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番(つがい)を見つけた勇者

【短編】どうせ捨てられないのなら ~最強治癒魔導士の溺愛恋愛攻防戦~

作者: 瀬里

 大陸の中央にある強国、ウェストラント王国の王族は「勇者」の一族である。

 その人並外れた強さはドラゴンにも匹敵し、勇者のドラゴン討伐に関する逸話は、今も畏敬の念を持って大陸各地で語りつがれている。


 今代の王族たちに関してもまた然り。

 高貴な身分でありながら先頭に立って戦う勇者一族の活躍は、大陸中をにぎわせる一大英雄譚として、人々の心を浮き立たせていた。


 そして数カ月前。

 ここ数百年で一番の強さを誇るといわれる第一王子アーレントが、王国としては数十年ぶりにドラゴン討伐に旅立ち、見事ドラゴンを討ち果たした。

 王子はその後、ドラゴンに囚われていた彼の運命の乙女イルセと恋に落ち、彼女を花嫁として連れ帰ったのである。


 ちなみに、この話は、私には大いに関係のある話である。

 なぜならば、(くだん)の第一王子その人とは、第一王女にして国一番の治癒魔導士であるこの私――アンジェリカの不肖の兄に他ならないのだから。


 ◇◇◇◇◇◇


「さあ、イルセちゃん、次は披露宴のドレスを選びましょうね。イルセちゃんは、髪が赤いから、真っ赤なドレスも素敵だと思うのよねえ。アンジェリカはどう思う?」

「黒だ」

「私もお母様のおっしゃるように赤のドレスの方が素敵だと思いますの。お義姉さまの夕闇に映える茜色にきらめく御髪には、この深紅のドレスが一番ですもの」

「黒だ」

「じゃあ、ドレスはこれで決まりね」

「あ、あの……」

「「なあに? 「イルセちゃん」「お義姉さま」」」


 こういう時、私とお母様の息はぴったりだ。

 背後で、花嫁のドレス選びに口を出すお兄様の意見なんて知ったことではない。

 なんだかおどろおどろしい空気が渦巻いているのも全て無視。

 惚れた女性に逃げられて、数カ月も見つけられないなんて、勇者一族の風上にも置けないわ。


「あの、私もドレスは赤がいいんだけど、アクセサリーは、黒とか紫とかがいいかなあ? ……なんて?」


 ああ、真っ赤になりながらもじもじというお義姉さまのお姿は、なんて可愛らしいんでしょう!!


「まあ、私と同じ色を纏ってくださるなんてっ」

「へ? 妹ちゃんの? あ、ああ、みんな同じ色だから。そう、そうねっ。この国の新しい家族と同じ色って、なんか、なんかそういうのもいいかも。へへっ……ひっ」


 はにかむお義姉さまの愛らしいお顔が、話の後半で微妙な感じに歪む。


「お兄様っ。不穏な空気をまき散らさないでくださいませ。周りに迷惑ですわよ」


 私は、さっと手を払うとお兄様のまき散らす覇気を結界に封じ込める原理で破壊して、お義姉さまを守るように抱きついた。

 それにしても何て可愛らしいんでしょう。

 私は、兄が連れて来たこのお義姉さまを一目見た瞬間に、心を撃ち抜かれてしまっていた。


「ああ、可愛い」

「おい、触るな。イルセが減る」

「もう、嫉妬深い男は嫌われますのよ。だいたいお兄様は、私にもっと恩を感じるべきですの。お義姉さまを探して差し上げたのは私ですのよ」

「お前……」

「だまらっしゃいっ!!」


 お母様の声が、部屋に響く。


「あなた達っ、二人とも邪魔よ! 出ていきなさいっ。あ、イルセちゃんはお義母さまと一緒にお式の準備を続けましょうね」

「「……はい」」


 この場での一番の権力者は、母だった。

 勇者一族の血を引いていないのに、さすが私とお兄様を育てただけのことはある。

 私とお兄様は、結婚式のドレス選びの会場を追い出されてしまった。

 会場の外で扉にもたれかかって腕組みし、それでもその場を去ろうとしない兄の様子に思わず笑みが漏れる。


「ふふっ、お兄様のこんな姿が見られるなんて。『つがい』ってほんとにすごいのですね」


 ウェストランド王国の第一王子として生まれ、強さと美しさを兼ね備えた兄だが、数カ月前までは、愛とか恋とかそんな感情とは無縁の冷血漢だったのに。


 兄のアーレントは、伏せられてはいるが、実はドラゴン討伐に行ったまま記憶喪失になり、数か月行方不明だったのだ。迎えに行った騎士団長に連れられて帰ってきたが、その際、なぜか番である彼女を一緒に連れて来なかった。

 理由は、分かっている。記憶のないお兄様は、自分の「王子」という境遇を聞いて、この王国が「彼女」を受け入れることのできる場所か見定めるために戻ってきたのだ。ここが彼女を受け入れるに足る場所と思えなかったら、何をするつもりだったのか考えるだけで恐ろしい。番を見つけてしまった勇者の行動原理なんて考えたくもない。

 結局、治癒魔導士である私によって記憶を取り戻したお兄様は、この国と勇者一族の「成り立ち」を思い出すと後は水を得た魚のようだった。周りの歓迎ムードを味方につけて結婚式の準備を嵐のように進めると、嬉々として花嫁を迎えに行ったのだった。

 そして、すったもんだの末、結婚式二週間前にやっと彼女を連れ帰って来て、現在に至る。


「でも、お義姉さまならわかるかも。なにか、私も会った瞬間にこう、心臓をわしづかみにされたというかなんというか。あの可愛さは反則だと思いますの」


 義姉に愛情を注ぎ続けるお兄様の様子に、実は呆れながらもちょっと共感してしまう。

 お義姉さま――イルセ様は、本能的に惹かれてしまうようなどこか危うい魅力を持っていた。


「お前も決めるんだろ。そろそろ」


 私は、お兄様のその言葉に急に現実に引き戻された。

 おもしろくない。

 もう少しお義姉さまの可愛さに浸っていたかったのに。

 しかし、そういうわけにもいかないのだろう。

 私もそろそろ決めなければならない時期なのだ。


 ――婚約者を。


 当初、お兄様が結婚「できない」可能性も視野に入れられていたから、なかなか王太子を決められず、私の相手も、王配としての婿入りか私の嫁入りかで変わるために選びきれなかった。

 でも、お兄様が番を見つけて来た時点で、私の去就も決定した。


 私は、おそらく国を出ることになる。


 私もそろそろ適齢期だ。私の婚姻もお兄様の結婚の後、速やかに進められるはずだ。

 勇者一族、最強の治癒魔導士の私を欲しがる国は多い。


「せいぜい高く売りつけたいですわね。嫁入りになりますから、サウスランドのミカエル様あたりが有力かしら」

「ミハイルだろ、お前、本気で名前も覚えてない奴の所に行く気か?」

「まあ、どこに行っても同じなので、私を大事にしてくださる国に行きたいですわ」

「好きな奴はいないのか?」

「まあ!? お兄様の口からそんな言葉が出るなんて」


 冷血漢のお兄様の口からこんなセリフが出るとは思わなかった。

 いえ、もう冷血漢ではないのね。

 番の効果は本当にすごいわ。


「お前……話逸らしやがって、まあいい」


 小さく何かつぶやきながら、ガシガシと頭をかく様子は、照れているのかしら?

