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今の私の知識でわかることは――神経芽細胞腫は白血病などと並んで、主要な小児がんの一つ。生後数年までの時期にがんの病巣が確認されることが多く、発見が遅れるほど予後は不良。その場合、治療を終えてもその後の生存率は高いとは言い難い――といったことだ。
情報提供書とともに綴じてあった診療サマリーには、
『二才一ヵ月のときに神経芽細胞腫との診断。転移なし。外科療法*1と化学療法*2で治療。現在に至るまで再発は認められていないが、治療当時に使用したカルボプラチン、シクロホスファミド等の抗がん剤の後障害の可能性が疑われる慢性呼吸不全、関節痛のため在宅酸素療法の適応となる。頻回の通院は本人の負担が大きいとのDr*3の判断により原則自宅往診し、通院回数をなるべく少なくする方針』
という文面が記載されていた。
(この子はつらい治療を耐え抜いて生きることができた――私は彼女にどんなことをしてあげられるのだろう? 何も想像できない……)
あまりにも大きな不安を抱えたままの私を乗せた車は、住宅街の狭い坂道をゆっくりと上っていった。