〜第1章〜 3話(2)
でも、セレスティとスカイアーはそもそもでブランドの格が違う。スカイアーも十分高級ブランドだけど、セレスティは国内最高レベルの高級ブランドで、ドレスは最低でも1着数百万円。さらに、高位貴族の伯爵家以上でないとセレスティの店内に入ることはできない。
ゲームでも、セレスティの存在は描かれていたが、手に入るアバターのブランドは庶民向け既製服ブランド“メルベット”、ファッション・アクセサリー両ブランド“ラジュリ”、可憐系高級ブランド“スカイアー”の3つのみ。
ビオラは少しキョロキョロした後、私の方を見て唖然とした。
ゲームではこのイベントの時、ベルリディアはスカイアーで過去に買ったドレスを着ていた。でも、今私は違うドレスを着ている。それも、ビオラが着ることのできない最高級ブランドの。
ビオラはその後、すぐにどこかに行ってしまう。
すると、ビオラと入れ替わって王太子がやってきた。私は、取り巻きの子を連れて王太子の前にツカツカと歩いていく。そして、一言。
「殿下?どういうつもりなのかしら?」
王太子はすぐに、私が言いたいことがわかったようで少し慌てる。
「ベル、これはその…。」
口籠る王太子を見て、私はさらに詰め寄った。
「婚約者をほったらかして自分は好き勝手するなんて王族としてどうなのって思うのだけど。」
「そうですわ!どうして婚約者のベル様をエスコートなさらないのです?」
「おかしいですわ!ベル様は今日エスコート役の方いらっしゃらないのよ?」
ナンナとサラも加勢してくれる。
「せめて先に断りを入れるとかされたらよかったのに、それすら無いんだもの。」
王太子はしょうがないだろ、とかしか言わない。すると、柱の影からビオラが現れる。
「ベル様、あまり殿下を責めないでください!殿下は悪くないわ。」
おぉうあんたに言いたいことも山ほどあるけど今口を出すな…なんてベルリディアの口から言えるわけがないから、私はビオラに向かって一言、「黙らっしゃい。」
ビオラは少しおとなしくなる。
「で?言い訳は?周りの目があるわよ。」
そこまで言っても王太子は何も言わない。私は切り札を使うことにした。
「どうして何も言わないのかしら。謝罪の一言くらい無いの?お父様になんとかしてもらおうかしら。婚約破棄でもいいわね。」
すると、ようやく王太子は口を開いた。この婚約を破棄すると、王太子はルトルバークの恩恵が受けられなくなり、王太子の立場も危うくなる可能性があるから。
「…エスコートしてやれずにすまない、ベル。」
私たちが話し終えたのを見て、ビオラが割って入ってきた。
「ベル様、今日はスカイアーのドレスじゃないんですか?」
すぐさまビオラはルーシャ達に睨まれる。私は笑顔をスッと消してビオラに向き直った。
「あなた、何なの?私の名前を気安く呼ばないで。失礼よ。」
ビオラは縮こまったが、負けじと言い返してくる。
「で、でも後ろの方もそう呼んで…。」
「ルーシャ達は仲がいいけど、あなたはそうじゃないわ。」
「はっきり言って貧乏令嬢とベル様は身分が違いすぎるんですの!」
エリスも加勢すると、ビオラはビクビクしながら謝ってきた。
「申し訳ありません、ルトルバーク令嬢…。」
「それでいいのよ。」
私とルーシャ達6人は、その場を離れた。