 本当に、お義姉さまがいらしてから珍しい光景ばかり。

 少し意地悪したくなって、声を潜めて、お兄様の顔を下から覗き込む。


「お兄様、実は、私、気づいてしまいましたの。私、女性が好きだったのかもしれないわ。初めてお義姉さまにお会いした時の衝撃が凄まじかったのです。あんなにも愛らしい方がいらしたのかと神に感謝すら捧げたほどです。こう、体中に電流が走って、まるで恋の始まりのような……。私、もしかしてお義姉さまなら!」

「イルセはやらん」

「まあ、怖い」


 くすくすと笑みをこぼして、私は、お兄様を置いてその場を去ることにする。

 半分本気だったのは内緒。


「ちがうだろ、気づけよ。こっち側だってことに」


 お兄様が独り言のようにつぶやいた声が背後に聞こえたけれど、私はおやすみなさいませ、とだけ言い残して振り返らなかった。



 ◇◇◇◇◇◇



 深い森に囲まれた城――ウェストランド城を見下ろし、俺は、そこに彼女がいることを肌で感じ取った。


「里に戻って来ねえ来ねえと思ってたら、ここか。ここにイルセが」


 紅蓮の炎のような赤をまとう、小さな体ながら高潔な精神を持つ女。

 勇者に隷属させられた、暁の女神イルセ――俺の護るべき女。

 彼女は今、ウェストラント王国の勇者に捕まり、城に捕らえられている。


 勇者は、俺達一族の敵だ。

 奴らは、俺達を隷属させ、生きたまま生き血を絞り、皮を剥ぐ。

 奴らに捕まった一族がどうなるのかは、幼い頃からずっと言い聞かされて育ってきた。

 俺は焦る気持ちを無理矢理押し殺す。


 今夜は月がない。夜陰に乗じるにはいい頃合いだ。


「待ってろよ、イルセ。このデニス様が、すぐにお前を助け出してやる」


 俺は、眼下に広がる漆黒の闇へと身を躍らせた。



 ◇◇◇◇◇◇



「ふぁーう」


 いけないわ。

 私は王女にあるまじき大あくびをした後に、慌てて取り繕った。

 誰も見ていないし、誰もいないのは知っているけれど、だからと言って品のない振る舞いをしてよい理由にはならないもの。


「でも、昨夜はあまりにもうるさかったわ。お兄様ったら、お義姉さまをお母様にとられたからって、森でストレス発散するのはどうかと思いますの」


 私は、今朝は朝食を済ませるとすぐにウェストランド城の背後の別名「深淵の森」に、様子を見にやって来た。

 端的に言えば、そう、お兄様がやらかした後始末だ。

 やらかした本人はというと、明け方帰ってきた途端に部屋に戻って、結界は後で直すと言って寝落ちしてしまったのだ。

 この深い森には結界が張ってあり、私達「王族」が訓練をしても、森やそこに住む生き物にダメージを与えないようになっている。ただ、あまり負荷をかけすぎると、結界も崩れ始めるから、訓練後は、使用した本人が修復を行うのがルールなのだ。


「やりっぱなしはよくありませんわ。子供だって遊んだらお片付けまでしますのに」


 森の結界を不完全な状態のまま放置しておくのもよろしくないので、私は朝から森まで出向き、兄の代わりを務めることにした。



 森に入って少し行くと、お兄様の「やらかし」の様相がだんだんと明らかになってきた。


「もう、結界がぼろぼろですわ。結界が破れてしまっている場所まであるなんて。これは、大いなる貸しですわね。あとで、お義姉さまを貸し出してもらわないと……」


 私は途中で言葉を止める。

 森の中で一か所、木々がなぎ倒され、大地がめくれ上がりひどいことになっている場所があり、そこに、人影を見つけたのだ。

 私は息を飲んで慌てて駆けよった。


 なぎ倒された木の側にうつぶせに倒れていたのは、褐色の肌、深い青色の髪の兄と同い年くらいの青年だ。

 意識のないその首に触れると、とくり、脈打つのが感じられた。 

 よかった。

 私は、触れた部分から、その青年に治癒魔術をゆっくり流し込む。

 青年の手がわずかに震え、顔色が徐々に良くなっていく。

 もう大丈夫ね。


「もう、お兄様ったら、周囲をよく見るべきだわ。ストレス発散に他人を巻き込んでしまうなんて最低ですわ。番を得たばかりの勇者は色々箍が外れてしまうから生ぬるく見守ってあげなさい、なんてお爺様は言うけれど、本当にどうかと思うわ」


 私は、呼吸が落ち着いてきた彼をそっと横たえると、周囲の結界の修復に取り掛かった。


 付近の結界の修復をあらかた終えた頃だった。

 お兄様の雑な結界よりもだいぶいい出来だと周囲を見回していると、倒れていた青年が、頭を振りながら上半身を起こした。


「くそっ、あいつめ、どこ行きやがった」


 元気そうな様子に笑みが漏れる。


「その調子なら大丈夫そうね」

「お前、誰だ?」


 そう言うと青年は、訝し気にこちらを見た。

 あら、私を知らないなんてあるのかしら?

 黒髪に紫の瞳のウェストラントの王族――勇者の力を受け継いだ者だけに現れるこの色を知らないなんて。


 ――ああ、なるほど。あちら側ね。


 私は、彼の出自になんとなく納得する。

 命の輝きに満ち溢れた赤い瞳に、整った目鼻立ちは、普通の人間にしては、美しすぎた。

 この深淵の森は、他国ともつながっていて、周りの国からよく、人の姿を取ることのできる高位魔獣が紛れてくるのだ。

 私の正体を知らない彼に、勇者の一族などと言って怖がらせることもない。

 勇者一族の存在は、あちら側では、それなりに恐れられているのだ。


「私は、治癒魔導士ですわ。昨日、この辺りで大騒ぎがあったでしょう。様子を見に来ましたの。あなたの傷も私が直しましたのよ」

「そ、そうか。道理で体が軽い。礼を言う」

「どういたしまして」

「それより、お前、知らないか? あいつ。そう、お前と同じ髪と目の色だった」


 怒り心頭、という様子でそう告げてくる彼に、私は、にっこり微笑む。

 彼が探しているのは、十中八九お兄様だろうけれど、ここはしらばっくれましょう。

 お兄様のストレス発散に巻き込まれてしまったのは不憫だけれど、今のお兄様の所へ連れて行ったら、面倒なことになる予感しかしない。


「うーん、この辺りには私と同じ髪と目の色の人はそれなりにいますから」


 嘘ではない、私とお兄様とお父様とお爺様――それなりの人数だ。


「あいつめ、次に会ったらただじゃおかねえ」

 

