ヒーローの南 1
小学校に上がる前の私は世の女の子の例に漏れず、女児向けのファンシーなアニメ番組の数々に夢中になっていた。この時にのめり込みすぎてキャラクターの絵を大量に描いていたことが、今でも同人でマンガを描いている私の土壌を作ったのは疑う余地がない。
一方で妹の薫はというと、私が好んで見ていたようなアニメには目もくれず、その前後に放送されていた男の子向けの特撮番組ばかりを見ていた。録画したものもさんざん見ていたので、私のアニメの入れ込み具合よりも熱心になっていたのかもしれない。
こういう番組は男子も女子も大体は小学一年生ごろには興味が薄れてくるものだ。私はそのパターン通りに、その時点で一旦アニメを卒業した。
ところが、薫の場合は熱を失うどころか二年生、三年生と学年が上がってもずっと特撮を見続けていた。そしてついには中三の私が将来のことでああでもない、こうでもないと悩んでいるころ、
「私、ヒーローになる!」
と、受験する高校すら決めていない私より先に将来の夢を宣言したのだった。
「姉がお世話になってます!」
昼過ぎのスノーマリン薬局に姿を見せた信じられない人物――いや、今日私のところに来ることはわかっていたのだが、沖縄で初めて顔を合わせるのが、よりによって私の職場になるなんて全く予想していなかった。
このでかい声で――決して『大きな声で』などと品のいい表現はしたくない――挨拶をしたのは私の妹、南薫だ。
「すごい声が通ってる子ね!」
「いいねぇ。背筋も真っすぐ伸びてて」
受付にいた川満さんとその後ろの社長が口々に誉めちぎる。
ぽかんと口を半開きにしていた私は我に返って薫に、
「何であんたが薬局に来てるのよ!」
職場に身内が来るなんて恥ずかしいことこの上ない。
「ふふふ、それはね……処方箋持ってきましたー!」
勿体ぶった薫はスーツケースの他に持っていたサイドバッグに手を入れ、お薬手帳と一緒に折りたたんだ処方箋を取り出した。




