01-07 結成、毎日戦隊
「ええとそれでは、ダンジョンの所有権はお持ちになると。お仲間の遺体についてはこちらで?」
「それでお願いします。費用に関しては踏破報奨金から差し引くと言うことで」
「かしこまりました。それで登録ですが・・・」
ヒョウエがギルドの職員と種々の手続きをしているのをモリィはぼんやりと見ていた。
ギルドと各国の協定で、ダンジョンの所有権は基本的に最初にダンジョンコアを安定化させた人間、もしくはパーティのものになる。今回に関しては「ぶんどり品は全てヒョウエのもの」という約束があるため、ヒョウエの全所有だ。
(故人の装備やモリィたちが倒した分の魔力結晶はモリィに渡されている)
ダンジョンマスターはダンジョンをある程度操作できるため、内部のモンスターが地上に出てこないようにする、つまり金をかけて軍隊を貼り付けなくても安全に収益を上げられるようにできる、というわけだ。
その様な事情があるためダンジョンを踏破した冒険者には報奨金が支払われ、踏破が早ければ早いほど額は上乗せされる。更に所有権を売却すれば莫大な一時金が支払われる。
所有し続ける場合でも管理は基本的にギルドが代行し、冒険者から利用料を徴収する。
利用料は中で手に入れた魔力結晶や宝物の1割。これを国とギルドと所有者で三等分。
この「あがり」の額はダンジョンの性質や立地にもよるが、難易度が比較的手頃で王都から30分という理想的な場所にあるここなら、遊んで暮らせるレベルの額が毎月転がり込んでくるはずであった。
ギルドの職員たちがガースたちの遺体を簡単に清めて荷馬に乗せる。
ヒョウエがこちらに歩いてきた。
「お仲間の遺体を神殿に運んで葬式を上げて貰います――モリィ?」
「ああ悪い、ちょっとぼうっとしてた。もちろん行くよ。
・・・これでお前も大金持ちだな。おめっとさん」
モリィの祝辞にヒョウエが肩をすくめた。
「ところがそうでもないんですよね。返さなきゃいけないお金がありまして」
「ダンジョンを即日踏破して足りない? いったいいくら借りてんだお前」
呆れたようにモリィが言う。
繰り返すが、普通なら一生遊んで暮らせる額である。
「まあ色々と入り用でして」
あはははは、とヒョウエが頭をかいた。
すっかり暗くなった森の中をギルド職員の引く荷馬がゆっくり進む。
遠くない時期にダンジョン直通の道が整備されるだろうが、今はまだ道もなく馬車や荷車が通ることはできない。
その後ろをモリィとヒョウエが並んで歩いている。
翌日、死者の魂を司る霊魂の神の寺院でモリィの仲間の葬儀が行われた。
参列するのは司祭と墓堀人、ギルド職員、モリィとヒョウエだけだった。
葬儀はつつがなく終わり、司祭と墓堀人、職員は一礼してその場を後にする。
遺品のうち武具などは修理の上ギルドの店で売りに出されて葬儀代の支払いに充当される。家族の所在がわかっているものにはギルドが代行して形見などを届け、場合によっては一族の墓地に葬り直すこともあった。
ともあれ彼らに関する限り、これでモリィとヒョウエのすることは終わりだった。
「・・・・・・・・」
四人の墓碑の前でモリィは動かない。
ヒョウエも何も言わない。
しばらくそのまま時間が過ぎ、やがてモリィが振り返った。
「悪かったな、もういいぜ・・・つっても、これでお前とのパーティも解消か。
付き合ってくれてありがとよ。命を助けてくれたことも含めて、改めて礼を言うぜ」
さみしそうに笑うモリィに対し、ヒョウエは僅かに笑みを浮かべる。
「・・・?」
「それなんですけどね、このままパーティを組みませんか?」
「なぬ?」
予想外の言葉だった。
「いやそりゃ・・・あたしとしちゃ願ってもない話だけど、お前あたしと組んでもメリットがないだろ?」
「そうでもありませんよ。僕の攻撃は物理系がメインで、つまりスライムやエレメンタルみたいな、不定形だったり実体が薄い敵は苦手なんですよ。
その点雷光銃を持ってるモリィさんは相方として最適なんです。《目の加護》や色々便利な技能も持ってますしね」
「―――」
思わぬ高評価に一瞬動きが止まる。照れ笑いをしながらモリィは右手を差し出した。
笑顔のまま、杖から離した右手でヒョウエがそれを握る。
「それじゃあパーティの登録ですね! 六虎亭とモリィさんの使ってる方とどっちにしましょう」
「そっちでいいよ。別にあそこにこだわる理由はねえしな」
「パーティ名はどうします?」
「好きに決めていいぜ。どうせ大して使うわけじゃなし」
こうして一つのパーティが解散し、一つのパーティが生まれた。
彼らがこの先どのような冒険をするかはまだわからない。の、だが・・・。
数日後。
「ヒョウエ! おいヒョウエのクソ野郎はどこだ!」
「何ですか、ここにいますよ」
冒険者の酒場『六虎亭』。
王都の南門近く、スラムにもほど近い場所にある冒険者の酒場だ。
カウンターで係員と何やら話していたモリィが、オムレツをほおばるヒョウエの所にドスドスと足音を立ててやってくる。
「で、なんです?」
「これだよ!」
モリィがテーブルに叩き付けたのは依頼受諾書。
「何だよこのパーティ名! 意味わかんねーよ! 受付の姉ちゃんに笑われたぞ!」
「好きに決めていいって言ったじゃないですか」
「オメーがこんな頭の沸いたセンスの持ち主だとわかってたら言わなかったよ!」
モリィの剣幕に口を尖らせてヒョウエが抗議する。
「なんですか、失礼な。かっこいいじゃないですか!」
「どこがだ!」
ギャアギャアとわめくモリィ。真顔で反論するヒョウエ。
モリィが叩き付けた依頼受諾書。そのパーティ名の箇所にはこうあった。
『毎日戦隊エブリンガー』。
こちらでは初めまして、ケ・セラ・セラです。
前作が二次創作だったのでオリジナルの異世界ものを書いてみたいと思ったのですが、異世界転生+アメコミヒーロー風味(あくまで風味)っぽいものになりました。
取りあえずたらたらと投稿していきたいと思っておりますので、よろしければご笑覧下さい。
感想・評価等よろしくお願いします。