 勇者の強さがわからずに喧嘩をふっかけようとするなんて、高位魔獣とはいえ、実力はさほどではないのだろう。

 実際、人間ではないだろうと言うことは分かるが、彼からはあまり強さや覇気を感じない。

 ちょっと不憫に思った私は、お昼を分けてあげることにした。


「ねえ、怒るとお腹が減るでしょう? 私、お昼を持ってきていますの。ご一緒しない?」


 私が、準備したバスケットの蓋を開けて見せると、よい匂いにつられたのか、彼のお腹がぐうっと鳴るのが聞こえた。

 年上の青年なのに子供みたいでちょっと可愛い。


「……食う」


 頬を赤く染めるその様子もちょっと可愛かった。



「うまい」

「そうでしょうそうでしょう。私の自信作ですもの」


 彼は、とてもおいしそうに食べる人だった。人ではないのだけれど。

 その様子を見ていると嬉しくなる。

 普段城にいる私が手料理を作る機会はめったにない。

 今日は、森に来るので、特別に厨房を使わせてもらったのだが、少し多めに作りすぎてしまったのでちょうどよかった。


「ねえ、あなたはどこから来たの?」

「――西だ」


 食べながら少し世間話のように話を振ると、彼からは短い回答が返って来た。

 国の名前を言わないのは、言いたくないからか、国という概念がないからか――後者でしょうね。


「そう。じゃあきっと知らないでしょうけれど、この森はね、結界が張られていて、森やそこに住む生き物にはダメージを与えないようにできていますの」

「昨日は、違ったぞ」

「うーん、結界でも防ぎきれないぐらいの何かが起きてしまったのでしょうね。よっぽどのことだわ。だから、あなた、もうここには近づかない方がいいわよ」

「……」


 彼は、悔しそうな顔をして俯く。

 これはだめね。言う事をきいてくれそうな感じがしないわ。

 でも、明日実際にお兄様に会って、敵わないと知れば、きっとあきらめるでしょう。


「それじゃあまたね」

「ああ。飯、うまかった」


 私は、彼に手を振ってその場を後にした。

 

「おいしそうに食べてくれたから、ちょっとサービスね」


 私は、帰る道すがら、お兄様にぼこぼこにされても彼が無事でいられるように、この森一帯の地面にに、薄く治癒のエリア魔術を展開させておくことにした。





「食べる?」

「食う」


 私は今日も、森に倒れていた彼――デニスに治癒魔術をかけ、元気になった彼とお昼を食べている。

 デニスは、私が昨日あらかじめエリア展開して置いた治癒魔術のおかげか、昨日より状態はよい。

 彼は期待通り、私の手料理をそれはそれはおいしそうに食べてくれて、早起きして工夫を凝らして作った甲斐があったと、私はちょっと嬉しくなってしまう。


 昨夜は、お兄様のストレス発散が初日よりうるさくて、城内から苦情が相次いだ。

 再び朝帰りして寝落ちしているお兄様の代わりに、今日も私が森に出向くことにしたのだ。今回は、苦情が出ないよう結界に防音の効果もつけたいと思っている。

 これは、お兄様にはちょっと難しいし、私が行くしかないわよね。

 ついでに、デニスは間違いなく今日もいるだろうからと、お昼も多めに準備しておいたのだ。


「ねえ、探してた人には会えたのかしら?」

「会えた」

「どうだった?」

「奴は、……強かった」


 そうよねえ。


「次は負けねえ」


 うーん。難しいんじゃないかしら?

 相手はお兄様。我が勇者一族の中でも、数百年に一度と言われる強さを誇るのだ。


「それは、絶対に勝たないといけないのかしら?」

「絶対に負けられねえ」

「こだわりすぎると、前に、進めなくなるわ」

「……」

「忘れてしまうのも方法のひとつかも」


 言った瞬間に失敗したと思った。

 デニスは、こちらを向いて激しく言い放つ。


「そんなに軽くねえ!!」


 赤い瞳に乗せた感情のほとばしりに私は胸を突かれた。

 知った風な口をきいてしまったことを後悔する。


「事情を知らないのに、勝手なこと言ってごめんなさい」

「いや……いい」


 デニスのこだわる理由は分からないけれど、「彼ら」の信条に起因するものかもしれない。それに対して、私が軽々しく口にしてよいものではなかった。

 いつもの私ならすぐに思い至ることなのに、ただ、自分の希望を先に口に出してしまうなんて。


 ――私が、デニスに怪我をしてほしくなかったから。


 相手は魔獣なのに、少し、ほだされてしまったのかもしれない。


 私は、彼と別れると、昨日より治癒魔術を強めに展開しておく。

 きっとお兄様のストレス発散は、結婚式まで続く。

 せめてそれまではデニスが心置きなく挑戦できるように。

 そう祈りながら。



 ◇◇◇◇◇◇



「お義姉さまっ」

「妹ちゃん?」


 城に戻ると、花に囲まれたお義姉さまが柔らかく微笑んでくださって、私は、心臓がきゅうっと絞られるような愛しさを覚える。

 今日のお義姉さまは結婚式のブーケを選んでいるらしい。美しい花に囲まれたお義姉さまは、可愛すぎて倒れそう。


「ねえ、見てみて。白いお花だけでもこんなに種類があるなんて知らなかった。どれも可愛すぎて迷っちゃう」

「ええ、どれも素敵です。迷っていらっしゃるならいくつもお選びになったらいかがでしょう? 式の時、国民へのお披露目の時、披露宴の時など。私は真っ白なカサブランカも好きですが、八重咲のチューリップも素敵ですね」

「ア、アーレントは、どれが好きかな」


 お兄様ったら、こんな時にいらっしゃらないなんて!


「もう、こんな時にお義姉さまの側にいないなんて、あの不肖の兄は何をしているのでしょう!」

「まだ寝てるみたい……。アーレントが毎晩森で暴れてて、妹ちゃんがその片付けしてるんだって聞いたんだけど。ごめんね」


 お義姉さまは、私に申し訳なさそうにそう伝えてくるが、その表情は寂しそうだ。

 もう、一体お兄様は何をしてるのかしら!!


「お義姉さま、兄なんかやめて、いっそのこと私と……」

「イルセ」

「アーレント!」


 ぱあっと、花が開くように輝くお義姉さまの顔を見て、私は敗北を悟った。

 妹の前にも関わらずいちゃいちゃし始めるお兄様に白い目を向けながら、私はその場を去ることにする。

 これは戦略的撤退ですわ。お兄様がいない時に、お義姉さまの寂しさにつけこむ作戦の方が有効ですもの。

 そう思ったのに、お兄様がなぜか呼び止めてきた。


「アンジェリカ」

「まあ、私の存在に気づいてらしたとは思わなかったわ」

「……結界の修復、感謝している」


 あのお兄様が私にお礼を言うなんて!

