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その鑑定士、聖剣を握る。  作者: ラハズ みゝ
第2章 Information are intertwine
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20.戦いの後に

 ―敵は、速やかに撤退。聖剣は、いつの間にか姿を消していた。結果的に、デルハツ王国の勝利。しかし、僕らは敵の情報をほとんど得ていない。国王は、一体何を思って敵を逃がしたのだろうか。その疑問は、他の冒険者も共通に思っていたらしく、ルオさんは国王に訊いた。


 「なんで逃がしたんですか。情報あれば今後の対策できたのに」


 国王は一つうなずくと、右手に光を宿した。


 「大丈夫だよ。情報ならここにある。さっきね、腕がとれちゃった魔法士キャスターから盗んだ情報さ」


 魔法士キャスターから···?それで思い当たるのは、敵の魔法士キャスターから僕を離して国王が光で包んだ時くらいだ。あれが、情報を盗む魔法だったのだろうか···。戦いが終わって、僕の頭には様々な残した問題が巡っていた。それは、僕を強制的に脳内に閉じ込め、考えさせた。


 聖剣の効果、黒いコートの人、アキのこと·····。


 「塑通無君、少し良いかい」


 僕をそこから引き戻したのは、国王の一声だった。国王は、僕の目の前に立っていた。思考は遮断され、精神は脳外に向いた。「はい」と返事をすると国王はしゃがみこみ、僕の耳元で囁いた。


 「まだ完全には操作できていないようだね···。今度、聖剣それについて話をするよ」


 僕の反応を待たずして、国王は離れて行った。


 「冒険者諸君!ご苦労だったね。最南地区の復興は、こちらで進める。まず君たちは休んでくれ」


 国王は、解散と叫んだ。ギルドに戻っていく冒険者パーティーたち。それは、日が昇ってきて、僕らを照らす頃のことだった。暗がりの中の奇襲。国王は突然現れ、敵の魔法士キャスターを気絶させた。トラウマになってしまった。あの、人間かも分からない存在に。敵は、一体何の目的でデルハツを襲ったのだろう···。


 「いつまで地べたに座ってるの」


 背後からかかる声。···アキだった。そういえばと、僕は立ち上がった。しかし、足がくすんでうまく立てず、バランスを崩す。


 「ちょっと、気をつけてよ」


 アキが、僕を支えてくれた。みっともない話である。


 「···ごめん」


 僕の言葉に、アキはため息をこぼす。それから言った。


 「···実力は認めてあげる。でも、負けたつもりは少しもないから」


 静かな呟きは、少し恥じらっているようにもうかがえた。それにどう対応していいか悩んでいると、アキは肩を貸したまま歩きだした。ギルドの方だ。僕は慌ててアキから離れようとする。


 「も、もう自分で歩けるよ」


 ···と、言ったそばから倒れかけてしまい、またもアキに支えられる。


 「かっこつけないでよ。あなたの容姿じゃ、どうやっても"かっこいい"は似合わないわよ」


 そう言って、また歩き出した。···正論なのだが、だから結構ショック···。男として、女性にここまでしてもらうのは本当に恥ずかしい限りである。


 しかし、なぜこうも疲れているのだろう···。聖剣は容易に使えた。"スキル発動"と言えば、聖剣が姿を現すのである。敵を意識し、聖剣を振ればそれを斬れる。体力的にはむしろ楽だと思えたのだが。思い返してみれば、僕のスキルが勝手に発動されるとき、深手を負っていた。そして、今回は全く傷を負っていない。もしかすると、体力の消費が必須なのかもしれない。


 さすがに代償をゼロに聖剣を手にするというのは無理か。それは、これから慣れていくしかない。こんな恥が二度と起こらないよう···。





 ―ギルド。少し時間がかかってしまったが、僕とアキはそこまでたどり着くことができた。僕らは、ギルドを視界に捉えてから少し足を止めた。


 「すごい人の数だ···」


 当然だが、ギルドには避難してきた人がたくさん居た。とても、中には入れそうにない···。仕方なくそこで辺りを見回していると、クラスメイトを見つけた。向こうもこちらに気づいたようで、すぐに駆け寄ってくれた。


 「弱い人、生きてる!!」


 「"生きてる"って···死んだと思ってたの···?」


 ミクの発言に、苦笑い混じりに僕は答えた。みんな、何事もなくここに来れたようで良かった。···って、僕が思うのも変か。


 「どうかあったのか?」


 アキの肩を借りている僕の様子を見て思ったのか、型蔵君が聞いた。


 「うん···聖剣を使ったら疲れちゃってさ···」


 「それならさ、ここは人が多いから"家"に戻ろうよ!あの辺りは無事だったし」


 夏希が人差し指を立て、提案した。宮田さんがそれに賛成。


 「そだね、それがいいよ。春君もお疲れさん」


 報告は、他の冒険者パーティーらで十分だろうということになった。僕は後に行かなければならないが、クラスメイトは特に難に遭っていないからだ。


 「話がまとまったなら、私はもう行ってもいい?」


 アキが言った。僕は「ありがとう」と言い、アキから離れた。まだ、みんなは少し彼女を睨んでいた。そのまま、アキは僕らに背を向け、歩き出した。


 「助かった!」


 ―型蔵君が、アキに対して叫んだ。アキは足を止める。型蔵君は、背を向けるアキに深々と礼をしていた。それにつられてか、みんなも礼をする。当然、僕も。


 「···私はあなたたちに負けない」


 それだけ言って、アキは去っていった。それがどういう意図を持ってのそれかは分からなかったが、たぶん、みんなを認めてくれたのではないだろうか。勝手にそう解釈し、胸が温まるのを感じた。僕は、"家"に戻った。





