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繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第1章 聖女は聖騎士を救いたい
16/63

商人は最重要機密と勇気と恋で揺れる

ブックマークしてくださった皆さま。ありがとうございます。


今回は残酷な表現あります。苦手な方はご注意ください。とはいえ、個人的には第一章で一番気に入っている話だったりします。

 

 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 あれから一週間。とくに大きな問題が生じることも、襲撃を受けることもなく順調に進むことができた。


 あと少しで辺境伯領に着く。少し心の弛みがあったのかもしれない。


「申し訳ありません。お嬢様。囲まれています」

「エリーゼに気付かれずに、ここまで接近するなんて相当の手練れね」

「えーっ、囲まれてるんですか?僕に戦力は期待しないで下さいよぉ」


「ちっ、せめてお嬢様のお近くで壁になりなさい」


 リディアーヌは、身体強化を掛けながら、周囲を探った。バルトルトを守りながらでは、やや厳しいか。


 左手のブレスレットが、シャランと音を立てる。


「うぅ。その剣、自分を使えって言ってますよぅ」

「そう……。分かったわ」


「信じるんですか。はぁ。リディアーヌ様はアルフリートと変なとこ似てますね」


 黒装束の男たちが、少しずつ距離を縮めてくる。


(あの緋色の髪をしたキースはいないようね。なんとかなる……か?)


 周囲の温度は下がり、次々と造られる氷が敵対者の足場を悪くしていく。


「全員、私のお嬢様に跪きなさい!」


 氷の刃を手に、エリーゼがまるで体重がないかのように舞う。1人、また2人と敵対者が倒れていく。


「私はあきらめない!」


 リディアーヌも、身体強化を使いながら敵対者を倒していく。


 闇の魔力は使い慣れないが、黒い刀身の剣は、まるでリディアーヌを守るかのように敵対者を切り捨てていく。


(あと2人)


 そう思ったその時、ソレは現れた。


「魔獣……?」


(今の時期に、こんな場所まで?)


「エリーゼ……!」


 ソレは炎を纏った狼。通常の魔獣であればエリーゼの敵ではない。


(マズイ、あの魔獣、炎の魔力を持っている!)


 氷の魔力を駆使して戦うエリーゼに、炎は相性が悪い。防戦一方になるエリーゼを助けに行きたくても、敵対者がそれを阻む。


「あっ……」


 エリーゼに気を取られたリディアーヌは、その隙を付け入られ姿勢を崩してしまう。


「お嬢様!」

「だめ!エリーゼ!」


 自分を顧みず走り出すエリーゼが、リディアーヌを守るため、魔獣に背を向け敵対者に氷の刃で斬りかかるその瞬間、乾いた破裂音と小さな爆発音がした。


 ドサリ……魔獣とリディアーヌと相対していた敵対者がほぼ同時に地面に沈む。


(何が起こったの?)


 呆然とするリディアーヌ。そして返す刃で最後の1人をエリーゼが倒した。


 振り返るとそこには何かを構えたバルトルトが立っている。その顔は蒼白だ。


 バルトルトの袖は何故か酷く焼け焦げ、その腕は赤く染まり、血が滴り落ちている。


 静まりかえった空間は、しかし突然の叫び声で切り裂かれる。


「ぎゃあぁぁあー。痛いぃぃい!うわぁっ僕の手ぇっ。ヒイイ。怖くて見れない!」


 慌ててリディアーヌが治癒の魔法を使う。優しい光とともに傷ついていたバルトルトの腕が元通りになる。


 気まずい沈黙の中、バルトルトは呆然としながらブツブツと呟いている。


「あぁー、何やってるんだ僕は……。レーヴェレンツ家の最高機密を使っちゃったよぉ。バレたら兄貴と姉さんに殺されるぅ」


「……バル!」

「あ、ハイ!」


「私は恩義は返す主義です」

「いや、結局暴発してリディアーヌ様に治癒していただいちゃいましたし。守ってもらうばかりでしたし」


 気不味げに目を逸らしていたエリーゼが、向き合ってバルトルトの目を見つめた。


「黙りなさい。……あの武器はあなた達の重要な秘密。そしてあなたはおそらく、あの武器の声も聞こえるのでしょう。なら、爆発するのがわからない筈ない」

「うぇっ?…………ハイ」


「バル」


 そこには氷を溶かす春風のような笑顔。


「よくできました」


「ーーーーーーーっ」


 リディアーヌは人が恋に落ちる瞬間を目撃した。


最後までご覧いただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] エリーゼの愛称呼びいいですね〜 氷の侍女の笑顔にバルが落ちた♪ワンコくんがんばれ!
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