炎の戦士の正義と守りたい人々
ご覧いただきありがとうございます。本日2回目の投稿です。
(…そういえば、アルフリートさまが私に言った褒美ってなんだったのかしら?)
ギュンターに出会ったせいで、忘れてた記憶が溢れ出してしまった。
「リディアーヌ様?大丈夫ですか?この男やはり始末…」
「アルフリートさま。私…あの、褒美ってなんだったんですか?」
「え?」
一瞬だけ怪訝な顔をしたアルフリートだが、ギュンターと出会ったことでリディアーヌが言い出した内容に思い当たってしまったらしく、顔を両手で覆って天を仰いでしまった。
(アルフリートさまの耳が赤い…。あれ?私何を言って…?)
「―――っ?!あの、忘れて…んっ」
気づくとアルフリートに唇を塞がれていた。
「今、褒美は頂きましたから。忘れ…られないし、忘れないで欲しいです」
(えっ、可愛い…え?人前?え??褒美って。え、なに可愛すぎるでしょう?)
「あー。すまんいいか。いや、やはりお邪魔だったな。はー。出直すか」
「いや、ギュンター殿に話さなばならないことがある。闇の聖女様もいた方が良い話だ」
「ん?なんだ?いてもいいならいるけどな」
気不味そうにしていたギュンターは、アルフリートの真剣な様子に正面を向いた。
「黒龍はどこにいる」
深緑色の瞳に疑惑を含んでギュンターが問う。
「…序列一位殿。何故その情報を求める?」
「近いうちに黒龍が人里へ向かう。闇の聖女様が告げられた未来だ」
赤茶色の髭を撫でてギュンターが呟く。
「にわかには信じられん…が、時期はあっているな」
「どういうことだ?」
「黒龍は、400年前に当時の勇者に屠られた。だが、黒龍は、約400年ごとに人を襲っていると。魔王様に黒龍が暴れた場合は俺が討伐するよう頼まれてているんだよ」
(あの場所にギュンターさまがいたのは、偶然ではなかったのね)
「ま、いくら俺でも伝説の黒龍にひとりで敵うかは分からないけどなっ」
朗らかに笑うギュンターだが、この男は聖女と聖騎士だったリディアーヌとアルフリートもあの時に屠っているのだ。
「あの。ギュンター様はなぜ聖女を目の敵にされているのですか?」
「ん?そんなことをまでなんで知ってるんだよ。いや闇の聖女の力なのか?…まぁ、いいか。…そんなのこの城の周りに広がる街を人間を、守りたいからだろ?」
リディアーヌは、何も言えなくなってしまった。たしかに聖女は人間を守る。そのために戦う。そう教えられてきたし、守ろうと思ってきた。今までの人生でも必要なら戦ってきた。
(でも、敵だと思っていた魔王領の街の人々も、ごく普通の人間だった。いえ、むしろ自分と違う特徴をも、受け入れてより優しく、強く、素敵な人たち)
当たり前なのに見ないようにしていた真実に、リディアーヌは今までの努力が信条が全て足元から崩れ落ちそうな気がした。その時、リディアーヌの頭を大きな手がクシャクシャッと撫でた。
「なんだ、元聖女候補もそんな顔すんだな。でもな今は、お前さんも俺の守りたい仲間に入ってるんだよ。ということはさ。もう少しは仲間が増やせると思えないか?」
「…ふふ。ギュンターさま。それってとても、素敵なことですね」
「ああ、そうだろ?お前さんならそういうかと思った。ん?なんか部屋の温度下がってないか?」
実際、気づけば息が白い。唯一その原因に思い当たったリディアーヌは、横目でエリーゼの方を盗み見た。
「さて、貴方様の言っておられることは素晴らしいですが、お嬢様に無闇に触れるとそろそろ凍りますよ。物理的に」
「おぅ、なかなかの凍らせっぷりだな。ふむ、こんなもんか?」
ギュンターが一振り刀を振ると、今度は部屋の中は春が来たかのように暖かくなった。
「まぁ、あんたの魔法、炎とは相性悪いからな。生き延びたければ、他の攻撃手段が必要そうだな」
一瞬目を細めたエリーゼだが、感じるところがあったのだろう。その雰囲気を和らげた。
「ふぅ。腹は立ちますが、これは貴方様にではなく自分の弱さに苛立っているようですね。ご指摘感謝いたします。次回、良い攻撃方法を見つけたら貴方様で試させていただいても?」
「ああ、手合わせなら大歓迎だ」
エリーゼは満面の笑み、ギュンターは朗らかに笑っている。
(楽しそうに笑いあっている構図なのに、言ってることが微妙に殺伐としている気がするわ)
リディアーヌは、アルフリートを見つめた。相変わらずこちらを優しそうな瞳で見つめている。
(そうね。守りたい人たちの範囲を広げたっていいのよね)
今までは、どんなに苦しくても繰り返せるという慢心があったのかもしれない。…大切な人たちを、大好きな人を守ることに全力を尽くそう。
リディアーヌは、周りの仲間を、愛しい人を視界に入れてそう誓った。
最後までご覧いただきありがとうございました。




