1
七月最初の日曜日の夜八時――時間だ。自分のデスクトップパソコンからスカイプを立ち上げた。
画面に映ったのは私の他に二人。
「ハロー、オキナワンピーポー! ちゃんとご飯食べてる?」
のっけからテンションが高いのこの子は高校時代の同級生の山野井美冬。専門学校を卒業し、企業の刊行物をデザインする仕事をしている。
「食べてるよ」
「オーケーオーケー、浪人でござるも元気?」
「うっさいわ社会人。ああ、眠い……いつも通り進行よろしく」
「そろそろ依吹に役目を譲りたいんだけどね……まあ今回はいいや」
美冬に浪人と呼ばれたもう一人の子は風間桃。こちらは大学での同級生で、卒業はしたものの昨年度の国家試験で残念ながら不合格となったため、予備校に通いながら国試浪人中だ。勉強疲れか、カメラの向こうの桃はやや傾いた姿勢のまま会話をしている。
「さてさて、それじゃあ始めようか。『スピカ・デ・トリリオン』夏コミへの道、最終ミーティング!」
私を軸に集結したこの三人の趣味はマンガ描き。私達のサークル『spica de trillion』が作る同人誌の制作が大詰めに来ているのだ。