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全てのはじまり

私達の出会いは、高校受験にまで(さかのぼ)る。


まだまだ寒さが続くあの日、私は緊張と不安でいっぱいだった。

試験会場の向かう途中で生徒手帳と受験票を拾った。

困っているかもしれないと少し早歩きで先を急ぎながら、生徒手帳の名前を確認すれば「山田一舞(やまだかずま)」と書かれていた。

会場に到着し、貼ってある写真を頼りに視線を彷徨(さまよ)わせれば、受付付近で写真に似た一人の少年が慌てているのが見えた。


「受験票をお願いします」

「はい、えっと……」

「……そちらで一旦お待ちください」

「はい……」


受付の人は淡々と次の人を処理してゆく。

「さっきまであったのに……」とこの世の終わりのような表情をしている少年は受付から少し離れたところで鞄の中を漁っていた。


「あの……山田一舞さんですか?」

「え?」


少年と生徒手帳を見比べながら近づくと写真よりも綺麗な顔だなとのんびりと思った記憶がある。


「これ、道に落ちていました」


そう言って、受験票と一緒に渡せば、その両手ごと掴まれて大きく上下に振られた。

この時、私は人生で初めて見た男の子のキラキラした笑顔に見惚れていた。


「ありがとう!!ありがとうございます!!!」

「い、いえ?どういたしまして」


熱烈な感謝をしたと思ったら、少年は慌ただしくそのまま受付へ行った。

無事に渡せた安堵感から、先程まであった不安が薄れたことに心の中で気持ちを切り替え、私はそのまま試験が行われる教室に向かった。

教室はとても静かで先ほどの受付の賑やかさがまるで嘘のようで、より集中して試験に挑むことができた。


今思えば、あの時のキラキラした笑顔の山田一舞に、私…三浦由宇花(みうらゆうか)は既に一目惚れをしていたんだと思う。

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