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その鑑定士、聖剣を握る。  作者: ラハズ みゝ
第2章 Information are intertwine
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17.聖剣の制御

 ―この柄を手に取れば、意識が飛ぶことを代償に、聖剣を使える。僕は、右腕に力を込め、必死にそれだけを動かした。·····意外と動くものなんだな···。いや、これは僕の意志じゃない···。この時から既に、この身体は、脳は、僕のものじゃなくなっている――。


 「意識を確かに持て!!!!!」


 ―叫び声が、聞こえた。僕の失いかけたそれは、ふっと帰ってきた。視界が、はっきりする。瞳だけを動かし、僕は視界を確認した。そこには、鞘を腰に差し、剣を握る男が居た。黒いコートを着ている。しかし、どこか見慣れた感じがした。


 「己の意志で、その剣を握るんだ!」


 ―何をどうすれば良いのか全く分からないが、言われる通りにするしかないか。···自分の意志?この剣に、"委ねるな"ということなのだろうか。だとして、何を想えば良い···?


 "スマイルイズベリーストロング!!!ほ~らっ!!!"


 ―ふと、夏希の言葉を思い出した。僕は、何のために戦うんだ···。僕は、僕は······!!!!


 「みんなを守りたい!!!!!!!!」


 叫びながら、己の力で右腕を動かした。





 頭に、様々な情報が流れ込んだ。誰だ、何だ、何故だ······。





 ―駄目だ、意識を···!!!しっかりと···!!!!!!!





 ·········そして、掴んだ―――。





 ―無だった景色の色が、原型を取り戻した。僕は、右手に剣を確かに握っていた。視線を腹に落とすが、傷口がない。しかし、目の前の景色は確かに"今"だ。僕は、戻って来れたんだ···!!


 「よく耐えた。塑通無君」


 その人は、僕に言ってくれた。今なら、よく顔が見える。そう、すぐにその人の姿を確認したのだが·····。その人は仮面を着けていた。シンプルに、黒く、顔をすっかり覆ってしまう仮面のせいで、顔は確認できなかった。···でも、僕の名前を―。


 「あなたは一体···?」


 「それは今考えることではない。前を見よ。やるべきこと、あるだろう」


 ―すっかり忘れていた。僕は身体を前に戻した。向かってくる精霊の大群。この剣で捌けるか···?しかし、迷う暇などなかった。僕は剣を構えた。その、途端のことだった。


 「···止まっ·······た?」


 それは、あの時の景色だった。聖剣が現れる時の、景色だった。まさか、やっぱりここで意識を···!!?―いや、意識はしっかりしている。そうじゃない。止まっているのは、僕以外だ。これが、この"聖剣"の本来の力·····。僕はすんなり事実を受け止められた。理解できたのだ、この聖剣の力を。そうして、精霊をめがけて、大きく振り払った。


 ―停止していた空間が、元に戻った。そして数秒後、視界に映っているだけの精霊らは消滅してしまっていた。それだけではない。剣の威力は精霊だけに伝わり、その他の物体には全く影響を与えていなかった。感嘆の連続に、思考を回す余地ができない···。"黒いコートの人"も言った通り、今、やるべきことだけをやろう。


 (早い···。私の倍、いやそれ以上か。この少年は、情報処理に長けている···)


 「塑通無君、これより先に精霊の群れを進めることはできない。協力を頼んでも良いだろうか?」


 "黒いコートの人"は、僕の方を向いて言った。顔は見えないけど、仮面の奥から、何か強いものを感じる。さっきも、全てが止まった空間で、その人だけの声が聞こえた。この人は一体何者なんだ···。―あっ、鑑定があった。


 [鑑定を、拒否されました。]


 ん···?拒否って···。いや、フェミアたちも鑑定を防ぐことはできたから、何ら手段があるのだろう。ガッチリ正体は見せないつもりの様だ。しかし、だからと言ってこの人に協力しない手はない。誰だか分からないが、間違いなく僕にとっての重要人物だ。


 「こちらこそ、お願いします!」


 「ありがとう。さぁ、行こう」


 黒いコートの人は、首を精霊の来る方へ戻した。僕も、身を前に見せる。さっきの僕の一撃で、かなり遠くまで斬れた。しかし、それでも精霊はまだ多い。この剣の能力も完全に知った訳じゃない。絶対に油断はしない···!!


 ―精霊との距離が縮まってきた。僕は、剣を構える。静止する空間。僕は視点を精霊らに合わせた。しかし、気づいた。――精霊らの約半数、僕から見て主に右側だ。


 「·····斬られて·····る!?」


 右半数の精霊の肉体は、きれいに二分していた。誰が·····?僕が構える直前まで、そういう影は見当たらなかった。精霊らだって健全だった。思い当たる節があるなら·········。僕は、"黒いコートの人"が居た右手を見た。"黒いコートの人"は、右手に握った剣を右後方に振り上げていた。その人が、大半の精霊を一瞬の間に斬り伏せてしまっていたのだ。·····嘘だろう?本当に何者なんだ?


