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その鑑定士、聖剣を握る。  作者: ラハズ みゝ
第2章 Information are intertwine
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18.実力と気持ち

 ―門周辺。冒険者たちは、突如現れた精霊の群れとディアのスキルを前に、苦戦を強いられていた。精霊を止めようと冒険者たちは動く。しかし、レブサーの炎弾とディアのスキルにより大半を防がれ、精霊は次々と冒険者たちを掻い潜っていく。冒険者において、戦場の要となっていたのは、タジーラだった。彼の回復及びシールドを軸とし、戦術が展開。


 「数多鳥籠メニーケージ!!!やれ三バカ!!」


 タジーラのアートは、数多の精霊をシールドで包み込み、捕縛。すかさずトゥリプルスの三人が斬りかかる。その最中、ブールは言った。


 「タジさーん、その呼び方やめてください。なんで俺らだけ三バカなんすか」


 「てめぇらがバカだからだ」


 「うわドストレートって···」


 ファラウェイとコモンオウルも、精霊の殲滅にあたっている。一方、ベテラズとリボンズはディア、レブサーと対峙していた。リボンズのティアラ、ミラーサ、エーリラは、召喚した三属性の精霊らをディアに向かわせ、ベテラズの剣士フェンサーであるファスタの援護。ファスタの剣は、リンの風強化ウィンドブーストにより、なんとか形を保っていた。ディアはスキルにより斬るものすべてを破壊。冒険者らには難しい戦況となっていた。


 「いやぁ。以外と俺ら、相手を混乱させてるかもだぞぉ···」


 ディアは、原形が残らない風景を前に、そう言った。それに対し、ティアラは叫ぶ。


 「調子に乗るんじゃないわよ、大剣男!!うちらの上級冒険者をナメないことね!!」


 「おいおい、言うだけ言って他人任せかよ···。でもまぁ、こっちもそろそろアートを使っていくか?俗に言う、奥の手ってやつ」


 ファスタの言葉に疑問符を浮かべるディア。期待通りの反応に喜んだのか、ファスタは二ヤと微笑みを見せ、剣を左手で支えた。そして、唱える。


 「触土封剣マッドソード···」


 ファスタの剣は、液状の土を帯び始めた。ファスタはそれを地に振った。地には土が付着。するとまもなく、土は地に粘着し、固体化してしまった。


 「これね···どういう偶然なのか、あんたと真逆で触れたもんを固めちゃうんだよ」


 ファスタは、笑みを崩さずディアに続けた。


 「なぁ、分解と結合···。どっちが上か試さねぇ?」





 ―戦力は大体把握できた。精霊は、冒険者たちのアートにより塞き止められていることが分かった。だとすれば、僕らにできる最善は―


 「そこの剣士フェンサー!!」


 突如、女の子の声がそこに響き渡った。少し低いけど、若い声だ。どこからの声かと、みんなはあちこちを見回す。僕も声の主を探そうと、身体の向きを変えると――その人は僕の目の前に居た。身長が僕とほぼ変わらない、顔立ちも整っていて、見る限り年齢は僕らと変わらない。違うところと言えば彼女は、大人顔負けに真っ直ぐな目をしていた。


 「さっきの剣術、どこで身につけたの」


 彼女は名乗りもせずに、唐突に僕に訊ねた。彼女の腰には、剣を納めた鞘があった。真っ直ぐな目はどこか、孤高を見ている様にうかがえた。あまりに真剣なそれに、僕は少し、見とれてしまっていた。


 「―はっ···!」


 「質問に答えて」


 僕が気を戻すとともに、彼女は言った。慌てて少し考えたが、良い説明が思いつかない。聖剣のことは言えないのだ。―いや、分からないぞ。もしかしたら、もう大丈夫なのかもしれない···。


 「あれは、聖剣···です」


 僕は言ってすぐに目を瞑った。思い切り。あの空間が怖かったから·····。


 「聖剣?···あの言い伝えの?」


 「―えっ?」


 僕は目を開いた。景色に、違いはなかった。そして女の子に僕の説明は通じていた。僕は、聖剣を、隠していた秘密を伝えることができるようになっていた。


 「"えっ?"って···、あなたがそう言ったんでしょう」


 「···あっ、はい。言いました」


 僕は、時間もあるとふんで、説明をすることにした。


 「さっきは後でって言ったけど·····みんなも聞いてくれる?」




 ―僕は話した。聖剣の言い伝え、世界を安泰にする聖剣が今日まで代々受け継がれてきたことを。初級のクエストで強力な鬼が現れた時、僕が聖剣を使って倒したことを。国王に呼ばれた時、手合わせで聖剣を使ったことを。そしてさっき、聖剣を操作したことを。僕にはとても濃い時間だったけど、口頭ではそう時間はかからなかった。


 「···塑通無、おまえがそんなもん抱えてたとはな···」


 険しい表情で、型蔵君が呟いた。聞いたみんなも、同じ表情。空気が、重くなった。


 「はる···私たち、何も知らないでずっと心配かけてごめんね」


 僕は目を丸くした。何故、夏希は謝る?心配をかけてきたのは僕の方じゃないか。僕のせいでいろいろなことに巻き込んで、大変な目に遭わせて、僕が悪いのに···。そう頭で繰り返した。―しかし、みんなの目を見て気づいた。責任を感じていたのは、僕だけじゃない。みんなも何かしら抱えていたんだと。なのであれば、僕が言うべきは、謝罪じゃない···。


