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その鑑定士、聖剣を握る。  作者: ラハズ みゝ
第1章 Encounter and reunion
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10.騒動

春VS国王!そしてドキドキの夜‥‥!?

 無色の世界。春の意識はない。しかし、春は立っている。剣を、握っている。橙色に光るその目に、優しさはない。無の状態だ。そのいずれもが停止している世界で、エミドレもだった。


 「塑通無君の意識は···ないようだね。さて、これからが本番」


 エミドレは、強大なエネルギーを感知していた。春から発せられる、強大なエネルギー。


 「光属魔法(ライトマジック)光速化(アクセラレーション)


 エミドレの身体は発光した。春は、まるで前方に倒れるかのように重心を運び、身体が地面に平行になりかけたところで、足を前に出した。―それは人と呼べるものの速さではない。三歩と言わずに春はエミドレの目の前まで来ており、既に剣を上に振り上げていた。


 「···速いね」


 エミドレの言葉など知らず、春は剣を真下に振りきった。発生した"波"は、闘技場の観客席までをも斬った。亀裂により激しい煙が起こった。そしてそのまま、停止している。春は、地面に突き刺さった剣を抜いた。


 「威力も高い。魔力だって使っていない剣で闘技場を両断しちゃうなんてね···」


 エミドレは、春の斬撃を受けていなかった。エミドレが居たのは、春の後ろ。春の剣が触れる数十センチ手前で、この結果を予測し、春の後ろまで移動していた。ゆっくりと、エミドレの方へ振り向く春。


 ズバッ··············!!!!!!!!!


 剣の上下を一瞬で行った春。エミドレは、目視できない速さで大きく後方に退避した。それでも剣の"波"は追ってくる。


 「光属魔法(ライトマジック)光粒壁(パーティクルシールド)


 光の粒子が"波"を防いだ。春は、またエミドレとの距離を詰めた。―しかし、春は地面に身を突き伏せられていた。エミドレは、春の目の前に立っている。


 「どうして君を選んだのかな···。聖剣の洗脳に、自我を失ってしまっている。それじゃあ、君も回りの景色と同じだよ」


 エミドレは、春の前にしゃがんだ。


 「一つアドバイスをしよう。僕は君より、次元一つ分先に居る。そう思ってくれると良いよ。だから、聖剣の洗脳も受けない」


 春の手から、剣は離れた。そして粒子と化し、消えた。春の目は、黒く戻り、瞼が被さった。


 「君は苦労するよ。君が成長したら、詳しく話そう」





 ―う················。ここは···宿屋?


 僕は、昨日と似たような目の覚め方をした。視界に真っ先に飛び込むのは天井で、僕は布団に居て、昨日との違いは、静かで、電気も消えているということ。みんな、もう寝ているんだ。僕は確か、国王と手合わせをしてから·····ボロボロにされて気絶したのかな···。そういえば、傷痕の痛みなどをまったく感じない。治してくれたのか。


 少し、身体を起こした。·········?若干重みを感じる。身体を起こした僕には、自分の布団しか見えない。―いや、布団に違和感。···どこか、不自然な···。僕は、布団を取ってみた。


 「!!?」


 そこにあったのは、夏希の姿。夏希が、僕の上に乗りかかっていた。右側を見ると、僕の布団の隣にもう一つの布団。―どうして!?この状況何!?何をどうしたら僕は夏希と二人きりで―


 「ふにゃ······。食りゃえぇい、スペシャルパァァンチィ········むにゃむにゃ」


 スッと感じる悪寒の直後、聞こえたそれは··········。


 「ミ、ミク!?」


 気持ち良さそ~うに寝言を言うミク。待て待て待て待て待て待て待て待てぇい!!!どうなってるの!?僕は咄嗟に辺りを見渡す。もう、他には居ない。


 「ふぅ、良かった···」


 ―いや良くはない!分からない。一体僕が気絶している間に何があったって言うんだ···。


 バタッ···。


 ミクが、僕に抱きついてきた。··············これは夢か。僕の頭は、疲れでこれ以上働きたくないようだ。もう···················。





 ―強い日差しを感じた。暖かいそれは、僕の頭から足までをじんわり照らしている。暖かさに包まれ、目覚めた今日。なんだか疲れがとれた気がしない···。悪い夢のせいだ。


 「(はる)、おはよう」


 とっても馴染みのある声が、明らかに部屋の中から聞こえた。···部屋の中。僕は、恐る恐る首を右に動かした。夏希が、笑顔で僕を見ている。僕と同じ目の高さ。すなわち········隣で寝ていることになる。