 いいえ、せっかくの機会です。お兄様に思いっきり恩を売って差し上げることにしますわ。


「ええ、破損個所までありましたし、騒音の苦情に対応するために防音まで広範囲に重ね掛けしましたから、それなりに手間がかかりましたわ。この借りは高くつきますわよ」

「すまない」


 殊勝な兄なんてやっぱりおかしい。


「……夜の暴走はまだ続きますの?」

「……ああ」


 番を得た勇者の暴走とやらは、やはりまだ続くらしい。詳しい理由などは聞きたくないので、あまり細かくは問わない。


「あ、あの、妹ちゃん。私も、明日の午前中は空くらしいの。結界の修復、私も一緒に手伝いに行こうか」

「ダメだ!! ……結界は、王家の独自技術が必要だ。イルセにはまだ無理だ」


 実際そうなんですが、お兄様、言い方ってものがあるでしょう!

 ほら、お義姉さま、泣きそうですわ!


「お義姉さま、私、お昼も向こうで食べて参りますので、午前中だけでは終わりませんのよ。また今度ご一緒してくださいね。その際には、結界の作り方をお教えしますわ……代わりと言っては何ですが、私、最近森に持っていくお弁当を作ってるのです。色々工夫してるんですが、お義姉さま、明日試食してくださらない?」

「え? 妹ちゃん、王女様なのにお料理できるの。すごい。ぜひ!」

「ダメだ!! ……明日の午前中は、イルセは俺と市場へでかける」


 市場、と目を輝かせるお義姉さまの様子に、私はまた敗北を悟る。

 まあ、いいでしょう。お義姉さまが幸せならそれでいいわ。


「それでは、私のお弁当はまた今度にしましょう」

「うん」


 お兄様、ほっとしたように、あれは人間の食いもんじゃねえ、とかぼそぼそ失礼なこと言うのやめてくれません?

 お義姉さまが本気にしたらどうするんでしょうか!

 おいしく食べてくれる方だっているんだから。

 私は、高位魔獣のデニスの姿を思い浮かべた。


「そうだわ、お兄様。ストレス発散はいいけれど、周りに迷惑をかけてはいけませんわ。あの森には他の生き物も住んでいるのですもの」

「ああ、うるさい羽虫がな。だが、俺は向かってくるものには容赦はしない」

「お兄様、それでもお兄様は強いのだから手加減してあげないと」

「手加減? 俺のものを奪う者に与える情けはない」


 すっと周りの温度まで下げるようなお兄様の覇気を、私は、手を振って散らした。

 さすがに羽虫がデニスだということぐらいは分かる。

 奪うって……言い方はちょっとわかりづらいが、この王国と民、王族に危害を加えることを許してはいけないのは分かる。罰しないと、対外的にも示しがつかない。

 それでも弱き者への慈悲を期待するのは、多分、私の我儘でしかない。


「そうね。お兄様が正しいわ」


 デニスが今日もコテンパンにのされる運命は確定した。

 明日は、せめて彼が喜ぶようなメニューで元気づけてあげようかしら。

 ローストビーフにチョコレートをトッピングしてマヨネーズで味付けしたサンドイッチとか、おいしそうよね。






 あれからさらに一週間がたち、相変わらずお兄様の暴走と、デニスの挑戦、私の結界修復とお弁当作りは続いている。

 でも、明日は朝から結婚式だ。

 多分、兄はもうこの森に来ない。

 ウェストラント城には結界が張ってあり、デニスでは入ってこれないだろうから、彼の挑戦は今夜限りになるはずだった。


「これ、うまいな」

「そう? 疲れが取れるかと思って、すっぱいものをたくさん入れてみたの」


 デニスは、私の料理をいつも通りおいしそうに食べてくれて嬉しくなる。

 これが胃袋をつかんだって奴かしら?

 彼と会うのがこれで最後になるのは寂しいので、私はこれから彼に城で働かないかと提案をするつもりだった。


 兄はもう森へ来ないので、デニスは今後は兄に会う手段すらない。

 今夜負けてあきらめがつけばいいけれど、挑戦し続けたいなら、私が城で仕事を与えればよいかと思ったのだ。

 お兄様には貸しがたくさんあるので、時々なら、デニスと勝負する時間を作ってもらえるだろう。

 それに、城には人型の高位魔獣が結構いる。私の侍女にもコカトリスの高位魔獣が一人いるぐらいだ。

 少なくとも、勇者一族の側近くにいる者は、ちょっとした事故にも対処できるように、それなりの強さが求められるので、高位魔獣はむしろ歓迎されるのだ。


 私も、結婚式に参加するため、明日は朝からここに来ることができない。今伝えておかないと。

 私がじっとデニスの横顔を見ているとデニスが不意にこちらを振り向き、彼のルビーのような赤い瞳にどきりとする。


「食うか?」

「え……あむっ」


 口に入れられたサンドイッチにびっくりするが、それより、酸っぱすぎるサンドイッチに思わず涙目になる。

 うっ、す、すっぱい。ええ? なにこれ?

 それでも吐き出すことはプライドが許さず、必死に噛んで飲み込むしかない。

 デニスが手渡された水も必死に飲み下す。


 私のそんな様子を今度はデニスの方がじっと見ていたようだった。

 こんなひどい味のものを食べさせてたなんて、これは反省しろってことよね。

 もう、恥ずかしくて仕方がない。

 

「ご、ごめんなさい。こんな味だったなんて。おいしくなかったのに無理させちゃってたみたいね」

「? うまいだろ」

「え?」

「うまいから、お前にも食べさせてみたかった。お前に食べさせるの、楽しいな」


 あれがうまいなんてどうかしてるわ。

 そう言いたいのに、言葉が出なかった。

 デニスの視線が、何だか今までと違っていて。

 その眼差しは、お兄様がお義姉さまに向けるそれにそっくりで。

 ――まるで視線だけで相手を溶かすような。溺れさせるような。


 デニスは、私の頭に手を伸ばして髪をなでる。


「お前、ちっちゃくて、かわいい」

「か、かわっ」


 お互いの顔を見つめる私達がすごく甘い雰囲気に感じるのは、私の気のせい?