 「···ありがとう。これからは、みんなで問題を解決しよう!」


 「「おぉーーっ!!!!!」」と、歓声が響いた。



 「盛り上がってるトコ悪いけど···」


 みんなの歓声は止んだ。女の子の一言で。みんなの目は女の子に向く。


 「名前」


 女の子は、僕の目を見てそれだけ言った。


 「塑通無春···」


 「そう、塑通無春。一緒に来て、敵を殲滅しに行く」


 ―しばらく沈黙が続いた。それから·····


 「「えぇぇぇぇぇっ!!!?」」


 みんなが声を揃えて叫んだ。その中に、僕も居た。いや、僕が一番驚いているのではないだろうか。敵を殲滅しに行くってことはつまり、門周辺の敵三人を倒しに行くってことで、だから僕らよりも上級の冒険者たちと一緒に戦うってことで···


 「ちょっと待って!!僕じゃ足手まといです!」


 両手を前に突きだし、全力で横に振っていた。しかし、女の子の瞳に一切のブレはない。···本気なのだ。それから、少し口早に言った。


 「あなた、年齢は」


 「···十五です」


 「私も十五。私と同い年で、私より強いかもしれない剣士フェンサーは見たことがない。だから、戦場あそこで確かめるの。どっちが強いか」


 女の子には、強い信念のようなものを感じた。彼女は同い年だと言っているが、掻い潜ってきた修羅場の数が桁違いに思える。そんな彼女の言葉に、みんなはまたしばらく黙りこんだ。しかし、女の子は急いでいた。


 「こんなところでぼっとしてる場合じゃないの。ほら、早く」


 そう言いながら、女の子は僕の手を引き、戦場の方へ向かおうとした。「えっ···」としか言えない僕は、その小さくもしっかりと僕の手を掴んだ彼女の手が行くままに身体を振られてしまう。その時は、ただただ彼女の奥にある何かに見とれていて、行動力を失っていた。


 「おい待ちやがれ!!」


 ―型蔵君が呼び止めなければ、僕はそのまま彼女の手に引かれ続けるところだった。女の子の足が止まった。僕も、気を取り戻した。


 「そりゃ、つまり自己満足じゃねえか!塑通無は置いていけ。どの道、てめぇごときに負ける器じゃねえんだよ!」


 型蔵君は、躊躇いもなくそう言いきった。女の子は、向こうを向いたままだった。すると、僕の手を掴んでいた手の力がスッと抜けていくのを感じた。僕の手は、離れた。女の子は、静かに方向を変え、型蔵君の目の前まで歩いていった。それから鋭い眼差しで型蔵君を睨むと、力強く言った。


 「私···ごとき?」


 「ああ、(·)(·)(·)だ!」


 女の子の表情は、最初の時から一変していた。手を見た。僕を握っていたその手は、強く拳を握っていた。


 「·····私をあなたたちと一緒にしないで。実力もなしに仲間だの協力だの語って、自分の弱さを正当化している、あなたたちと」


 「てめぇ···聞いてりゃペラペラと·······!!!!!!」


 型蔵君が言いかけたのを遮り、女の子は言った。


 「試してもいいわ。私と、あなたたち。どちらが"ごとき"か」


 ―もう悪い展開にしか進みそうにない。そう直感し、僕は女の子を鑑定した。


 [アキ·サルモネーブ:剣士Lv.52 atk.85 dfs.72 spd.32 mp.35 Uスキル:不壊劣剣 Nスキル:なし]


 その年齢とは思えない程のステータスの高さ。ぶつかり合えば、間違いなく型蔵君らが危ない。


 「型蔵君―」


 「鑑定なんざ必要ねえ!!!」


 型蔵君は、僕の言葉を遮り言った。


 「これはな、レベルで決まる戦いじゃねえ。気持ちで戦るんだよ!」


 そう言いきると、型蔵君は背にある鞘から大剣を取り、右後方に構えた。女の子も、腰の左にある鞘から剣を引いた。両手で握り、剣先を真っ直ぐ前に向けている。みんなも僕も、それはもう止められないと感じた。


 先に動き出したのは型蔵君。構えを崩さず一気に足を進め、距離を縮めたところで大剣を右から左へと大きく振った。対して女の子は、剣を真上に上げ、下に向かって振った。型蔵君の大剣は、女の子の剣によって見事に地に伏せてしまった。大剣の方が威力としては高い。しかし、それを全く別の角度から当てることで、大剣の威力を殺した。


 「なっ···!?」


 少し動揺を見せた型蔵君だったが、すぐに一歩大きく下がると、再び女の子の方へ向かった。今度は女の子も型蔵君に向かっていった。距離が速く縮まり、大剣を振らざるを得ない状況に追いやられた型蔵君は、大剣を振りだす。しかし女の子の剣の方が当然速く、大剣の平らな部分を剣先で突くと、大剣は型蔵君の手から離れた。そこから数秒もなく、型蔵君の首に、剣が向いていた。


 「これで分かったでしょう。気持ちがどうとか言ってたけれど、私は気持ちも実力もあなたたちより上なの」


 彼女の言葉に対し、誰も口出しできなかった。女の子は、剣を鞘に納めると、僕のところへ戻ってきた。


 「さぁ、いきましょう」


 ···僕は、覚悟を決めた。いずれにせよ、いつかこの聖剣を使えるようにならなきゃいけない。そして、この戦況をどうにか優勢にできるのであれば、それは本望。


 「僕、行ってくるよ。力があって、それが使えるのなら、僕は戦況を変えたい。みんなは、先にギルドへ」


 そう、言い残し、僕は女の子と門の方へ向かった。

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