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その鑑定士、聖剣を握る。  作者: ラハズ みゝ
第1章 Encounter and reunion
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6.ゴブリン討伐へ

 《―以上になります》


 これが···聖剣ラプラスの言い伝え···。最後に聖剣が出てきた時の状況が、あの時とそっくりだ。理屈までは解らない。しかし話の終わりに"受け継がれて"とあった。もし僕の前に姿を見せたそれが、聖剣ラプラスだとすれば····


 「僕、選ばれちゃってます?」


 「どうしたの?(はる)


 咄嗟に「何でもないよ」と手を振り、僕は顎に手を当て視線を落とした。···まさかね。ゲームにそういう仕様があるのは大いに結構なことだけど、今回、要するに主人公は二十人ということになる。もしかしてみんな僕と同じように聖剣で悩んでるとか···?いやでも聖剣二十本出すのはクオリティが下がる。それにみんな心当たりはなさそうだ。それで聖剣が僕のものだと···?だとすれば運営の人選は素晴らしく駄目だね。


 ―とまぁ、ことをすぐに信じることなどできず、聖剣については忘れることにした。そして僕らが向かったのは········ギルドだった。すなわちUターン。僕が脳内に引きこもっていろいろやってる間、脳外でもいろいろ話が進んで、「やっぱりクエストだろ!」ということに。報酬とかもあるし、男はやっぱりスリルな戦いがしたい!···らしい。分からないでもないけど···それは数年前の話かな。今はもう冷めた感情。




 「まずは金銭を集める必要がある。そうすれば武器や食料がよく手に入る」


 学級委員の意見にみんな異論なし。そうして選んだクエストが···


 「ゴブリン10体討伐」


 ゴブリンとは、邪悪でこん棒を持った敵。···これは鬼か?まぁ、ゲームの王道ゴブリン様を十体倒すのが今回のクエスト。レベルは10と少し高い。僕らのレベルが···


 [型蔵昌児:剣士Lv.4//]

 [高瀬夏希:回復士Lv.3//]

 ·

 ·

 ·

 [塑通無春:鑑定士Lv.6//]


 大体4~5くらいだから、スリルは十分。あれ、僕ってこんなにレベル高かったっけ。まぁいいや。戦闘においては関係ないし(涙)。僕らは前回同様、馬車を使ってクエスト対応区画に向かった。





 「それではお気をつけて」


 そこは城跡だった。僕らは御者さんにお礼をし、先へ進んだ。


 「不気味だね···まだお昼前なのに」


 夏希の息が右肩にかかった。夏希は、背を丸めて僕のすぐ後ろを歩いていた。


 「うん」


 コケのついた随分と古い城跡。地も不安定で少し油断すると転びそうだ。とても明るいのだが、それを打ち消すくらいの不気味さを持つ城跡。ここにゴブリンが···。


 グルルルルル···············。


 何かの音が響いた。低く、濁った音。その一声に、僕らは足を止めた。数十メートル程先に、僅かに残っていた城の中が見えていた。恐らく、その中からの音だ。


 「よし···。それじゃあ、剣士(フェンサー)を先頭に―」


 「ちょっと!!男子先に行ってよ!!」


 学級委員に飛び交う女子の文句。「そーだそーだ」と責められる男子。聞いたことがある。女子は直感的に物を言うから、口喧嘩では女子の方が強いのだと。


 「おい女子!お前ら何てめぇの事情押し付けてんだ!!状況考えて言え!」


 ここで型蔵君がキレた。これ以上いくと危ない。


 「型蔵君、ここは女子の言う通りに―」


 「んなことしたらいつか死ぬぞ!!」


 もっと怒らせてしまった!!!相変わらず型蔵君のキレた表情と威圧感はすごい。そしてクラスは騒ぎだした。あーだこーだといろいろな声が聞こえる。


 「なんだか···教室に居るみたいだね」


 夏希は、僕の横で言った。教室···か···。この賑やかさ、この景色。


 「···そうだね。うん。間違いないよ」


 既にと言うべきか、まだと言うべきか。僕らがこの世界に来て二日だ。今思ってみれば、結構みんな平気なんだなって感じる。意味不明なところに来て、帰れなくて。意外とゲーム感覚にやってる。そして、クラスの雰囲気も変わらない。とっても、居心地が良い。いじめられた身ではあるけど、嬉しい。そして、それから言い合いは十分程続いた。





 「それじゃあ男子、よろしくね」


 ―男、敗北。仕方なく、男子内でジョブを参考に順番を決めた。先頭は剣士(フェンサー)忍者(ニンジャ)。次が僕。そして弓士(アーチャー)魔法士(キャスター)召喚士(サモナー)回復士(ヒーラー)は居ない。列を作り、僕らはいよいよ城の中へと入った。


 《レッツゴー!!!》


 ガイドさん!?


 「ノリノリだねーガイドさん!」


 そこはキャラが変わってしまっていることを気にしましょうよ···。ガイドさんの声は、もうカタコトな機械などではなく、抑揚までよく再現された高い女子の声だった。


 「―!?」


 突然、僕の視界が文字で埋まった。これは···ステータス!?