 私の心臓は、ばくばくと早鐘のように鳴り響いていた。 


「お前、あいつみたいだ」

「あいつ?」

「イルセ。言ってなかったか? 俺は、あいつを取り戻しに来た。あの男をぶっ倒して、イルセを取り戻す」


 血が音をたてて引いていく。

 私の中で生まれようとしていた何かは、形をとる前に崩れ去ってしまった。

 私は立ち上がった。


「私、明日は来れませんの」

「どうして」

「明日は、結婚式に参加するからですわ。この国の第一王子、最強の勇者アーレントと、彼の番であるイルセ様の結婚式です」

「な……んだと」


 私は、なんて愚かだったのだろう。

 この男は、お義姉さまを奪いに来た敵だと言うのに。

 お兄様は、知ってらしたんだわ。


『俺のものを奪う者に与える情けはない』


 そうですわね。お兄様。

 お義姉さまを奪わせるわけには行きませんもの。


 軋む心臓の音は、お義姉さまを奪おうとする者への怒り。

 それだけだ。

 それだけでなければいけない。


「ごきげんよう。きっともう、会うこともありませんわ」

「ちょ、待てよ。おい」


 私はもう、振り返らなかった。


 私は、彼に名前を教えていなかったことにやっと気づく。

 彼も、私に名前すら尋ねなかった。

 振り返らない理由は、それで十分だった。



 ◇◇◇◇◇◇



 その日、ウェストラント王国の第一王子アーレントと彼がドラゴンから助け出した運命の乙女イルセとの結婚式が盛大に行われた。

 国を挙げての盛大な結婚式は、王家を慕う多くの国民に祝われ、つつがなく終了した。

 白いドレスに、カサブランカのブーケを持ったお義姉さまはそれはそれは清楚でお美しくて、涙が出るほどだった。

 お義姉さまの一歩一歩に寄り添い、とろけるようなまなざしでお義姉さまを見つめるお兄様に、招待客の皆が唖然としているのがおかしくて仕方なかった。


 夕刻からは、ウェストラント城で貴族が招かれての披露を兼ねた舞踏会が開かれる。

 赤のドレスに着替えたお義姉さまも、とても美しかった。

 ホールの中央でお兄様と見つめ合い、幸せそうにたおやかに踊る姿は、ため息とともに皆の視線を奪っていく。


 その時だった。

 ドン、という衝撃が走り、城全体が揺れ、人々の悲鳴があがった。

 同時にホールの高窓に、深い青を身に纏う一人の青年の姿が浮かび上がる。

 ただそこにいるだけで目を奪うその存在感に、会場中の人々は、皆目を離せなくなる。

 彼は、中空で静止し、そのまま見えない「何か」に手をかけると、それをこじ開けようとする。

 彼が力を込める度に、バキバキという音がホールに鳴り響き、城がびりびりと揺れる。


 ウェストラント城を守る結界が力技で引きはがされようとしていた。


 ――来たのね、デニス。


 強さや覇気を感じないなんて言ってごめんなさい。真の強さを持つあなたは、その強さを完璧に隠し通していたのだものね。

 彼が城の結界を破るために開放した覇気を感じとれば、自分がどんな馬鹿な勘違いをしていたのかが手に取るように分かった。


 お兄様はストレス発散のために毎夜暴れていたのではなかった。

 お義姉さまを連れ戻すために現れた彼と、一騎打ちを繰り広げていたのだ。

 そして昨夜、兄は彼を「討ち損じた」のだ。


 彼の強さは、お兄様とほぼ互角。


「え? あれ? デニス? ええ? なんでここに?」

「イルセ、ここで待ってろ」


 そう言ってお義姉さまを置いて進み出ようとするお兄様を、私は紫のドレスを翻して片手で制した。


「お待ちください、お兄様。今日はお二人の結婚式ですもの。お二人のお手を煩わせたくありません。ここは私にお任せくださいな。――それに、私、彼とは少し因縁がありますの」

「え? ちょ、ちょっと待って。妹ちゃん!」

「すまないな、アンジェリカ。借りは後日まとめて返す」

「え、アーレントも何言ってるの? まさか、戦おうとかしてないよね? デニス強いんだけど! 私とは全然違うんだよ! 里でも今の世代で最強だって話で」


 お兄様は、私の肩に手を置くと耳元でそっと囁く。

 

「叩き伏せろ。そうすれば――」


 私は、その答えを、無言の笑みで返した。



 ◇◇◇◇◇◇



 私の伸ばした右手の先の何もなかった空間に、深紅の宝石をはめ込んだ杖が、光に包まれて形をとる。


浮遊レビテーション


 私は、結界を引きはがそうとするデニスの前の中空に身を浮かべた。


「お前、どうしてここに」


 私はにこりと笑うと結界の向こうの彼に杖を向ける。

 そして。


爆炎エクスプロージョン


 結界ごと彼の体を吹き飛ばした。

 私は、結界の外に出ると、左手を振り、自分の開けた背後の結界の穴を閉じた。

 炎の爆炎と轟音が収まると、その中で青く光る覇気をまとった彼が、無傷で立っていた。


「お前、治癒魔導士じゃなかったのかよ」

「自己紹介がまだだったわね。私は、ウェストラント王国の第一王女にして賢者アンジェリカ。最強の治癒魔導士にして、最強の攻撃魔導士よ。勇者が魔道を究めたら、最強の賢者になるのは当然でしょう?」

「……勇者」


 強さを隠していたのは私も同じ。

 

 対外的に治癒魔導士とされていたのは、私を国外に嫁がせる際の、国家間のパワーバランスを考えてのこと。勇者の力は、力なき者にとっては脅威でしかない。

「強さ」のお兄様。「癒し」の妹。

 その実、お嫁に行けなくなってしまうからと、お母様が必死に隠していただけなのだけど。


 でも、そんなのもう、どうでもいい。


「なんだよ、それ。俺はお前がただの人間の女だと思って!!」


 私は昂る気持ちを抑えられない。

 彼の覇気に当てられて、引きずり出されるこの気持ちをどう表現したらいいのだろう。

 明確に表現する言葉を私は持たなかった。


――ただ、どうすればよいかだけは知っている。


「お前は、俺を治してくれた。飯もくれたし、俺も食わせたし」


 私は、杖を一振りすると、十連の氷の刃を自身の周りに出現させ、デニスに突き立てた。

 デニスは、なんなくその氷を片腕で叩き落していく。


「ねえ、そんなのどうでもいいわ。あなたは、お義姉さまを攫いに来た敵。それだけよ」

「俺は、お前となんて!」


重力グラビティ


 デニスは襲い掛かる超重力で地面に叩きつけられ、その体で大地をえぐった。


「ねえ、私のことを馬鹿にしてるの? それとも私の強さが分からないほど、あなたは頭が空っぽなのかしら? 所詮は卑しき魔獣ね。その血を搾り取り、革を剥いで役立てるぐらいしか使い道がない」


