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その鑑定士、聖剣を握る。  作者: ラハズ みゝ
第2章 Information are intertwine
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追憶-2

 ―入学式の翌朝。春が、中学で最初の授業を受ける日。しかし相変わらず、彼の気分は優れない。洗面にしても、朝食にしても、身支度にしても···。もう、その時何をしていたのかも覚えていない程に。


 そうして歩く通学路も、やはり彼の記憶には残らない。それは、出来事に大きな印象がないためである。彼の記憶には、それらと比にならない程の大きな、何かの印象があった。そしてその何かは、断片的に彼の脳裏にフラッシュバックする。


 "なんでお前なんだよ!!!なんでお前が生きてるんだよ!!!"


 ―それが戻ってくる度に、春は頭を手で押さえる。「うるさい、うるさい」と言いながら。しばらくするとそれは安定を取り戻し、春は再び歩き出す。


 「―塑通無君、だっけ?」


 背後から誰かの声がした。女子の声だった。春は足を止めた。既にその女子は春のすぐ後ろに立っていた。そして、春の先を塞いだ。


 「私の名前、覚えてる?同じクラスだよ」


 春は無言で首を横に振った。やはりかと言わんばかりの表情で、女子は続けた。


 「宮田早苗だよ。ま、仲良くやろーよ。あんたみたいな大人しめなやつ、結構タイプなんだわ」


 そう言うと、宮田という女子は春の方を向いたまま、通学路を進みだした。それから春に手を振り、宮田は前を向いてスキップで去っていった。春も、また歩き出した。





 ―一年B組教室。春は教室に入ると、やはり口をミリとも動かさずに教室後方の棚にスクールバッグを片付け、席についた。教室の中にたった二十人程度しか居ないというのは、とても空間が広く感じる。春にも、周りが視界に入りにくく、本望だろう。


 そうしてぼっとしていると、ショートホームルームの時間がきた。チャイムが鳴り、担任がガラガラとドアを開け、入ってきた。生徒らも席につきだす。


 「ああ、そうか。挨拶係が欲しいですね」


 眼鏡をかけた女性の担任―昨日教室に居た先生と同一人物であった。担任は、勝手に一人で納得し、黒板に白いチョークで文字を打ち出した。そこに書かれたのは、委員会の一覧と、係の一覧。担任はこちらを見て黒板を軽く二回叩くと、説明をした。


 「今日はまず、一時限を使って委員会等を決めます。とりあえず学級委員を決めて、進行をやってもらいます。クラスが十九人と、とても少ないので、学級委員含め、多々の委員会及び係は一人になってしまいますが···頑張りましょう」


 そして、学級委員決めが始まる。しかしそれは、名こそしっかりしているが、実質は面倒な係の押し付け合いであり、楽な係の取り合いなのであった。


 「じゃあ学級委員は、誰が良いですか?」


 担任は、無責任にも投げやりな質問をした。本来なら、まだ会って二日目のクラスメイト同士でのこの空間は沈黙がしばらく続くところだろうが、このクラスはその例外だった。全員が、相澤を指差した。春も、流れに任せ指を差した。なにせ、昨日の自己紹介を促したのは相澤だ。学級委員は、彼をおいて他に相応しい人材は居ない。というのが理由。相澤は、立ち上がった。


 「僕が務めます!」


 学級委員は秒で確定した。次に決めるのは、委員会と係。係というのは、配布·回収だったり、黒板の管理だったり、教科連絡だったりなど、普段の生活を支える役目のことである。この学校では、委員会と係をそれぞれ一つずつ担当することになっている。相澤は、早速教卓に立った。





 ―話し合いは順調に進み、委員会と係はトントン拍子で決まっていった。というのも、入学して間もない生徒らに、どの委員会が良いとか悪いとか分からなかったのだ。係はすべて決まった。春の係は黒板係。残るは委員会。まだ決まっていないのは、春を含む数人。


 「あと残っているのは、環境委員と、放送委員だ。環境委員は二人だが、誰か―」


 「じゃあ私と塑月無君で環境委員やりまーす」


 春の左隣の席に居た宮田が挙手して言った。春は、宮田の方を見る。宮田は春にウィンクをし、小声で言った。


 「どうせ、どれでも良かったんでしょ?」


 こうして春は、黒板係と環境委員会を引き受けることになった。しかしこれも、春にはどうでも良かった。春には、もっと別の、何かがまとわり、離れなかった―――。

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