放課後3
何とか資料をまとめ終わった私達は、3人で駅に向かっている。
ちなみに、山田はあれから沈黙を貫いている。
中峰くんは当たり障りなく「暑いな〜アイス食いて〜」と話しているが、先程の山田の言葉が頭から消えてくれなくて私はそれどころではない。
なんとか「食べたいね」と返したが、会話が終了してしまった。
そして、ついに堪えられなくなった中峰くんが山田の肩に腕を回して話しかけた。
「カズ、お前、別れたって本当かよ……!?」
山田はため息をついて立ち止まった。
「……嘘じゃない」
「いや、嘘だとは思ってないけど……あんなに良い感じだったのに?」
「…………」
これ以上何も話したくないという空気を醸し出す山田は、今まで見た中で1番辛そうに見える。
別れた理由なんて適当に答えれば話は終わりそうだけど、真っ直ぐな山田のことだ。
それくらい言いにくい何かがあったんだろうとなんとなく思う。
中峰くんの鞄を軽く引っ張って「やめよう」と合図を送れば、山田の肩から腕を外してくれた。
「……はぁ分かった。カズ、話したくなったらでいいから話せ。そのまま辛そうにしてるのは俺としても心配だから」
バシッと山田の背中をはたいて中峰くんは歩き始める。
俯き気味の山田に「とりあえず帰ろう?」と簡単に話しかけて、中峰くんの後に続こうとして立ち止まっている山田の横を通り過ぎた……はずだった。
「え、おい!カズ!?三浦さん!?」
何故か目の前にいた中峰くんの驚いた声が後ろから聞こえたと思えば、山田に手を引かれて駅とは反対方向に走っている。
追いつくのがやっとな気がする。
息が切れて、呼吸が乱れる。
だけど、繋がれた手が熱を帯びてそれにしか集中できなくなってしまった。
山田と手を繋いでいる。
それだけのことなのにどこまでも嬉しくて切ない。
山田が彼女と別れた。
さっきまで、不必要だから捨てなくてはと思った気持ちが膨らむ。
私は酷い人間なのかもしれない。
山田に起こった出来事に少しの喜びを感じてしまっている。
期待をしてしまっている……だけど……
だけど、辛そうにする山田を見たいわけじゃないと私自身が悲鳴をあげているような気がした。




