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その鑑定士、聖剣を握る。  作者: ラハズ みゝ
第3章 Growth of the class
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23.謎のご老公

 ―買い物をしてから一週間が経った。以前から服装、武装、小物など、様々なことに変化があった。しかし、武装に関しては、僕らはその成果を確認できていない。クエストを一切として受注していないからだ。半年後には、リィーエル王国が攻め入ってくる。その関係で冒険者に対して、クエストの一時廃止がギルドから言い渡されていた。じゃあ僕らは何をしているのか···。


 「いち!!にっ!!いち!!にっ!!」


 ―修行らしい。これはレベルを上げることが目的で、戦うことが要のこの世界では、やはり強さは必須だからだ。フェミアとミクに関しては例外。防具さえあれば、僕らが守るべきだからだ。いい感じの広場が見つかり、武装も整ったところ。·····とはいえ。


 剣を前後に振ってみる剣士フェンサー、とりあえず魔法を使ってみる魔法士キャスター、とにかく動き回ってみる忍者ニンジャ···。


 「ねえ春君?···こんなんでレベル上がるの?」


 鑑定を続けている僕の横で、宮田さんが訊いた。そちらの方を向くと、宮田さんは以前もやっていたように、頭に猫の姿をした精霊を乗せて、撫でていた。僕は、鑑定でみんなのレベルやステータスを確認しつつ、自分でもレベルアップを図っている。


 「今までだと···良くて一つ上がったくらい···」


 僕らは、どうすればレベルが上がるのかをまったく知り得ていなかった。が、そこには例外があった。


 「春君のレベルは?」


 宮田さんが加えて訊く。それに答える。


 「···41」


 僕のレベルは、やたらに上がっているのだ。さらに、僕には喜ばしい事実があった。それはステータスにある。


 [塑通無春:鑑定士Lv.41 atk.15 dfs.12 spd.0 mp.0 //]


 攻撃力と防御力が上がっていた。まあ、理由は分かってるんだけど。先日購入した長剣である。それを装備したおかげで、ステータスに長剣の分が追加された。ただ、使い方を知らない。それに、この剣を購入した時に、鍛冶師さんに教えてもらったことがある―。





 「―しかしあんちゃん、どうやら慣れてない持ち方だが、剣士フェンサーじゃねーのかい?」


 購入した長剣を握った僕に、鍛冶師さんは訊いた。


 「えっと、はい、そうです。剣士フェンサーじゃないと使えないんですか?」


 「ジョブに関わらず、武器の装備は自由だ。けどジョブと違う武器を持つことはおすすめしないね。ステータスはジョブによって変化が異なる。武器と自分とのステータスがたがえりゃ、バランスに欠けるってもんよ」





 ―鑑定士アプレイサーである僕が剣を握れば、不安定なバランスでまともに戦えないだろう。と、最初は納得していたのだが、よくよく考えた。···そもそもステータスオールゼロじゃん!!バランスも何も、もとがないじゃん!!·····と。それでも鍛冶師さんの忠告は尊重したい。だから、これはまだ不足の至る限りなのだ。


 そうして、僕らは行き詰まっていた。


 「あーつまらん」

 「つーかこれ、修行になってなくね?」

 「たーいーくーつー!!」


 それが一週間と続き、クラスメイトらはいい加減、やる気を失っていた。僕も、疲れはしないのだが、精神的になかなか辛かった。


 「は~る~!」


 トコトコと、夏希が寄ってきた。夏希は、疲れたクラスメイトを回復して回っていた。魔力は自然回復なので、ペースはゆっくりめ。夏希は僕に訊いた。


 「疲れてなーい?」


 「うん、大丈夫だよ。少しも動いてないからね···。鑑定に魔力消費もないし···」


 つまり、僕は何もしていないに等しい状況だった。鑑定に魔力は必要ない。しかし、得る情報の多さによって、脳に負担を与えるのだ。それすらも僕は、スキルである過憶耐性で皆無となっていた。


