〜序章〜
〜序章〜
「あ、あれ…。」
私、死んだはずだよね。
性悪女に恋人を奪われた上にその子が私の有る事無い事周りに言いふらして、切れた別の女に階段から突き落とされた…はず。
私は、白いネグリジェを着た状態で、バカでかいベッドの中にいた。さらに、なんか些か髪が長い。ベッドから出て、そばにある鏡台の鏡を覗き込むと、私の容姿は大きく変わっていた。目はバイオレットカラー、髪はシルバーホワイトのスーパーロング。
私は、この容姿に見覚えがあった。
多分、乙女ゲーム“恋せよ星の乙女”の悪役令嬢“ベルリディア・ルトルバーク”だと思う。
落ち着きすぎだって?
なんか一周回って冷静になっただけよ。
ベルリディアはこのゲームの世界で“御三家”と呼ばれる貴族のうちの1つ、ルトルバーク公爵家の一人娘。
わがまま放題の公爵令嬢で、ゲーム内ではヒロインが攻略対象と恋をするのを邪魔する悪役。特に自分の婚約者である王太子のルートだとヒロインに色々嫌がらせをするが、自分の取り巻きの婚約者や好きな人をヒロインが攻略する時(攻略対象全員)も邪魔をしてくる。
印象的には嫌味な悪女だが、ヒロインは男爵令嬢。身分差を考えれば罪に問われることはしていないんだよね。
鏡を見ながら考えていると、部屋のドアがノックされてメイドの制服を着た少女が入ってきた。
「お嬢様、おはようございます!髪をサッと整えたら、マダムが入ってきます。」
「マダム?」
「お嬢様、お忘れですか?今日は10日後王宮で開かれるパーティーに向けて、ドレスを仕立てる日ですよ。」
私は嫌な予感がした。ゲームでヒロインが誰のルートに入るかが決まるイベントも、王宮で開かれるし今みたいな季節だった気がするから。もし王太子ルートだと、ベルリディアはこのパーティーで恥をかくからだ。
すぐに髪をとかしおわり、マダムが入ってきた。
「ベルリディア様、おはようございます。本日はドレスのデザインをお決めになった後に採寸もいたします。」
入ってきたマダムは、ゲームでも登場する大人気ブランド“セレスティ”の“マダム・エリーゼ”。
その後は大忙しだ。デザイン決めは結構悩んだから1時間以上かかったし、採寸はもっとかかったかもしれない。
でも、ドレスはとても素敵なものになった。
それに、なんたってベルリディアは公爵令嬢。お金には困らない!このドレスは公爵が買ってくれたし、ベルリディアのお小遣いは宝石を大人買いしてもまだまだ残るくらい。
お金持ちって最高だね。