 私は、彼の一族を蔑視する言葉を口にする。

 彼らにとって、私達は、そういう存在なのだ。


「てめえっ! ああ、そうか、そうだな、お前は、知ってたんだな……俺の正体を。兄弟そろって、俺を馬鹿にしてたってわけかっ」


 びりびりと空気を震わせる覇気が宙に立つ私のドレスまでも翻した。

 私は、目を伏せると無言で彼の覇気をこの身に受けた。

 高揚感に、体震える。


「イルセだけでなく、俺まで、使いつぶそうってわけか」


 私は、大きく息を吸って震える体を落ち着かせた。

 もう、後戻りはできない。

 するつもりもない。


 私は、翻る紫のドレスの裾を重力で押さえ、顔を上げると、デニスに微笑み、ゆっくりと杖を掲げた。


「御託は結構よ。かかってらっしゃい。叩き伏せて差し上げるわ」



 ◇◇◇◇◇◇



「ほうほう、久しぶりじゃなのう。アンジェリカの全力が見られるとは」

「まあ、あの子も成長したのかしら。楽しみねえ」

「あの、デニスはほんとに強いんです! 妹ちゃんを助けに行かないと!」


 のんびりとした声で上空を見上げるのは、五十年前にドラゴン討伐を成し遂げた勇者である祖父と祖母の二人だった。

 そんな祖父母の様子に焦り、必死になって妹を助けにいこうと訴える新妻イルセの様子は、たまらなく愛らしい。

 そんな中、一人だけ青い顔をしている母が、俺に向かって叫ぶ。


「アーレント、止めて来なさい!!」

「お義母さま。そうですよね! 止めないと!」

「そうよ、あの子ったら、これがばれたらお嫁にいけなくなっちゃうわ!」

「え」

「母上、アンジェリカは俺に任せろと言いました。彼女は、『決めた』のでしょう。俺は妹の意思を尊重します」

「なんてこと。あの子は、あなたとは違うと思ったのに……」

「俺とアンジェリカはよく似ていますから」


 母はそれを聞くと、さらに真っ青になって、ふらふらとめまいを起こしながら、父に連れられてホールを後にした。


「もう、もういいです! 私が止めます! だいたいデニスは何しに来たのよ! 戦う必要がどこにあるの!? これだから脳筋一族はいやなのよ! 妹ちゃんは私が助けるからいいわ! アーレントの馬鹿!!」


 そう言って彼女は、自ら「変化」し、妹の元へ向かおうとする。

 これはいただけない。

 妹の好意が無になってしまう。

 俺は、彼女を背後から抱きしめると、その喉元にある、独特の形をした鱗――逆鱗に舌を這わせる。


「ひうっ」


 彼女の体からは途端に力が抜け、その小さな体は俺の腕の中に収まった。


 周囲に目を向けるが、異常な事態だと言うのに、ホールから避難する招待客は誰もいない。妹の戦いを、結婚式の余興として楽しんでいる節すらあった。

 上空で戦う彼らを照らす光はなかったが、彼らの体自体が覇気による輝きに包まれている。この舞踏会に招かれるレベルの者達ならば、その戦いをはっきりと視認できているのだ。


「いやあ、五年ぶりっすかねえ、姫様の魔法合戦」

「きゃーん、さっすがあたしの姫様! かっこいいですー。惚れ直しちゃうー」

「え? ねえ奥さん、それ、浮気? 浮気なの!?」


 騎士団長とその妻はいつものごとく緊張感のかけらもない。ちなみに騎士団長の妻は妹の侍女として仕え、妹に心酔しきっている。


「アーレント。お願い。妹ちゃん、助けなきゃ」


 俺の腕の中から涙目で訴えてくるイルセの姿は、容赦なく俺の理性の限界を試しにくる。

 必死な彼女の様子が可愛くて誤解をそのままにしておいたが、そろそろ潮時だ。


 さて、この可愛い生き物をどうしてくれよう。


「あいつに助けなど必要ない。俺でもあいつに勝てたことはないからな」

「え?」

「勇者の一族は、魔導においても最強の資質をもっている、それだけだ。あいつは怒らせない方がいいぞ」

「え……? 妹ちゃん、そんなに?」

「さあ、いくぞ、イルセ」

「え? あれ、ほっといていいの?」


 今日は祖父母もこの場にいる。大丈夫だろう。


 それよりも。


 俺は、愛しい番の、耳元に唇を寄せた。


「イルセ、忘れてないか、今日は俺たちの初夜だってことを」

「ひうっ」


 耳まで真っ赤になる彼女を腕の中に抱えて、俺はそっとホールを抜け出した。



 ◇◇◇◇◇◇



「てめえ!」

「動きが粗いわね――水渦ウォータートルネード


 高速で距離を詰めて私に捕らえようとするデニスの脇をするりと避けて、その背中に魔法を叩きつけて距離を取る。


 魔導士には、近距離戦。

 セオリーだけれど、私の近距離戦の練習相手はお兄様だった。

 生半な攻撃で私を捕まえることなどできはしない。


 近づき、攻撃を受け、離れ、それを幾度も繰り返すデニスの狙いをさとり、私はため息をついて見せる。


「私の魔力切れを狙っているのだったら無駄だと言っておくわ。私は、このペースなら、三日三晩戦えるもの」

「ちっ」

光糸ライトストリング


 光の鞭が、デニスの体を絡め取り身動きを取れなくする。


「お前、何属性使えるんだ。ははっ。すげえな」

「開き直る余裕なんてないんじゃないかしら? ――破壊ブレイク

「がっはっ」


 彼の体中の骨を粉砕するための魔法を使うが、それはさすがに阻まれる。

 骨は数本程度。

 そのまま、地面に叩きつけた。

 地面の上は、私が敷いた治癒のエリア魔術が展開されている。


 彼は、大地に手を突き、ゆらりと起き上がった。


「勇者は気に食わねえし、許せねえ。だけど、お前すげえな。惚れ惚れするぐらい強え。こんなに強え女、初めてだ」

「そんな女に叩き伏せられる気分はいかがかしら?」


 叩きのめして、プライドをずたずたにして、屈服させてやる。

 けれど、それにはまだ足りない。

 なぜなら――。


「ねえ、あなた、本気を出してないでしょう」

「ああ、そうだな。この姿で勝てるほど、甘くはないみたいだ。お前には、本気で相手をしてやる」


 そして、彼の変化は訪れた――。



 ◇◇◇◇◇◇



 デニスの体は、青く、渦巻く水流に包まれた。

 そして、その身は姿を変える。

 猛々しく、雄々しく美しい、青き覇気をまとったドラゴンの姿に――。


 圧倒的な水流が叩きつけられる。私は、目の前に壁を作り、対抗する。

 屈服させるために、力には力を。


「っつ」

「どうした! 勇者!」


 しかし、わずかに押され、私は、更に魔力を込めた。

 そして押し戻すタイミングで、彼の羽を狙い、風の刃を繰り出す。


「竜化しても、その程度?」

「くそっ」


 私たちは、戦い続ける。

 幾度も、私が叩き伏せ、彼は立ち上がる。


 言葉はない。


 それは、純粋に力と魔力ちからのぶつかり合いだった。




 気が付くと、大地の端が茜色に白み始めていた。


 その茜色から連想したものは、私もデニスも同じだったらしい。


「ちっ。こんなんじゃイルセに顔向けできねえ」


 その言葉は、ずきりと今まで以上に私の心臓を貫いた。

 戦いは問題ない。

 まだ私にはデニスをいなす余裕さえある。

 

 でも、私の心はもう、崩れる寸前だったのだ。

 戦いの中、彼の纏う覇気は今までよりも格段に大きく、濃くなっていた。

 すれ違い、距離が近くなる度に デニスの纏う覇気が、香りが、私を乱す。

 どうしよう。

 どうしよう。もう戦いたくない。

 傷つけることが耐えられない。

 だって、彼は、私の――。


「……そんなに、そんなにお義姉さまが大事?」


 そして、揺らいだ私は、今、絶対に聞いてはいけない一言を声に出してしまった。


「ああ、あいつはお前らにはやらねえ。――この俺も、まだやれねえ」


 デニスの答えは、私をどん底まで突き落とした。

 弱った心を、その一言はナイフの様にえぐってくる。


 ――彼を力で捻じ伏せて、戦いに勝って、それからどうするの?


