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繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第1章 聖女は聖騎士を救いたい
10/63

闇の聖女は商人の三男と出会う

ご覧いただきありがとうございます。


ブックマークや評価を下さった皆さま。本当にありがとうございます。

 

 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 馬車はがたごとと揺れながら、舗装されていない道を進んでいく。

(そういえば、この馬車の御者は誰なのかしら)


 リディアーヌがそう思っていると、それを察したのかエリーゼが御者をしている青年に声をかけた。


「あまり揺れるからお嬢様が不快に思われていますよ。本当に使えない御者ですね」


「……あのアルフリートがいまだかつて見たことがないくらい余裕がない様子で頼んでくるから、断り切れず命がけで手伝っているのにひどい扱い!なんで僕はいつも貧乏くじを引くんですかね」

「レ-ヴェレンツさま?」


 御者をしているのは、薄茶の髪と瞳をした少し頼りない雰囲気のレ-ヴェレンツ男爵家の三男。バルトルト・レ-ヴェレンツだった。


 レーヴェレンツ家は地位こそ伯爵家に及ばないものの、一族が商才を持ち、商いを通じてその情報網は広大だと聞いたことがある。


 リディアーヌも、珍しい光魔法に関連した書物を手に入れようとしたときにお世話になっていたため、バルトルトと面識があった。


「お久しぶりです。リディアーヌ様。レ-ヴェレンツ男爵家の三男、バルトルトです。シュノッル辺境伯のご長男であるアルフリート様の命にてはせ参じました。あ、戦闘能力は人並みかそれ以下なので期待しないでくださいね」


「あの男の仲間です。レ-ヴェレンツなどたいそうな名でよぶ必要はないかと。犬のようにバルと呼び捨てれば十分です」


 そうエリーゼが言うと、レ-ヴェレンツが真っ青になって否定する。


「許してください。リディアーヌ様にそのような呼び方をされたらアルフリートに海に沈められてしまいます」


「それも楽しそうですね。でも、たしかに私のお嬢様がお前を愛称で呼ぶなど腹立たしくてその前に私が闇夜で始末してしまいそうです」

「うわぁぁぁ、理不尽!こんなところにまで災難が!」


(なんだかアルフリートさまが悪者のように語られているけど、そんなことしないと思うわ?)


「私を逃がすためにご助力いただき、心から感謝しています。バルトルトさまとお呼びしても?」

「優しすぎる……女神か?どうぞお好きなようにお呼びください」


(バルトルトさまのやさしさの基準がよくわからない……)


「ところでこの馬車はどこに向かっているのですか?」

「……私の故郷です。お嬢様。きっと、そこに行けば契約によりお嬢様の力になってくれるものがいるはずですから」


 リディアーヌは、エリーゼの故郷がどこなのか知らないが、王都からは遥か遠い場所だと聞いたことがあった。


「私の故郷は、シュノッル辺境伯家の領地の北端。魔王領に接した場所にある、小さな村です」


 遠い目をしてエリーゼが語る。今まで、エリーゼは自分の出自を頑なに語ろうとはしなかった。しかし、今は隠したがっていたそれすらリディアーヌのために利用しようとしている。


(そこに行けば、アルフリートさまを助ける力を得ることができるのかしら)


 リディアーヌたちは今まで聖女として魔王領まで旅をしたのと同じ道を進んでいるようだ。このまま馬車で行けば辺境伯領の北端までは3週間くらいの行程になるだろう。


(大丈夫、旅なら慣れているもの。できれば次の街で馬を手に入れたいわ。そうすればもっと早く着くことができるはず)


 リディアーヌの命を狙ってきたものが誰の指示だったのかはわからなかったとエリーゼは言っていた。安全な旅にはならないのかもしれない。


 そして、そう遠くない未来に魔王領から魔獣があふれ出すことをリディアーヌは知っている。そうすれば一番に被害を受けるのは、シュノッル辺境伯領だ。


 魔獣があふれ出したのは魔王による侵略だと、3回目以降の人生ではいつも聖女リディアーヌと聖騎士アルフリートを筆頭に討伐隊が組まれた。


 でも前回魔王と対峙したリディアーヌは、もしかしたら魔王が魔獣をあふれさせた元凶ではなかったのではないかとも思っている。


(アルフリートさまは今頃、聖女であるイリーネに騎士の誓いを立てているのかもしれないわね)


「どうか、ご無事で……」 


 アルフリートを遠くから守ると決意したリディアーヌだが、妹に笑いかけるアルフリートの姿を想像すると、今まで以上に胸が強く締め付けられるような気がするのだった。


最後までご覧いただきありがとうございます。

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