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その鑑定士、聖剣を握る。  作者: ラハズ みゝ
第1章 Encounter and reunion
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8.獣人の姉妹

 「···ま、まあ、とにかくフェミアさんたちは助けが必要ってことだろ?」


 衝撃の事実に未だに驚愕を残しながら最上君は言った。「うんうん」と頷く宮田さん。フェミアさんの表情は、あまり良くなかった。


 「フェミアでいいわ。···気持ちはありがたいけど私は、あなたたちの獲物を奪ったのよ?」


 やっぱりというか、なんというか、今回ゴブリンを盗んだのもフェミアさん―否、フェミアたちだった。しかしそれがなんだという。その意には誰も隔たりなどない。


 「そんなのどうでも良いよ!!困ってる人がいたら、イーチアザーで助けないとね!!」


 フェミアの暗さとは相反した夏希の瞳があった。その輝く瞳に、フェミアは感嘆からか、あるいは感心からか、果てはその両者か。いっとき目を丸めた後、「ふふっ」と笑みをこぼした。


 「世の中にはいろんな人が居るのね。その言葉、信じてもいい?」


 フェミアの表情はガラッと変わった。僕らのことを、信用してもらえそうだ。ここぞとばかりに最上君が前に出てきた。


 「当たり前よぉ!!俺に背中預けな!」


 ···さっきの動揺が嘘の様だった。その言葉に自信をもらったのか否かは分からないが、フェミアが出した答えは―


 「―信じるわ。あなたたちを」


 「わーいっ!!友達増えた!!!」


 こうして、この世界に来て初めての仲間ができた。



 ひとまずは、ここから出ること。待ち合わせは入り口だから、来た道を戻ればいい。道中、僕はフェミアから、鑑定にひっかからなかった訳を聞いた。フェミアは、首飾りを掛けていた。それが、祖母の形見らしく、魔除けになっているんだと。鑑定も弾くのだから、効果は本物だろう。



 ―鑑定もあり、僕らはゴブリンに遭遇することなくあっさり入り口に戻ってこれた。それから一時間程でみんな無事に揃った。当然視線はフェミアらに向く。


 「なにこのかわいい耳!!!」

 「尻尾もふさふさじゃん!!!」


 ぬいぐるみのような毛並みの耳や尻尾に癒される女子たち。


 「獣人美少女!!!」

 「超萌えるぜ!!!」


 その口出しできない容姿に癒される男子たち。いずれにせよフェミアたちには異様な光景なのだ。それまでの差別されてきた生活が、180度反転するのだから。嫌われるどころか、魅力的に見られている。


 「···嘘···でしょ···」


 「こんなに友達増えちゃったよ!!!!?」


 しかし、驚いているとはいえ喜んでくれて何よりだ。


 「ところでよ、ゴブリンは指定数倒せたのか?」


 ―チームごとに確認したところ、総計十六体倒していた。十分過ぎる。四人五チームだから、一チームあたり三体も倒したのだ。この結果はすごい。みんなはフェミアたちとすぐに馴染み、ハイタッチしたり変な踊りをしたりしている。


 「さーて、デルハツに戻るかな!」


 僕らは早速クエストクリアの報告に向かおうとした。すると―


 「待って」


 フェミアの声が、僕らの足を止めた。妙に、震えた声だった。目を見て、怯えている様子がすぐに分かった。


 「あそこには···人が沢山居る···行けない」


 ···そうだ、獣人は人間に嫌われている。王国にはそんな人間が大量に過ごしている。フェミアたちには、危険極まりない場所なのだ。気が回っていなかった···勝手に助けると言いながら···。


 「どうしよう···」


 うっすらと呟いた。僕らは王国に戻らなければならない。でも、フェミアたちは行けない。少しモヤつく空間。―そこに、堂々と立つ男が居た。


 「んなこと気にすんな!!!」


 スポットライトが当たったのは、型蔵君。


 「え···?」


 疑問符を浮かべるフェミアに、ドンと型蔵君は言う。


 「俺もまともな人間じゃねーけどなぁ···見た目でみくびるもんじゃないって分かったんだよ。人間がなんだ、獣人がなんだ!ごちゃごちゃ言う奴は気にすんな!!そんで、変なことしやがったら俺らでぶっ飛ばしてやる!!!」


 ―型蔵君の言葉に、その場に居合わせた全員が何かを動かされた。それから、型蔵君の燃え盛る炎はどんどん広がった。


 「そうだ!!俺たちで助けよう!」

 「こんだけ居りゃ余裕だしな!」

 「フェミアちゃんらも世界広げよう!」

 「絶対そっちが楽しいよ!」


 ·····僕は、ビビり過ぎてたんだ。こんなに立派な仲間揃えていながら、もっと、自信持って良いんだ!!みんなを信じて、僕もみんなに信じてもらって、そして、この世界を強く生き抜くんだ!!


 「種族なんて関係ないよ。行こう、フェミア、ミク!!」


 「春···みんな·····!!!」


 「―行くよ、行こう!私も、自由に生きたい!!」


 「おぉー!!」と歓声が上がった。僕らは、みんなで、世界の常識を覆す···········!!!!!!!!!




