ヒーローの南 14
「お、出てきた。あの子でしょ?」
恵ちゃんの声につられてステージを見ると、上手側のテントから薫が姿を現し、長机に着席してスタッフの男性と話を始めた。
黄色のシャツとオレンジのスカート。シンプルだが非常に目立つ衣装だ。そして前髪には星の装飾が施されたヘアピンが二つ。この位置から見える大きさは、もはやヘアピンというよりも髪飾りだ。
そして表情は笑顔。実際はガチガチに緊張しているのかもしれないが、笑顔を作るのは新体操でも鍛えた技術だ。上辺を取りつくろうのはお手の物だろう。
ふいに、後ろから軽く引っ張られた。摩耶ちゃんが私の服を掴んでいて、空いているもう片方の手で一組の父子を私が立っていた場所へ誘導する。父親は軽く会釈して、男の子の手を引いて前に進んだ。
「こういうのは、私達は下がって見よう。ね?」
「そうだね」
それに、薫に私達の姿が見えてしまうとかえってプレッシャーをかけてしまうかもしれない。いずれにしろ後ろにいる方が賢明だ。
――そして薫が上手の小さな階段を上がり、ゲート状の書き割りの裏から姿を見せた。
「今日は光彩戦士ライトセブンズ・ファミリーステージに来てくれてありがとう! 始まる前に、来てくれたみんなにお願いがあります。まず一つ目は――」
スピーカーを通して薫の声が会場中に響く。
(始まったか)
後は薫しだいだ。うまくいく――もはや私はそう信じるしかない。
「頑張れ……」