 「夏希ちゃーん。私の魔力回復お願いしていい?この精霊猫ちゃん、姿を維持するのに魔力必要っぽくてさー」


 隣で宮田さんは言った。夏希はすぐにそちらへ駆け寄る。


 「いいよ!!·····魔力回復!」


 夏希が宮田さんに差し出した両手は発光し、鑑定から、宮田さんの魔力が回復しているのが分かる。それからしばらく後、回復は終わった。


 「よし、終わったよ!それじゃあ私は行くね!」


 「あんがと!」


 夏希はスキップで向こうに去っていった。夏希は、他の人らに比べ、少し楽しそうであった。回復すること自体は、そうでもないと思うけど···何かあるのだろうか。···考えても分からないか。夏希はいつもあんな風にしているし。


 僕は身体の向きを百八十度反転させた。




 「·····」




 ―目の前に、顔があった。白髪に白髭、全体的にシワが寄っていて、すごく微笑んでいる。·····おじいさんだ。


 「·····えっと、どなたですか···?」


 とりあえず問う。おじいさんは、すぐに答えた。


 「気にせんでい~よ」


 その声は、優しかった。が、しかし。


 「いや、気にしない···っていうか、気になります。すごく」


 「遠慮せんでい~よ。ほれ、続けなしゃ~い」


 ·····会話が微妙に成り立っていない。しばらくすると、みんなもおじいさんの存在に気づく。



 ·····あれ?



 どうしてこの人は、僕の真後ろに居たんだ?普通、みんなが先に気づくはずなんだ。僕の真後ろに来る前に。


 「ほれほれ、続けんしゃ~い」


 酷く、直感的な恐怖を覚えた。 一体何者?


 「おい塑通無、そのじいさん誰だよ?」


 最上君は僕に訊いた。···いや、僕に訊かれても···。僕は顔の前で左を向いた右手を左右に振り、口パクで「知らない!!」と言う。


 「ええことを思いついた~!!!!!」


 突然、おじいさんは叫んだ。驚きに僕は後退り。修行の邪魔をされたことに苛立ったのか、型蔵君がおじいさんのところまで凄まじい足音を鳴らして近寄る。


 「いきなり出てきたと思えば急に叫びやがって······!!!!!俺たちは修行を―」


 「わしと遊ばんか?」


 型蔵君の言葉を遮り、おじいさんはそんなことを僕らに提案した。そして、おじいさんは続ける。


 「わしもチャンバラごっこは大好きだったからのぅ···」


 「これは遊びじゃないんだぞ!!!!!!!!!!!!!!!!」


 「全員、わしにかかってきんしゃい!」


 「上等だぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





 こうして、型蔵君がみんなの意志も考えずに、おじいさんの提案を受ける運びとなりました。やることはこう。おじいさんは一人でそこに居る。それを僕らが全員で、それも武器やアートを自由に使って倒す。


 型蔵君はやる気十二分なのだが、当然みんなは、やる気はない。か弱いおじいさんを集団で攻撃するなんて、外道極まりないからだ。


 「型蔵···、本気で戦るの?」


 西本さんが訊いた。型蔵君はみんなの先頭で、おじいさんを前に先日購入した大剣を振って見せている。


 「俺が一人であのじいさんをブチのめす。俺たちの修行を遊び扱いしたことを後悔させてやる·····!」


 型蔵君は相当に怒っていた。しかし、あれが修行になってなかったのは事実なんだけどな·····。それでも、努力を馬鹿にされたことに怒れる型蔵君はやはり仲間思いの良いクラスメイトだ。


