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繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第1章 聖女は聖騎士を救いたい
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聖女と聖騎士の変わる世界

初めて書く作品ですので、いろいろと至らない点はあると思いますが、よろしくおねがいします。ハッピーエンドを目指す予定です。感想やブクマ、★評価下さった皆さま。本当にありがとうございます。

 

(どう、なっているの?)


 白を基調にした聖女の衣装は真っ赤に染まり、リディアーヌの胸は深々と黒い剣に貫かれている。流れる赤に反比例するみたいに、失われていた記憶が次々と蘇る。忘れていたのが信じられない。あの笑顔も、あの言葉も。本当に大切なものだったのに。


 リディアーヌは薄れていく意識の中、ただそのことを不思議に思った。



(でも、今まで繰り返してきた6回の人生と何もかも違う)


 白い軍服の男性が、リディアーヌを、強く抱きしめている。そんな2人を永遠に繋ぎ止めるように、男性の背中からリディアーヌの背中までを剣が縫いとめる。


「リディ……」


 男性が何か言おうとしていた。だけど聞き取ることができない。そのかわりにますます強い力で抱きしめられて。


 本来なら自身を死に至らしめるそれは苦痛でしかないはずなのに、思い出す記憶の中でいつでもだれよりも愛しく感じていた人に抱きしめられていることがとても幸せで。


 理に抗いながらたったひとりで6回の壮絶な死を繰り返してきたリディアーヌは、それが救いなのだと勘違いしてしまいそうになった。


 男性の背中から貫く黒の刀身に赤い薔薇の蔓が巻き付いた繊細な意匠の剣は、禍々しいのに不思議と神々しくもある。


「よく、ここまで理を捻じ曲げ続けたものだ。これだけ捻じ曲げれは、その代償からは何度も強い苦痛を受けただろうに。そのような呪いに蝕まれているにも関わらずここまでたどり着いた褒美に、ひとつ俺から祝福を」


 この世のものとは思えないほど妖艶な笑みを浮かべて、闇夜の髪と瞳をした少年が2人に話しかける。歳のころは15、6くらいに見えるが、王国の民には魔王と呼ばれ恐れられている。


「そのかわり必ずここに戻ってこい」


 その声には、なにか大きな悲しみが含まれているようにも思えた。それでも、すでにリディアーヌは何も考えることができず、全ての声も、音も、遠くから聞こえる。


(どうしてこんなに大事な人との思い出を手放してしまっていたのかしら)


 抱きしめる愛しいヒトの背中を最後の力で抱きしめた。 


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「アルフリートさま……」


 夢から覚めたように、急速に幸せな気持ちが冷めていく。いま一度抱きしめたいと、伸ばした両腕が空を切った。


「いや、幸せとか思ってちゃダメでしょ私!助けられなかったから!」


 思わず大声を上げてしまったリディアーヌにアイスブルーの瞳を氷点下にしてメイドのエリーゼが声をかける。


「おかしいのはいつもそうですがお嬢様。流石にそのような意味不明な大声を出されると、品性を疑われますよ。まあ、今更ですかお嬢様」

「言い方!」

「失礼しました。品性のかけらもなかったの間違いですね、お嬢様」


 リディアーヌがジト目で見ると、口の端を持ち上げてエリーゼが苦笑しつつもリディアーヌが好きな紅茶をいれてくれる。


 アイスブルーの瞳、美貌と水色の髪に相まって、その言動から冷たい印象を受けるエリーゼだが、リディアーヌはエリーゼが自分を誰よりも心配してくれることを知っている。


 真正面の見慣れた大きな鏡に映るのは、整った顔立ちに艶やかな黒髪を腰まで伸ばした黒い瞳の少女。


 最初の人生で女神からの神託を受け聖女になってから、死ぬたびにこの瞬間に巻き戻る。そしていつもそこにいてくれる、メイドのエリーゼ。


「……エリーゼ、いつもありがとう」

「……メイドに軽々しく礼を言っては令嬢としての品位が疑われますよ、お嬢様」


 そう言いながらも、ちょっとだけ口角が緩んでいるから、照れ隠しなのは見る人が見ればすぐわかってしまう。


(そこに気づいてしまうと、エリーゼのこと、もう可愛くしか見えなくなるわ)


 巻き戻りの度に、なんとか気持ちを立て直すことができるのは、ここにいつも変わらずにエリーゼがいてくれるから。


「ふふっ。それでもエリーゼにありがとうと言いたいの」


 私がここに戻ってきた時に大泣きしても、叫んでも、気持ちが折れそうになっていても彼女だけは変わらない。


 エリーゼに入れてもらった苺の香りがする紅茶は、今回もとてもおいしくて心まで温かくなるようだった。


(いつもと同じなら、明日は聖女選定のはず)


 代々多くの聖女を輩出しているミカミ家の長女として、リディアーヌも選定の儀に参加する。そして聖女に選ばれる。それがこれまでの運命だった。



(でも、6回目の死に方はいつもと違った。理を捻じ曲げた代償で私はあんな風に死ねるはずはないのに)


「明日は、何かが変わるのかしら」

「私のお嬢様が、聖女に選ばれるに間違いありません」


 満面の笑顔でそう当たり前のように言うエリーゼにリディアーヌは今度こそ笑った。


(どうしても、諦められない。あのヒトの笑顔を思い出してしまった今は、これまで以上に。今度こそ、助けるんだ、あのヒトを。たとえ何が変わったとしても)


 忘れていた記憶が、また少しだけ蘇る。騎士として誓ってくれたあの場面も。


 リディアーヌは、そう決意して眠りについた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。ブクマや【☆☆☆☆☆】からの評価、感想などいただけると、とても嬉しいです。

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