捻じ曲げられた理と繰り返しのはじまり
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聖騎士であるアルフリート・シュノッルはとても礼儀正しく、切れ長な瞳にすっと通った鼻、背も高い。
令嬢たちのファンも多く、その中にリディアーヌの妹イリーナも含まれている。
妹から剣の腕も騎士団でトップクラスなのだと聞いたことがあった。
非の打ち所がなさそうだが、やや表情に乏しく、その礼儀正しさからも冷たい印象を与える。それが神秘的な印象と近寄りがたさを際立たせていた。
「お初にお目にかかります。聖騎士シュノッル様、この度、聖女に任命されました。リディアーヌ・ミカミと申します」
通常であれば辺境伯長男であるアルフリートに声をかけられるのを待つのが礼儀だ。
しかし、神官たちに聖女が先に声をかけるように説明を受けていたため、リディアーヌは先んじて声をかけた。
その瞬間、一瞬だけ深海のような穏やかな瞳の中を星のような煌めきが流れていった気がした。
(光の加減かしら、星空みたいできれいな瞳だわ。それに、なんだか懐かしい感じがする?)
「…………お初にお目にかかります。シュノッル辺境伯家の長男、アルフリート・シュノッルです。聖女様どうか私のことはアルフリートとお呼びください」
「アルフリートさま?それでは私のことはリディアーヌとお呼びください」
「リディアーヌ様」
リディアーヌの名を呼んだアルフリートは、その場に膝をつき、自分の剣をリディアーヌにむけて差し出した。
「アルフリート・シュノッルは、聖女リディアーヌ・ミカミ様に永遠の忠誠とこの剣を捧げます」
その言葉を紡いで、リディアーヌの前に跪く聖騎士は、物語から抜け出した姫に誓いを立てる騎士のようだった。
(せ……正式な騎士の誓い。初めて見た。でも、これって命を懸けて守ると決めた生涯ただ一人の相手に行う誓いではないのかしら。それとも私が知らないだけで聖女を守ることになった聖騎士は、必ずこの誓いをするものなのかしら)
リディアーヌは戸惑いを隠せないが、アルフリートは頭を垂れて微動だにしない。
(こっこれは、やるしかない流れ……)
コクり、と思わずのどを鳴らしたあと、リディアーヌは覚悟を決めて震える手で剣を掲げ、その平でアルフリートの肩に触れた。
「アルフリートさまの忠誠を受け入れます。聖女の祝福とともに、私もあなたをお守りします」
「リディアーヌ様」
その瞬間、顔を上げたアルフリートは蕩けるような笑顔でリディアーヌを見つめた。
(う……うわぁ。凄い破壊力)
たぶん今、リディアーヌの頬は、赤く染まっているに違いない。耳が熱い。
それが、初めての人生でのアルフリートとリディアーヌの出会いだった。
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