 「夏希!?ど、どど、どうしてここに!?」


 僕は勢い良く身体を布団から引き剥がした。


 「う~ん、色々あってね」


 色々って·····。何をどうすれば女子と同室で寝る状況が出来上がるんだろうか·····。


 「食らえ、スーパーキィィィック!!!!」


 尻に飛び込む強烈なキック!!?これは······。


 「おっはー!弱い人!!」


 あれは、夢ではなかったのだ·······················。




 「―という訳で、こうなりましたー」


 夏希は、昨日僕と別れた後のことを詳しく話してくれた。それによるとみんなは、宿屋を探すところまでは順調だったらしい――。





 「なぁ、ここじゃね?」


 高瀬たちは、二十一人を泊められる宿屋をガイドに探してもらっていた。金銭は問題なかったため、質も良い宿屋だ。


 それは、洋風の立派な建物だった。ギルドにも劣らぬ質の良さ。大きさまでは敵わないが、夏希たちを十分泊められる部屋の数。


 「それじゃあ、受付を済ませてくるよ」


 学級委員である相澤は、一人で中に入った。そこには―。


 「どうしてじゃ!!わらわは客じゃぞ!?」


 カウンターの受付人に文句を言う女性の姿。格好をみるに、冒険者。赤とピンクを織り混ぜた忍の服装だ。一体何をそんなに怒っているのかと、相澤はカウンターに向かった。


 「だから、払えないのにお客様扱いする店がどこにあるんですか!!一文無しに貸し出す部屋はありません!!」


 「あのー···すみま―」


 「なんじゃ!その態度は!!!わらわは疲れておるのじゃ!!」


 介入の余地無し。女性はありがちな口調で受付人に強く当たる。女性はお金がない。しかし泊めろと言う理不尽だ。当然宿屋は部屋を貸せない。今、三年B組―もとい、アドベータには大量の金がある。"誰も見過ごさない"がモットーの相澤は考える。


 「良ければお金、貸しましょうか?」





 ―相澤君の勝手な言動とは言え、親切だとみんなは賛成した。相澤君以外は見返りを考慮しての判断らしいが···。これで万事解決···かと思いきや、問題はもう一つあった。それが、先客。昨日は客が多く、残っている部屋の数から、僕らは四、五人で一部屋使うはめに···。それで僕を数え忘れて、現在に至る。


 ん?四、五人一部屋?でも僕らの部屋は···。


 「あれ、どうしてこの部屋だけ三人なの?」


 「うん。(はる)をどの部屋にするかで話した時にね、ミクちゃんも(はる)と一緒が良いって。それでまた人数がずれて···」


 それならもう少しどうにか出来たと思うんだけどな···。わざわざ僕を女子の中に放り込まなくても···。しかし、それはもう過ぎたこと。このことは忘れよう。




 ―朝食。話題は、昨晩宿代を肩代わりした女性のことで持ち越された。


 「結局、その一文無しの素性はどうなんだ?」

 「名前を聞きそびれたな···。ここにはもう居ないっぽいし」

 「あの野郎、逃げたんじゃないんだろうな!!」

 「それ最低じゃない!」

 「そんじゃ、そいつ探さねーとな」


 はい、本日のプログラム決定。僕らは、宿代を肩代わりした口調に特徴のある女性を探すことになった。





 まずは、みんなでその女性の詳しい特徴を伝え合う。


 「身長は俺らと大層変わらなかったな」

 「でも話し方は十五やそこらじゃない感じだったぞ」




 ―そうして、まとまった特徴が、


 "女性、身長は百六十前後、一人称は「わらわ」、語尾は「じゃ」、顔は超絶美少女、服装は忍者(ニンジャ)、体型はドストライク、髪型はポニーテール、一文無し"


 所々曖昧な表現が用いられているが、これをどうするのだろう。


 「そんじゃ塑通無君、ヨロ!」


 宮田さんは人差し指と中指を立て、額から弾いた。みんなは、一仕事終えたように満足感に満ちている。···いや。


 「何ブラウザ機能の如く僕を扱ってるの!?そんな便利なものじゃないと思うよ?」


 僕は突っ込むが、誰も聞こうとしない。まったく···鑑定士(アプレイサー)に検索機能まであったら驚きだよ。


 僕は出た情報を強く意識し、鑑定を行った。


 ―しばらくすると、マップに変化があった。マップが縮小され、映りこむ一つの黄色い点。そこから線が伸び、文字が表示された。


 [クリスティア·フローレン:忍者Lv.18 atk.21 dfs.8 spd.51 mp.12 スキル:幻影代撃]


 「できた···········」


 なんと、曖昧な情報から個人を特定し、さらには現在地まで判明してしまった!!みんなも「マジでか!?」と声を揃えて口をあんぐりと開いている。どうやら冗談で僕にやらせたらしい。僕は彼女のステータスを伝えた。


 「で、そいつ今どこ!?」


 僕はマップを見た。


 「すごい速さでここから北西の方向に進んでるよ!」


 その黄色い点は、ぐんぐんとここから離れていた。顎に手を当てる冴霧君。何か考え事をしているらしい。いっときして、冴霧君は言った。


 「その方角にはいつもクエストに行くときに出る門がある。その忍者(ニンジャ)はクエストへ行ったんだろう。レベルが高いから、クエストの難易度もそれ相応のものだと考えられる。昨日分けた全てのパーティーで同じクエストに行こう。塑通無君、クエストは分かる?」


 僕は鑑定を再び行った。


 [//クエスト中···【氷鬼10体討伐】]


 「氷鬼10体討伐だって」


 「よし、行こう」


 僕らは、ギルドへ向かった。

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