 ―家に着いた僕らは、すぐに眠ってしまった。夜中から朝にかけて戦い続けた。当然のことだ。そうして、次に僕の目が覚めたのは、夕方だった。


 夕日が、部屋を赤気に輝かせていた。みんなまだ寝ているのかな。そこがあまりに静かだったので、僕は頭の中を整理することにした。ベッドに座り、僕の精神は外と遮断され、脳内にとどまった。


 ―まずは、聖剣について。言い伝えの中にあったそれだが、だいぶ扱える様になってきた。能力は、自分以外の時間を停止させ、意識を向けた相手を斬るということ。···としか今は分からない。もしかしたら違うのかも知れない。言い伝えの最後の方は、あまり理解できなかったが、能力を見るに同じだ。


 そもそも、どうして僕は聖剣に選ばれた?原因が全く理解できない。それを差し置いたとして、僕はどうすればいい?言い伝えでは、意味のない争いを抑え続けたとあるが、具体的な行動が分からない。まさか、自分のために使うことが正しいとは言えない。


 確か、あの時。初めて意識を維持したまま聖剣を握った時。一瞬のことだったが、その間に僕の記憶を全て呑み込んでしまいそうな程に入ってきた情報。それは、ある情景で、ある人影で、ある音だった。しかし、薄黒く曖昧なそれは、僕の記憶にはっきりとどまらず、ほとんどが通り抜けていってしまった。·····それが知れれば、僕は使命を知ることができるのだろうか。いずれにせよ、すぐに分かることじゃない。記憶を再確認できただけでも良いとしよう。





 ―その時を、もう一度··········





 さて、次は·····そう、環境···というのだろうか。僕らは、"この世界"に突然訪れた。今、意識して思い出した。それまで、ふと思わなかったのだ。重要なことのはずなのに、記憶の隅に避けられていた。みんなだって、"この世界"に来てから現実世界に帰ることや、突然のそれへの恐怖をほとんど語っていない。あり得ないだろう。···異世界に適応してしまっているのだ。後で話すか···?いや、それで安堵を失ってしまうよりは、今は生きることを最優先にするべきだろう。


 そして、僕らは異様に災難に恵まれている気がする。これに至っては可能性の問題なのだが、しかしそれでも気になる程。初クエストでの指定外の鬼の登場、クティと出会った時の冒険者の奇襲、デルハツへの敵襲、···。元よりそういう激しい世の中だったのか、僕らに何か起因することがあるのか。···これも、これからよく意識しておこう。





 ―その時を、やり直せ··········





 後は···僕のジョブについて。僕のジョブは鑑定士アプレイサー。冒険者になることを前提に置いてのそれ。鑑定士アプレイサーは、商人のジョブらしい。なので、本来は戦闘に向かないはずなのだが、僕には一つ変わった特徴がある。レベルの上昇が早いことだ。···鑑定。


 [塑通無春:鑑定士Lv.36 atk.0 dfs.0 spd.0 mp.0 Uスキル:森羅万象 Nスキル:高度鑑定、経験増幅、範囲強化、索敵鑑定、過憶耐性、詮索鑑定、全知全能]


 見てすぐに分かる。もはや清々しい程の見栄えである。ステータスオールゼロ。レベルだけが先行している。しかし、スキルは異常に多い。······そういえば、知らない文字がまた増えている。"Uスキル"と"Nスキル"だ。少し前からそういう表示だった気がするが···意味はよく分からない。スキルであることに変わりはないのだろう。このように、すごく普通ではないのだ。それが吉と出たことも幾度かあろう。しかし、凶と出た回数はそれを凌駕するはずだ。





 ―その時を、永遠に··········





 ···とりあえず、記憶の整理をすることはできた。多少は気が楽になったと思う。"この世界"で、不可思議なことは当たり前とも言えて過言でない。だから、僕はみんなとともにそれを生き抜くんだ·····!!!!!





 ―僕の理想を、僕が事実に·········





 ···先ほどから、妙な声を聞いている気がする。それは外からではない。外は、静かで、赤い。僕の中で、時々聞こえてきていた。記憶の中で、何度も何度も繰り返されている、馴染み深いそれ。しかし、僕に覚えはない。


 「···まだ疲れているのかな」


 きっと耳鳴りか何かだろう。そう、僕は事を終わらせ、部屋を後にした―。

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「その鑑定士、聖剣を握る。」解説
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