表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その鑑定士、聖剣を握る。  作者: ラハズ みゝ
第5章 Negotiations with half elves
47/54

31.ハーフエルフの国へ

 デルハツ、冒険者ギルド。その一室に、数名の冒険者が集った。中級冒険者パーティーのコモンオウル、同じくトゥリプルス。上級冒険者パーティーのコシャクハンズ。ギルドマスター。そして、アキと僕。長机の奥に、国王が腰かけている。


「揃ったようだね」


 国王は相変わらずの笑顔で言う。


 ここに集められた冒険者たちは、ハーフエルフらを味方につけるための役目を担うことになる。中級冒険者パーティーが二組、上級冒険者パーティーが一組。デルハツが奇襲された時に比べれば、出動要員が少ない。


「それじゃあ、俺が説明しまーす」


 クレバさんが席から立ち、説明を始める。周囲はそれを各々の席で聞く。


「今回の鬼の活発化について。リィーオル王国は鬼の活動が活発化する時期の情報を持っていますが、もはや参考にならなくなりましたー」


 唐突な報告に、部屋中がざわつく。それはつまり、鬼がいつ攻めてきてもおかしくないということなので、当然の反応であった。それは僕も例外ではない。一体何故、このような事態に陥ったのか。


 クレバさんは辺りを見渡し、苦笑する。


「まあ、当然の反応だな‥‥。しかし、時間が惜しいので先に作戦を伝えます――」


 それから、クレバさんはデルハツの周辺が描かれた地図をテーブルに展開、作戦が言い渡された。


 要約すると、こう。ハーフエルフの国に出向くのは、一部の精鋭。その交渉の間、デルハツではその他大勢の冒険者により警戒を高める。


 ハーフエルフの国に向かうのは、コモンオウルのリンさんと、アキ、僕のみ。緊急時に備え、予備隊としてトゥリプルス、コモンオウルのラウさん、ルオさん。コシャクハンズのチェリナさんとタジーラさん。


 予備隊は、ハーフエルフの国から少し距離をおき、緊急時に備える。


「ちょっと待った!」


 レドソンさんがクレバさんの説明を止め、言う。


「魔力豊富なら、ハーフエルフは侮れないでしょう。たった三人で行かせて大丈夫なんですか?」


 クレバさんは「良い質問だ」と笑み、答えた。


「まあまず、三人だけにしたのは、争う意志はないってことを伝えるため。そんでたった三人で大丈夫かってことだが‥‥大丈夫だ」


 すかさずレドソンさんは「どうして?」と問う。


「ハーフエルフは魔力が多い。魔力反応にも敏感だ。だが、それを攻撃として使うのは、あまり得意じゃない。元素を固めて放つのが精々だろう」


 だからハーフエルフそのものは警戒に値しない、ということだろうか。もしそうであれば、予備隊という肩書きは必要なのだろうか。


 僕が首を傾げるのを、アキは見ていたようで。


「あまり会話についていけてないようね」


 アキが小声で呟いた。僕は苦笑しながらうなずく。会話についていけてないとは、言ってることが分からないのではなく、その根拠が分からないのだ。


 アキはため息をつき、小声のまま話し始めた。


「今回、最も意識すべきこと。それはハーフエルフが人間を恐れているということよ」


 エルフが襲われ、絶滅した件。当然、人間が悪として語り継がれているだろう。


「ハーフエルフの逆鱗に触れて襲ってくる‥‥とか?」


 僕は言うが、アキは首を振った。


「それならむしろ良い方ね。戦闘になれば人間の方が強い。そこで争う意志がないことを理解してもらえばいいもの」


「なるほど」と僕は呟く。


「私たちが恐れるのは、ハーフエルフがその"生"を諦めること」


 僕は、目を見開く。つまりそれは、ハーフエルフが自ら絶滅を選ぶということ。


「私たちが鬼に対抗できなくなるというのもあるけど。何より、国王やギルドマスターがそれを許さないわね」


 アキが、話し合っている国王らを見る。僕もそちらに視線を移す。トゥリプルスのメンバーたちがチンプンカンプンになっているところを、国王らが説明して理解させようとしている。そして僕は、獣人の件を思い出す。