 [ゴブリン:こん棒Lv.10 atk.6 dfs.4 spd.2 mp.0]

 [ゴブリン:こん棒Lv.10 atk.6 dfs.4 spd.2 mp.0]

 ·

 ·

 ·


 視界は、ゴブリンのステータスで埋まっていた。


 ―待ってくれ···。ゴブリン十体がクリア条件だ。この数は···百は優に越えている。ひとまず鑑定をやめよう。―視界の文字がドっと減り、すっきりした。―バグ···ではなさそうだ。····いや、これは······。僕はマップに注目した。この城跡の全域が表示されている。マップの範囲が広がっているのだ。そして、点々とある赤。恐らく鬼だ。そう、これは城跡全域に居るゴブリンのステータスが表示されていたのだ。レベルアップの影響か···?僕は自分のステータスを確認した。


 [塑通無春:鑑定士Lv.7 atk.0 dfs.0 spd.0 mp.0 スキル:高度鑑定、全知全能、範囲強化、経験増幅]


 なんか増えてる······。マップや敵の表示はこの"範囲強化"のおかげだろう。経験増幅···。僕はそれでレベルアップしやすいってことかな···。あ、またレベル上がってる。もしかして鑑定することが経験値を得る手段だったりするのかな···。そして相変わらずのゼロ四つ。―何にせよ、範囲強化があれば支援もかなり良いものになる。


 僕らは、薄暗い中を進んでいった。ほんの隙間から光が線を帯びている。ポタポタと、不気味に水滴が落ちる音が一定リズムで響いている。―マップを確認すると、赤い点が近づいていた。···ゴブリンだ。


 「前からゴブリン二体、近づいてるよ」


 僕の合図で警戒するクラスメイト。ゴブリンのレベルは僕らより少し高い。油断大敵。剣士(フェンサー)を先頭に、各々武器を構えた。···僕は持ってないけど。


 「―グガガガガガァァァッ·········」


 ついにゴブリンが姿を現した。やや前屈みでこん棒を右手に握っている。僕らを視界に捉えてまもなく、ゴブリンはこちらに突進してきた。


 「行くぞっ」


 型蔵君の一言に、一斉に剣を上げる剣士(フェンサー)たち。ゴブリンは、真っ直ぐ飛び込み、中央の三人にこん棒を横振りした。これを読んでいたかの様に剣で防ぐ三人。三人は足でこらえながらもズズズと後方に押された。大きな一振りの衝動で動けないゴブリンに対し、両側面から剣を向かわせる剣士(フェンサー)たち。ゴブリンに深い傷が入った。しかし、まだゲージはオレンジ色だった。


 「まだ生きてる!」


 僕の通達に反応し、弓士(アーチャー)魔法士(キャスター)の攻撃。高火力なそれに耐えられず、一体撃沈。奥からもう一体来ていた。しかし、一体と交戦している間に、召喚士(サモナー)は精霊を用意していた。様々な属性の攻撃で、ゴブリンは倒れた。残り八体だ。僕らは道を進んだ。




 「ん~、何て言うかなぁ···」


 「最上ぃ、どした?」


 僕のちょっと後ろで、会話が聞こえた。みんな話はしているが、たまたまその中の一つがよく聞こえた。クラス一チャラい男子といわれる最上(もがみ)勇樹(ゆうき)と、悪戯好き女子の宮田(みやた)早苗(さなえ)の会話。特に意味はない。いつもそうだったんだ。僕は机とにらみ合い、周りは賑やかな教室。複数聞こえる会話の中から無意味に一つの会話を聞く。


 「俺が思ってたのとなんか違ぇんだよなぁ。美女に囲まれたパーティーで危機的な状況を俺が打開!!ってのがなぁ···」


 「この堅苦しい作戦が嫌ってこと?」


 弓を指でくるくると回し、呟く最上君。それに対し、宮田さんは頭に乗せた猫のような精霊の背を撫でながら言った。


 「作戦ってのも良いんだけど···スリルを楽しむためのこのクエストだろ?···だから提案する!!」


 急に最上君の声のボリュームが大きくなった。


 「いくつかのチームで分かれて行動するってのはどうよ!?」


 みんなの雑談はやみ、最上君に視線が集中した。輝く男子の瞳!めんどくさそうな暗い瞳を向ける女子。しかし少なからず、女子の中にも面白さを求める人は居た。···という訳で可決。


 その後、男子のみでチームをつくると自然と女子のみのチームもでてきて危険だという最上君の意見が採用され、全て男女混合の四人一チームをつくることとなった。


 決め方はシンプル、じゃんけんだった。暗がりで見にくいが、僅かな光を頼りになんとか決めた。




 「―なるほどなるほどそう来たか···」


 顎に手を当て、呟く宮田さん。宮田さんのチームは、最上君と夏希。それから···


 「そんじゃ、ヨロシクね。春君」


 宮田さんは僕の肩をポンと叩いた。···このチーム、近距離に対応した人が居ないけど大丈夫かな···。それ以上に夏希と同じチームなのは幸運もいいところだと強く感謝した。他のチームには見事に近距離と遠距離が分かれている。型蔵君のチームが三人だけど···大丈夫そうだ。四人でゴブリンを···か。僕の伝達をしっかりしないと、距離を詰められたら終わりだ。


 「うん、よろしく。頑張るよ」


 こうして、四人五チームに分かれて僕らは城跡を進み始めた。

ゴブリンって、カタカナ表記でしたけど、小鬼とも書けるんですかね‥‥?――――しかしもう遅い!このままカタカナでお願いします。

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