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調剤室で与儀さん親子からは見えない位置に移動した私と恵ちゃんは顔を見合わせ、
「ヤバいヤバいヤバい! あんな風に薬飲んでるなんて完っ全に想定外! どうする恵ちゃん? どうすれば……?」
「どうにかするのはうちの薬局の仕事なんだから、もっと落ち着いたら? こっちは表面上を取り繕うのが精いっぱいなんだからさ」
「恵ちゃん、動揺してるようには見えないんだけど……」
「あくまで仕事だから冷静に見えるようにしてるだけ。今すごく、胃が痛い」
私達の態度で無暗に患者を不安がらせてはいけない。また一つ反省だ。恵ちゃんを見習わないと。
「あのさ依吹、うちの調剤室まで入ってきちゃってるけど、もう帰っていいんじゃない?」
「――残念だが、まだ帰ってもらうわけにはいかない。南さんにも頭は貸してもらう」
赤嶺さんの突然の声に、私達はそろってびくりと体を震わせた。
「与儀さんのお母様に、新人教育の一環として南さんにも仕事ができるように許可をいただきました。スノーマリンのほうにも電話済みです。最悪、助け舟は出すから二人でこの場を切り抜けてみなさい」
銘里市は市全体で薬剤師を育てる――さっきの赤嶺さんの言葉を思い出す。
「依吹、私はパソコン使って何か一緒に飲ませられる物を探してみるけど……」
「じゃあ私も一緒に――」
そこまで言いかけて私はふと、一つのことに思い当たった。
お母さんが買っていた飲料の『味』だ。
「バナナたっぷりのフルーツオレ……もしかすると……」