 おじいさんはそこらに落ちている木の棒を拾った。それを眺め、軽く二、三回程振って、


 「こんなもんかの···」


 と呟いた。それを見た型蔵君。


 「ぜってぇに許さん!!!!!!!!」


 型蔵君はよくキレるのだが、ここまで本気の型蔵君は滅多に見ない。力は凄まじいし、あの大剣も相当に重たいらしい。この中では、恐らくトップの人材だろう。そんな型蔵君は、おじいさんに向かってダッシュ。大剣を右腕一つで右後方に振り上げている。対するおじいさんだが·····


 「なんじゃ、こんなもんか···」


 やけに低い声で何かを呟いたのだった。それに構わず型蔵君は距離を詰め、大剣を右から左へと振るう。風を斬る音が剣の威力を物語る。くらえば、死ぬ。おじいさんの木の棒なんか、容易に破壊されるだろう。しかしそれにも関わらず、おじいさんは動かずに木の棒を前に出したのだ。その、棒の先を左から右へと流す。すると、大剣はそちらへ促された。型蔵君は、必然的に左に重心が寄ってしまう。そこを逃さず、おじいさんは二、三度、棒で型蔵君の肩や腹を打つ。びくともしない型蔵君。


 「おいおい···痛いどころか、かゆくも感じねえなぁっ·····!!」


 その声とともに、型蔵君は大剣を左からおじいさんに向けて放つ。しかし、おじいさんは棒を大剣には向けず、そのまま型蔵君の左肩を突く。型蔵君は、大剣を右に振りきれず、左に半回転しながら倒れてしまった。


 「やはりチャンバラはええの~。ほれほれ、さっさとかかってきんしゃい。わしは"全員で"と言ったんじゃぞ?」


 おじいさんは、まるで応えていない。みんなは動揺していた。型蔵君が倒されたことでもある。しかしそれ以上に―


 ((·····いや、マジでこのじいさん誰!!!?))


 という疑問に起因している。それで、ただ直立不動になっていた。それを見ておじいさんは、何やら考えている。そして何やら思いついたように人差し指を立てた手を顔の横に挙げた。


 「そうか分かったぞい!!!···主ら、緊張しておるのだな!?」


 ((全然違ぇよ!!!))


 みんなの思いを勝手に勘違いし、おじいさんは続ける。


 「それならわしからいくぞい!」


 ((·····へ?))


 そう言うと、おじいさんはこちらに向かって駆け出した。速さは、おじいさんにしては速い。しかし、それほどでもなく、こちらに考える有余を与えた。背戸君は言う。


 「なぁ、これは戦ってもいいやつか?」


 それに対し、宮田さんは言う。


 「おじいさんはやる気満々じゃん?普通に強いし、勝算ないなら"全員で来い"なんて言わないしょ」


 「んなら、怪我しない程度に付き合ってやるか···」


 病月君はそう言い、みんなは、各々の武器を構えた。僕も、剣を構える。


 おじいさんが距離を詰めてきた。側に居た四人が、一斉にかかる。―しかし、その攻撃はすべて防がれていた。巧みな剣さばきならぬ、棒さばきで四人を互いに衝突させた。勢いが強かったので、痛さのあまりに四人は倒れこむ。続いて、六人程が精霊と苦無くないを用いて攻撃する。それすらも、おじいさんはかわし、やはり棒でそれらを地に伏せさせる。


 そのまま大数が倒され、残っているのは僕と夏希とクティ。まず、クティが動いた。とてつもない速さだ。見えない。


 「···ん、ちとやるな」


 おじいさんが何かを呟く。そのとき既に、クティは背後を取っていた。完全におじいさんの死角。速さを変えずにクティは苦無くないをおじいさんに向けた。―瞬間、風圧が僕らを襲った。思わず目を閉じた。


 ―僕が目を開く頃。クティの苦無くないは棒で止められていた。鋭い苦無くないの先を、細い棒で受け止めたのだ。僕はぼっとしてしまった。しかし、ことが変わる前に僕は動き出せた。(今なら倒せる!)という確信のもとだ。僕の剣はおじいさんに向かう。





 ―刹那。僕とクティは全身を地に当て、空を見ていた。

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