『叩き伏せろ。そうすれば、お前の物になる』


 お兄様、それでも手に入らないものはあるのよ。


 彼は――。


 彼は、私の「つがい」なのに。


 それなのに、彼の心はお義姉さまのものなのだ。


 目の前にいる番が手に入らないと知れた時の絶望がどの程度凄まじいか、私は、それを今体感していた。


 この苦しい想いも彼との記憶も全て捨ててしまいたい。

 いっそ知らなかった時に戻りたかった。

 でも、そんなこと、できるわけがなかった。


 この狂おしい、手に入るなら悪魔にさえ全てを差し出してしまいそうになるほどのこの想いを、どうせ捨てられないというのなら――。


「俺は負けねえ! 俺の一番の大技をみせてやるよ。防いでみやがれ!」


 硬度を増した高速の渦を巻く水流が、幾重にも折り重なり私に向かってくる。


 どうせ捨てられないというのなら――。


 私は、目をつぶった。

 体の力が抜けていく――。

 捨てられないこの気持ちと一緒に。


 ――私自身が消えてしまえばいい。


 絶望に身を委ねた私にとって、それは甘美な解放への誘惑だった。


 そして、竜の咆哮が、夜明けの空に響き渡った。



 ◇◇◇◇◇◇



 彼が欲しかった。


 勇者の一族には、数世代に一度、ドラゴンを番と求める者が現れる。

 お爺様とお兄様がそう。

 女性でそのような者が現れたと聞いたことはなかったから、私は自分がそうなのだとは思いもよらなかった。

 縁談のお相手に興味はわかなかったけれど、政略結婚なのだし、結婚してから側にいれば自然に情が湧いてくるだろうと思っていた。

 でも、違った。

 今思うと、お義姉さまに会って、言いようのない愛おしさが募って仕方がなかったのも頷ける。ドラゴンと人とのハーフであるお義姉さまは気配を隠すのがあまり上手ではなかったために、私はドラゴンの匂いに当てられてしまっていたのだ。

 デニスは、気配を隠すのが上手かったので気づかなかった。

 だから、彼がその覇気を、身に纏わせた瞬間にやっと気づいたのだ。


――そう、この男こそが、私の「番」なのだと。


 彼が、欲しかった。

 欲しくて欲しくて欲しくてたまらなくて。

 だから、手に入らないと思った瞬間、いっそ全てを捨ててしまいたいと思えるほどの絶望に駆られたのだ。



 ◇◇◇◇◇◇



「馬鹿野郎! なんで防がねえ!!」


 あんな攻撃を受けて生きているなんて、勇者の体は丈夫すぎて困ったものだわ。

 ただ、焼けつくような熱さでお腹に大きな穴が空いているの感じ、私は自身の終わりが近いことを悟った。

 人型に戻って私を抱きかかえているデニスは、端正な顔をぐちゃぐちゃに歪めていた。

 最後に、この人にこんな顔をさせることができたことが少し嬉しい。

 番の腕の中で死ねるなんて、こんな時だと言うのに、私はたまらなく幸せだった。


 意識がなくなる瞬間までこの顔を見ていたい。


「畜生! 勝負を投げやがって! ふざけんな!」


 ごめんね、あなたの勝ちでいいわ、と言おうとしたが、口からこぽりと血の塊が溢れただけだった。

 デニスは、腕で目にたまった涙をぬぐうと、私を強くにらみつける。


「決めた。覚悟しろよ。お前を絶対自由になんかしてやらねえ」


 おかしい。

 私の心と本能はもうあなたに囚われてしまっているのに。

 笑おうとしたけれど、私の口からはまた血の塊だけが零れ落ちて、彼の口元を震えさせただけだった。


 デニスは、大きく息を吐き、着ていたシャツの襟をびりびりと裂いた。

 喉元に、人型になっても消えない鱗が朝日を受けてキラキラと光った。


 竜の逆鱗。


 引きはがされ、飲み下されると、その相手の奴隷になるという、ドラゴンの唯一の弱点。

 何故それを私に見せてくれるのかと疑問に思いながらも、私は、美しいその透明な鱗をうっとりと眺めた。


 けれど次の瞬間、デニスは、それに手をかけると、迷いなくそれを引きはがしたのだ。


「があああああーーーーっ」


 竜の咆哮が大地を揺るがす。

 逆鱗を引きはがされる痛みは想像を絶するという。

 大きく肩で息をするデニスが、真っ青な顔のまま、私の口元にそれを差し出した。


「飲めよ」


 信じられない。

 彼は何をしているんだろう。


「そんな傷、これを飲めばすぐ治るから! さっさと飲めよ!!」


 彼は、私を助けようとしている。

 嬉しい。

 でも、私の体にはもう、それを飲み下すだけの力はなかった。

 もう十分だった。

 私の目から涙が落ちる。


「ちっ」


 それを見ると、彼は舌打ちをして、自らの逆鱗を口に含み、バリバリとかみ砕いた。


 そして、私に口づけ、それを飲み込ませた。

 口に入ると、それはほろほろと溶けていく。


 ――体に染み渡るそれは、ひどく苦くて、甘い、甘い味がした。



 ◇◇◇◇◇◇



「もう、もう信じられないわ! あなたが頑丈すぎる結界を張ってしまうせいですぐに助けにいけないし!!」

「ごめんなさい、おばあ様」

「まあまあ、いいじゃないか、アンジェリカも反省しているし。おかげでわしやアーレントのように旅に出なくても、こんなにいい番が自分から寄ってきたのじゃからな」

「えっ、それ、俺褒められてる?」


 褒められていない。

 番と書いてばかと読ませてませんか、おじい様?

 私は、もう大丈夫というのに、自室のベッドの上に押し込められていた。

 心配しすぎたデニスによって。


「しっかし、ありゃないだろ。勇者のドラゴン討伐と奴隷の話。里の連中、みんな信じてるぜ」

「ふふ、でも楽しめたでしょう?」

「そうだなっ。確かに、強え奴とやりあえたから、いいけどな。うん、黙っといた方が面白いな」


 おばあ様とデニスが妙に意気投合しているのは、同じ種族のせいなのだろうか?

 ちなみに、五十年前にドラゴン討伐に向かった勇者が祖父で、その時に連れ帰った花嫁――ドラゴンの里では勇者に生贄にされ行方不明になったといわれているドラゴンが祖母である。

 ドラゴンの里長の親友である祖母は、溺愛され里帰りさせてもらえないのをいいことに、前述のような扱いになっているらしい。ちなみに里長はよく祖母の離宮に遊びに来ている。

 いい迷惑である。

 ドラゴンってみんなこんなに脳筋なのかしら?

