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高江洲さんの家はアパートの一階部分にあった。どの部屋もドアの間隔が広々として、もう一回り建物が大きければマンションというくらいの規模だ。おそらくはファミリー層をメインターゲットとしている物件なのだろう。
當真さんはチャイムを鳴らして名乗ると、
「入ってー」
間延びした女の子の声がインターホンから返ってきた。
そのまま私達はリビングまで入る。
「こんにちはー、薬局でーす」
「朋夜ちゃーん! 元気だった?」
数学の教材を机に広げた女の子――高江洲美海さんが、當真さんの姿を見て表情がぱっと明るくなる。
(……と、朋夜ちゃん?)
想定をはるかに超えたフレンドリーなやり取りに、私はいきなり面食らった。
美海さん、いや、美海ちゃんの外見で目に付くのは、やはり在宅酸素療法の要で、酸素を吸入するための管――鼻カニューラを付けていること。だがさっきの様子を見る限りは、不登校ながらも、自宅での生活は健康的に行えているようだ。
「お母さんはお仕事?」
「うん、そろそろ帰ってくると思う。で、そっちの人、誰?」
私は當真さんの後ろから前に進み、
「初めまして。新しく入った薬剤師の南依吹って言います」
形式ばった挨拶にならないよう、やや言葉を崩すことを意識した。だが突然、
「東京?」
美海ちゃんがあからさまに不機嫌になる。
(――え、よくわからないけど、いきなり地雷踏んだ?)
耳のあたりに冷や汗が一筋流れて白衣に落ちた。
「ねー朋夜ちゃん、わざわざウチに東京の人連れてきてさ、朋夜ちゃんも私に東京に行けって言いに来たの?」
當真さんのほうを覗うと、戸惑っているのか、無表情の中にもやや怪訝な様子が感じられた。
「ごめん、もうすこし詳しく聞かせてくれるかな?」
當真さんはきわめて冷静に訊き返した。




