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放課後4

「ゼェハァ」と、息を切らした私達は、公園にいた。

噴水が太陽の光に照らされてキラキラと輝いている。

小さい子どもの声が遊具のところで飛び交っていて賑わいを見せている。


「……山田?」


立ち止まった山田にやっと話しかければ、「ごめん」と言って手が離された。

少し名残惜しく思う。

近くのベンチに山田が座ったので、隣に私も座る。

チラッと盗み見れば、山田の呼吸は既に整っていた。

こっちはまだ疲労が抜けないのにちょっと腹が立つ。

夏休みが終わったと言ってもまだまだ暑いけれど、緑の葉っぱから降ってくる光はどこか神秘的で一緒に少しの風を持ってきてくれるのを心地よく感じる。

何故、山田に連れてこられたのかは分からない。

それでも、この風を感じられたならいいかとも思う。


「ゆうちゃん」

「?」

「ゆうちゃんにだけ、話したいと思ったんだよ」

「…………聞かなきゃダメ?」

「ふは、聞いてくれないの?」

「……聞くけど……」


何となく聞きたくない気がして断ろうとしたのに、甘えたように言われたらものすごく断りづらい。

覗き込んできた時のいたずらっ子みたいな顔は反則だと思う。

負けた気がして、悔しいが、さっきの辛そうな気持ちが山田の中から少しでも消えるのなら、聞いてあげないこともないと気持ちを切り替えることにする。

山田は一呼吸置いて、話し始めた。


「……美桜ちゃんってさ、すごくモテるんだよ」


「でしょうね。一目見てそうなんだろうなとは思ったよ」とは言えない。

それに、「そう話す山田も相当モテるから、人のこと言えないと思う」とも言いたくもなるが、言えない。

とりあえず適当に相槌を打つことにする。


「同じ中学だったんだけど、みんなから慕われてる感じの子で、元々あんまり話したことなかったんだけど、卒業の時にみんなの前で告白されて、まぁその場のノリで付き合うことになったんだよ」

「……」

「正直、好きとか付き合うっていうのもよく分かってなかったんだけど、デートとかするうちに『あ、好きってこんな感じか』って思うようになって。俺なりに大切にしてたつもりだったんだよね。夏休み中とかはできるだけ会ってたし……」


淡々と話す山田の顔を見ようとしても俯いてて表情は分からない。

ただ、その話す声は弱々しくて、いつもの明るい山田ではないなと感じる。

そして、やっぱり聞きたくない内容なんだよなぁと頭のどこかで考えながら、山田の背中を軽くさすった。

だって、体が少し震えている気がしたから。


「まぁ、今思えば、会える時と会えない時がはっきりしてるっていうか……ちょっと変だったんだよ。急用とかも割とあったし。それで……それで、ゆうちゃんとも会った夏祭りの日、ほら、他にもクラスの奴らいたと思うんだけどあいつらが帰った後に、男がやって来てさ……そいつ、美桜ちゃんの彼氏だった」

「…………ん!?え!?」


あまりの急展開に自分の耳を疑う。

彼氏?彼氏は山田だったのでは?

もう1人彼氏がいたということだろうか?

想像していなかった展開に、山田の背中に置かれた私の手は止まってしまった。

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