 ―日が傾き始めていた。一つ心配だったのが、フェミアたちをどうやって馬車に乗せるか、ということだが···御者さんは、とても優しい人だった。


 「なに、問題ありませんよ。乗り方はおまかせいたします」


 数を合わせ、僕らは馬車に乗り込んだ。





 ―デルハツ。馬車が止まり、僕らは馬車から降りる。


 「さ、行こう!」


 夏希が手を差しのべる。しかし、やはりフェミアは少し震えていた。夏希は、フェミアの両手を引き、馬車を降りた。顔を伏せるフェミア。対してミクは王国に目を光らせていた。もしかしたら差別を経験したことがないかも知れない。·····だったら、これからも差別未経験で居させたい。僕らは、堂々と道を進んだ。


 気のせいか、少しざわついて感じた。視線を向けられている様····いや、事実向けられている。最初は曖昧だったが、はっきりと、周囲の目はこちらに向いていた。顔をしかめる型蔵君だが、それはまだ起こった訳ではない。確実に、向こうが手を出さなければこちらは何もできない。型蔵君は、いじめをしたことはあっても、されたことはない。それどころか、ざわざわ視線を受けたこともないだろう。その大きさを知った。



 ―ギルド前まで来た。ここには、冒険者たちが居る。僕らは一度、ここで襲われた。その時は、寒崎君が助けてくれたが、彼は居ない。一つの、大きなポイントだ。ここを逃げては、常識を覆したなんていえない。相澤君が、僕らを振り返った。一同は頷いた。そして、相澤君は扉に手をかけた。





 ―ギルド内、上層部。そこには、二人の偉大な人間が並んでいた。


 「お前も相変わらずだな···」


 ギルドマスターは、華美な正装に床まで垂れる大きなマントをまとっているもう一人に言った。


 「ルイゼ、君も大概じゃないか」


 そして、「ところで」と接続語で繋ぎ、続ける。


 「"ラプラスに選ばれた人間が居る"などと戯言をはく君じゃないと思うのだが?」


 「確かに柄でもないな···。しかし―」


 ギルドマスターの言葉は、突如の轟音にかき消された。数秒も待たずに、もう一人の姿は消えていた。





 ついに、相澤君は扉を開いた。今さら怖じ気づくことなどなく、僕らは堂々と中に入った。フェミアは、瞳を小刻みに揺らし、やや下を向いている。元々人数が多いため、入るときはいつも数秒こちらに注目がいく。そのせいか、フェミアらに視線が向くのはまもなかった。


 「···おい、ありゃ獣人か···?」

 「マジか···あいつら変人集団じゃねーか」

 「つかここに獣人連れてくるとか···常識はずれも良いところだぜ」


 居合わせる全ての冒険者は、獣人を馬鹿にしていた。この国に入ってからそうだったが、僕には分からない。何故、獣人との隔たりを求め、貶すのか。


 (おい···こりゃ、あいつら懲らしめる良い機会じゃないか?よくも歳上の俺に恥をかかせやがって···あの化け物魔法士(キャスター)は居ねぇ···)


 ···誰か手を出してくると思っていたが、どこか見覚えのある冒険者がこちらに歩み寄ってきた。


 「おい。この国は獣人立ち入り禁止なんだ。立ち会った冒険者によって厳しく罰せられる···」


 冒険者は、またも剣を抜いた。人に対して、そう易々と向けて良いものじゃないはずだ···。にも関わらず、ニヤと笑む冒険者は、それを目の前で振りかざす。···?この冒険者·····。


 「やっぱり来やがったなぁ···行くぞ、お前ら。常識覆すぞ···!!」


 剣の柄に指を触らす型蔵君。それに続き、みんなも戦闘態勢をとった。そして、向こう陣も人が寄ってくる。


 「「おぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!」」


 牙をむく雄叫びのごとくあがるかけ声。互いに駆け出し、剣が、交わ―


 ゴォォォォォォォォォッ···········································。


 激しい音が響いた。それによる煙が僕らを覆う。一瞬のことに、どこから起こったのかも分からない。魔法か···?しかし誰が···。


 煙に包まれ何も分からない状況で、一つ、とてつもないステータスが表示されていた。


 [エミドレ·アルデリア:魔法士Lv.不明 atk.876 dfs.720 spd.992 mp.999 スキル:絶対王政]


 「いやぁ···すまない。でも···ここで暴れてもらうのは困るよ、少年ら」


 煙は徐々に晴れ、戦線の中央にその人は居た。華美な衣装を来たその人は、たった一人、ステータスがずば抜けている。僕は自分の鑑定を疑った。その数値は、文字通り桁外れなのだ。奥の、以前僕らが異常事態の報告をしたそこから、ギルドマスターが出てきた。


 「エミドレ、どうしてそう、魔法で解決しようとするのだ。スキルを使えば良いものを···」


 「やっぱり根っから染み付いているんだろうね。僕の戦闘好きは」


 場違いだ。剣を握っているのが馬鹿馬鹿しく感じる程、そして、その場に居た誰もが柄を握る手を緩めた。そんな中、中央に居たその人は僕らの前に立った。


 「初めまして。ここデルハツの国王を勤めさせてもらってる、エミドレだよ」

夏希はちょこちょこ英語(?)を挟んでしゃべります。

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