 「·····いや、今は考えることじゃない」


 考えるのを止め、僕は精霊を意識し、目一杯に剣を振りきった―。





 ―デルハツ王城。ここでは、国王エミドレが戦場の様子を眺めていた。


 「光属魔法ライトマジック遠方光景アウトルック


 エミドレがそう唱えると、王座に腰着くエミドレの前に光が集まり、それは城外へと広がっていき、エミドレにその景色を見せた。そこに映ったのは、敵陣と相見える冒険者たちの姿だった。真剣な眼差しでそれを見るエミドレ。ふと、剣を握る春を視界に捉えた。


 「さて、被害は今のところ最南区にとどまっているようだね。·····おや?もう扱えるようになってしまったのかな···早いね。敵の精霊もすごい数だ···。もっと冒険者を集めるべきだったんじゃないかな?ルイゼも大変だね·····」


 しかし、特に指示を追加することなく、エミドレは戦況をうかがうだけだった。それは、戦場を仕切っているルイゼへの信頼、冒険者たちへの信頼から起因するのであろう。





 ―ギルド。そこには、沢山の住民が避難していた。ただただ混乱に包まれ、騒がしい。ここにも、数人冒険者が居る。ある女性冒険者は、男性冒険者に言った。


 「クレバさん、行ってあげたが良いって。みんな大変そうだよ?」


 「大丈夫大丈夫···。あそこぁ、タジの縄張りだ。あいつが居りゃ勝てないことはねーよ」


 「そゆことじゃなくてさ?あたしらの評価下がっちゃうかもなんだよ?」


 「評価なんざ知ったこっちゃねーよ。実力がものを言うご時世なんだからよ···。それに、ここの防衛も立派なお役目だっつの」





 ―門から少し離れた、アドベータが待機する処。アドベータの全員は、ただ眺めていた。脚の一つも出さずに剣を振り、精霊を駆逐する春と、黒いコートの男を。しかし、主に春だ。彼らの記憶では、春は鑑定士。にも関わらず、どこから現れたのか剣を握っている。相澤は、呟いた。


 「あれは···塑通無君·····なのか?」


 ただ剣を握っているのではない。それを振るって精霊を捌いている。だが、肝心の振っている最中の動作が全く目視できない。構えから振り切った後まで、時間が飛ばされているようだった。


 「弱い人の動き、全然見えないよ!?」


 「速い···?·····いや、本当に見えておらんぞ!!?どうなっておるのじゃ!?」


 全員は感嘆に埋もれていた。もはや次元の違いだ。こちらとあちらの狭間にラインを錯覚させ、一歩でも踏み入れれば、その瞬間に自らも身を跳ねられそうな恐怖。圧倒的な差を前に、一人として動き出せなかった。





 ―僕はひたすらに剣を振るい続けた。精霊だけを意識して。それから少し。精霊の数はぐんと減ってきた。多分、門側に居る冒険者パーティーのおかげだ。そして―。


 「こいつらが最後···かな」


 「···はい!」


 こちらに向かう精霊を、掃討することに成功した。それに必死だったが、僕は"この剣"を制御することができ、こうしてみんなを守れた。それもこれもあの"黒いコートの人"のおかげに他ならない。


 「ありがとうございま―·····って、あれ·····?」


 "黒いコートの人"が居た方を向いてお礼を言おうとした。しかし、既にその人はそこに居なかった。気づくと、剣をも姿を曖昧にし始めた。透明度が増していき、最後には存在を消した。


 短い間にかなりいろいろなことが起こった気がする。今それを整理しようとすると、とても時間と余裕がない。全部後回しにしちゃおう。


 「さて·····」


 向こうから、みんなが駆け寄ってきた。


 「おい塑通無!あの剣は何だ!!」


 「え、えっと·····」


 「動きが見えなかったよ!?どうやってたの!?」


 「うん、それは·····」


 「お前鑑定士(アプレイサー)だよな!?」


 「そうなんだけど·····」


 質問攻め···。当然こうなる。知り得ないことを突然知らされるのだから。みんなが気になるのは当たり前だ。多分ただの好奇心じゃない。仲間としてのそれなんだ。でも―


 「今はこの敵襲をなんとかすることが先。話は後でちゃんとするよ」


 みんなは、僕なんかよりずっと優秀で、理解も早い。すぐにみんな頷いてくれた。まずは、門周辺の戦況を知りたい。もう精霊は多くないはずだ。いや、多くても耐えなければならない。いずれ越えるべき壁だ。僕は鑑定を行った。出てきたのは、冒険者のステータス。


《トゥリプルス》

 [レドソン·フリーパー:剣士Lv.39 //]

 [ブール·クラシュ:剣士Lv.37 //]

 [イエロ·ディール:剣士Lv.35 //]


《リボンズ》

 [ティアラ·レレンザ:召喚士Lv.34 //]

 [ミラーサ·センドレン:召喚士Lv.34 //]

 [エーリラ·グレイス:召喚士Lv.34 //]


《コモンオウル》

 [ラウ·ローシャン:剣士Lv.32 //]

 [リン·デール:魔法士Lv.30 //]

 [ルオ·ファイン:召喚士Lv.31 //]


《ファラウェイ》

 [ユーリ·ヴァイシス:弓士Lv.68 //]

 [サティラ·グレイス:弓士Lv.59 //]

 [レデュージ·ガイデ:弓士Lv.65 //]

 [テシュハ·ギーザス:弓士Lv.64 //]


《ベテラズ》

 [ファスタ·ワイリー:剣士Lv.79 //]

 [エスニック·ファミリオ:弓士Lv.65 //]

 [ゴウネス·シタザン:忍者Lv.69 //]

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「その鑑定士、聖剣を握る。」解説
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