので「山田と笑愛ちゃん、1組だって」と伝えて指を差してそれを伝える。

「あ、本当だ〜。じゃぁみんな一緒……」と言いかけた山田は表を見つめたまま固まっている。

1組の名簿を2回程見ても私の名前は見つからず、クラスが離れてしまったことに愕然としてしまう。

笑愛ちゃんは「納得できない」と口を膨らませたのを見て「やっぱり可愛いなぁ」と現実逃避をしているとユキくんがふわりと呟いた。


「あ、俺、3組だ。三浦さんも一緒だね」

「え?あ……本当だ」


ニコニコと見つけた報告をしてくれたユキくんに全員が離れ離れになってしまったわけではないと言われたようで安堵する。

笑愛ちゃんと離れてしまったのは寂しいけれど、ユキくんと同じクラスなのはとても心強く感じる。

山田の近くにいられないのは、悲しいが傍にいない分、気持ちの蓋を開けないように気を配ることも減るので心のどこかでホッとしている自分もいる。

とりあえず、寂しさと悲しさをいつものように誤魔化してその場を離れることにした。

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