 そう考えていると、バタン、と部屋のドアが開いて茜色の髪の小柄な美女が飛び込んでくる。


「この馬鹿デニス!! 妹ちゃんに何すんのよ」

「いて、いてっ、イルセ! 俺はお前を心配してだな!!」

「もう、もう、ちょっと話せばすぐわかることなのにっ。だからドラゴンの里の連中は脳筋でついてけないのよーっ!!」


 みんなこんなに脳筋みたいですね。

 お義姉さまが平和主義でよかったわ。


 私は、お義姉さまとデニスの親し気なやり取りを静かに見守った。

 じくじくと痛む心臓をどうにかやり過ごす。

 人型になり、覇気を押さえたデニスを前に、私は少し冷静になって対応できるようになっていた。


「触るな」


 そこへ、お義姉さまに遅れて部屋に入って来たお兄様が、お義姉さまの腰をさらった。


「いや、違うだろ! 殴りかかってきたのはあいつの方だ」

「うるさい」

「ちぇ。……ああ、お前も、すまなかったな。ほら、イルセが奴隷にされて殺されちまうのかと思ったからさ」


 お兄様の刺すような目つきに臆することもなくデニスは続ける。


「まあ、お前が強かったから、だんだん楽しくなってきちまったのも否定しないけどな! またやろうぜ――『お義兄様』」

「俺はお前の義兄じゃない。おまえは、ただの妹の奴隷だろう」

「お兄様!!」


 この兄に繊細さなど期待できるわけがなかった。デリケートな部分にずかずかと土足で踏み込んでくる。

 私はぎゅっと唇を引き結ぶ。


「……皆様、私とデニス、二人だけにしてくださる?」


 皆、心配そうにこちらを見ながらも、何も言わずに部屋を出て行ってくれた。

 部屋には、デニスと私だけが残る。


 私は、そっと息をつくとデニスの方に向き直った。

 これから、私達は、大事なことを話さなければならない。

 私は自分のしでかしたことの責任を取らなければ。


「ねえ、逆鱗を与えてしまったドラゴンは、どうなるのかしら?」

「ああ? どうって、飲ませた相手に逆らえないし、相手が死んだら死ぬ」

「死ぬ?」

「あ、人間の寿命に合わせて、俺が早死にするって意味じゃないぜ。お前と寿命を分け合って、お前がそれなりに長生きになるって意味だ。あー、人間ってそう言うの気にすんだっけ? まあ、いいだろ。あのままじゃお前、死んじまってたしな」

「それは、デニスの寿命が削られるという意味ですの?」

「まあ、そうなるな」


 私はさらりと言われたその事実に、蒼白になる。

 隷属だけならば、最悪、私にその意思がなければ、どうにかなると思っていた。

 でも、寿命に関してはどうするればよいのだろう。彼の命を奪うような、こんな最悪な契約で縛りつけてしまったなんて。


「……デニスは、お義姉さまを連れ戻しに来たんでしょう?」

「ああ、まあ、そうだな」

「それなのに……ごめんなさい」


 大切なお義姉さまを取り戻しに来たデニスに、こんな命を削る決断をさせてしまった自分の馬鹿さ加減に腹が立って仕方がない。

 私の行いは、自分の命を盾に彼を脅迫してしまったようなものだったのだ。

 そして、彼は、死にかけた人間を見殺しにするという選択ができなかった。


 俯くと握り締めた手の甲に涙がぽたぽたと垂れた。

 少し冷静になった今ならわかる。

 彼に対し番の執着を持っているのは私だけだ。

 欲しくて欲しくてたまらなかったからと言って、それは、手に入れていいものではないのだ。手に入るものでもないのだ。

 それも力任せに叩き伏せるなんて方法で。

 お兄様の言葉に踊らされて我を忘れた自分が信じられない。


「お、おい、何で泣くんだ!?」

「ごめ……なさ……。あな……にあんな選択……させて……しまって……」

「あんな選択?」

「あな……の命を、わた……ために……削って……」

「逆鱗をの飲ませたこと言ってんのか? 当然だろ。俺は、惚れた女をむざむざ死なせるような甲斐性なしじゃねえからな」

「え?」


 彼の言葉に私は思わず顔を上げた。

 言われた意味が分からなかった。

 いや、信じられなかった。

 なあ、泣くなよ、といいながら必死に私の頭をなで始める彼の顔を見上げる。

 都合よく解釈をしてしまいそうになる自分の心があさましくて嫌になる。 


「デ……スが惚れている……は、イルセお義姉さま、で……しょう?」

「そこからかよっ、ひょっとして通じてないのか!?」


 デニスは、頭を抱え込んでしまった。

 番を前にして馬鹿になってしまった私の頭は、考えてもろくな結果に結びつきそうにない。私は、ただ、デニスが与えてくれる答えをじっと待った。

 デニスは、意を決したように、顔を上げると、私の肩に手を置いて、真剣に向き合う。


「俺はお前に、ちゃんときゅ、求愛もしたしっ。お前も受けただろ! ドラゴンが惚れた女に命かけるのは当然だ」

「え? 求愛?」

「お前、俺の手から食べただろ、飯! それに、お前、俺に負けただろう? だから、お前は俺のものだ。もう、自由にしてやらねえって言っただろ」


 ドラゴン流の色々はよく分からないが、私は今、告白されているのだろうか?


「お義姉さまは?」

「あいつは、妹みたいなもんだ。弱っちいから面倒見てた。幸せならそれでいい」


 いいのだろうか?

 私は、番を手に入れていいの?

 欲しくて欲しくて欲しくて。

 こんなにも欲しかったものを手に入れていいのだろうか?


「デニス、私の事、好きですの? どうして?」

「優しいし。めしうまいし。可愛いし。ちっちぇえし。馬鹿みたいに強えし。こんな強え女見たことねえ。惚れる要素しかないだろ!! ってかなんだよそれ、通じてなかったのかよっ。だいたい、何とも思ってねえ奴に、逆鱗をやったりしねえ! ……ああ、知らねえのか。ほんとに仲のいい夫婦だけが、逆鱗を交換したりするんだ」

「嘘。ほ、本当に?」

「そう言ってるだろ。ちくしょう、もう一度体に教えてやらねえと、俺のものにはならないってことか? でも、逆鱗やった相手と本気でやれんのか?」


 再びのバトルの予感に私はおののいた。


「え? あ、あの、そのドラゴンのやり方は、あまり」

「あ、そうだよな。人間のやり方の方がいいよな。なあ、人間のやり方で体に教えてやりたいときってどうやればいいんだ?」

「……」


 私の顔が真っ赤になってしまったのは、私が破廉恥だからではないと思いますの!


 それからのことは、割愛する。

 デニスが、人間のやり方とやらで、私に色々思い知らせてくれたことなんて、言えるわけないでしょう!


 ただ、一つだけ言えるとすれば。


 私は、番を手に入れた、世界一幸せな勇者になったのだった。


(Fin)



勇者のお話が気になりましたら、イルセとアーレントのお話 「どうせ逃げられないのなら」もご覧くださいませ。こちらも短編です!


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