「確かに、そういう人たちだったね」


 僕は笑み、言った。アキは話を進める。


「あとは、ハーフエルフが鬼サイドについてしまうこと。以前ならあり得ないことだったけど、今日、鬼には理性や知識を持つ種族が存在している」


「半鬼人‥‥」


 僕が呟く。アキはうなずいた。言葉が通じる鬼が存在すれば、ハーフエルフとの交渉は可能。そこにハーフエルフの、人間に対する恐れがあれば、人間と競争している鬼と手を組むことも十分に考えられる。


「だから、ハーフエルフに圧力をかける訳にはいかないの。そして緊急時、予備隊が動けるようにするってこと」


 それでようやく、僕は作戦の意味を理解した。


「――さて、概要は理解できましたね。そんじゃ、早速明日、作戦開始ってことで。解散!」


 気づけば話し合いは終わっていたようで、クレバさんから、唐突に明日からの作戦開始を言い渡された。


 つまり僕は明日、ハーフエルフに会いに行く。



 ‥‥‥‥‥‥展開急過ぎるでしょ!!?



 僕はアキと別れ、ギルドを後にした。広場ではクラスのみんなが特訓を続けていた。


「あっ、(はる)ー!」


 夏希の声でみんなの視線がこちらに向く。


「ただいま」


 僕は言った。型蔵君が「さっさとこっちに来て素振りを再開するぞ」と叫んでいる。やはり、彼だけ気合いが違って。僕は苦笑する。


 さて、明日のことを話さなきゃな。





 ―夜、家で僕はみんなに明日のハーフエルフの件について話した。


「ハーフエルフだとぉぉぅ!!?」


 そう、強く反応したのは、最上君だった。最上君は全身を震わせる。


「おいおいおいおいおいおい、そりゃあビッグチャンスじゃないか!!どんな美少女ちゃんが待っているんだ!!?塑通無、俺も行くぜ!」


「無理」


「即却下かぁぁぁぁ」


 みんなは呆れ顔で居た。


「じゃあつまり、明日からしばらく春君がここに居ないって訳ね」


 宮田さんが確認し、僕はうなずいた。鬼の活動が活発化する中、僕だけがここに居ない。


 もし、鬼がデルハツを襲ったら?僕が居ても居なくても戦力はあまり変わらないが、ここには夏希が居る訳で、心配なのだ。


「心配すんな、塑通無!」


 僕の表情を窺ってか、型蔵君が言った。僕がそちらを見ると、型蔵君は胸を張り、笑っていた。


「俺達ゃ、あのじいさんに特訓を受けてる。最初の俺達とは桁が違うからな!もう足を引っ張ることぁねえ!」


 型蔵君の言葉に、宮田さんも続ける。


「おうとも!春君の大好きな夏希ちゃんは私がしっかり守るよ!」


 僕は赤面するのを感じた。同時に、この雰囲気のあたたかさを。


「いよいよこの世界も穏やかじゃいられなくなった。でも、僕らなら乗り越えられる!」


 僕の言葉に、みんなが「おう!」と返事をする。





 ー翌朝、デルハツの南門。作戦に参加する冒険者たちが集っている。


 国王が言う。


「デルハツの明日のため、そしてハーフエルフと共存するため、諸君にはぜひ頑張ってほしい。作戦の指揮は、リン君、よろしくね」


 リンさんがうなずく。



 僕らは、いよいよ鬼との戦闘に大きな一歩を踏み出す。今日をもって、状況が大きく変わる。




 僕らは知らない。このすぐ先に、悪夢が訪れることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キャラクター情報や、世界設定は、
「その鑑定士、聖剣を握る。」解説
↑こちらから確認できます。
小説家になろう 勝手にランキング
↑投票の方もお願いします!!!↑
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