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繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第2章 闇の聖女と暗黒騎士は未来を塗り替える
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商人の外堀は埋められる

バルトルトターンです。すでに外堀は埋められてます。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「来たか」


 来客の知らせを受けて、勇者がほくそ笑んだ。ギルマンの案内で、扉が開かれる。


「お初にお目にかかります。レーヴェレンツ商会会長を務めています。ルシアード・レーヴェレンツと申します。この度は、謁見をお許し頂きありがとうございます」

「うん。ルシアード、よろしく」


 ルシアードは、バルトルト男爵家長兄。今回の謁見では、男爵としてではなくレーヴェレンツ商会を名乗った。


 薄茶色の髪と瞳は、バルトルトと同じだが、人の良さそうな弟に比べ百戦錬磨の商人の風格が漂う。


「それで、俺に何の用かな?」

「ええ、うちの愚弟がお世話になっているそうですね」

「ああ、うちの序列四位のことかな?勘当されたって聞いたけど」


 ルシアードは、笑みを深める。


「約束通りキサラギ領との繋がりを作った弟です。勘当なんてするはずもない」

「そっか。でも、序列四位は返さないよ?」

「はは。のしをつけて差し上げましょう」


 今度は勇者が笑みを深める番だった。


「商人の差し上げるほど怖いものはない。ふふっ。だが、今回の取引はそちらの()()()だよ」


 流石にルシアードは、目を見開いた。レーヴェレンツ家における、その言葉の意味はすでに勇者の知るところのはずだ。


「…………言い値ですか?しかしアレについては、実用段階には程遠く……」

「ははっ。すでに最高の鍛治師を手に入れているだろう?それに、ここにはどんな素材でもある。それに完成品の設計図は、今ここに」


 勇者は自分の頭を指差した。


「…………何に使われるつもりなのか教えていただきたい」

「今は魔獣とヒトが戦うためさ。10年後の未来はルシアードにも予想はついているだろう?俺は関与しないよ。どうする?」


「ふふ。可愛い弟の頼みならば。……と言うのは建前で。バルトルトが武器に関する風を読み間違えることはない。ここに留まっているのがその証拠。乗らせてもらいましょう。それから…………」


 ルシアードの自信に満ち溢れた笑顔だけは、武器に関する商談時のバルトルトに似ていた。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「え?兄貴が来ている?」


 バルトルトが駆けつけた時には、すでに話がついたあとだった。


「…………すでに、手遅れ感がある」

「やあ、バル。無事役目を果たしたね」

「…………兄貴」

「この間の言い値の支払いだけど、バルの払い過ぎでお釣りが出たんだ」


 笑顔のルシアードに対し、バルトルトの顔はみるみる曇っていく。


「またまた僕抜きに、何が決まったのかな?」

「そんな警戒するなよ。ふふ。アレの全権がバルのものになったから。というより」

「は?アレってうちの最高機密…………な訳ないよ……な。え?何その笑顔。何企んでるんだよ?」


 ルシアードが、バルトルトに臣下の礼を取る。


「勇者の剣序列四位、バルトルト殿。今後、我が商会はあなた様の傘下に加わりました」

「は?な、何言って……」


 そこに今まで控えていたギルマンが、笑顔のままに口を開いた。


「序列四位は王国でいう三大公爵家に近い扱いでございますので」

「…………は?そんな扱い受けてたっけ?いや、ひたすら書類業務のただ働きさせられてただけだよな?」


「そちらの仕事について今後は、ぜひ我が商会のものをお引き立てくださいませ。序列四位殿」


 跪いた兄、上座にいる弟は暫し見つめあった。


「…………なんだか外堀が埋められている!?」


 キサラギ城に、バルトルトの悲鳴が響き渡った。


「ははっ。バルトルトといると本当に楽しいな。ずっとここにいてくれよ?」

「あっ、あんたやっぱり魔王だろ?!」


 たぶん、勇者に対して魔王と面と向かって言える唯一の男は、今日もブラックな職場にしばられる。



最後までご覧頂きありがとうございました。

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