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1妄想は日常です

誤字脱字、訂正等ありましたらご連絡下さい。ほぼ初めての小説であるため生暖かい眼でご覧ください。

 木漏れ日が差し込む部屋に1人本を読む少女がいる。年は12歳といったところだろうか。本のページをめくる動作、垂れ下がる髪を耳へかける動作からも繊細さが伝わってくる。その長い銀髪に青色の眼からは聡明さが見られ、もしかしたら年はもう少し若いのかもしれない。少女は読み終わったのか本を閉じそして声を上げた。


「どうしてカイトとアルドはくっつかないのよ~~~~~!」


うららかな正午に少女の悲鳴が響き渡る。


---------------------------------------------

ここは大国のグロスヴァーグ。世界でも1、2番といわれる国家の郊外の屋敷に彼女はいた。屋敷にはほとんど人はおらず、彼女が叫ぼうが泣こうが歓喜しようが「いつものことか...」と納得できる人材しか配置されていない。


さきほど叫んだ少女はマリア。とある侯爵家の娘であり、容姿端麗、成績優秀、人あたりも良いと評判の娘である。その彼女が淑女としてもマナーも忘れ悲痛な叫びを上げるのには理由があった。


「どうしてここでカイトとサリーがくっついてしまうの!?知ってるわこれが恋愛小説だからってことは知ってるわ!でも私はカイトとアルドを推してたの。妄想だけど完全に付き合っていたわこの2人は!」


だいたいなんでぽっと出の女にこの2人の仲が引き裂かれるのよ。おかしいじゃない。途中までは良かったのよ。サリーと仲良くなったカイトがアルドとあまり遊んだりしなくなって、ギクシャクするシーンとか、アルドが別の男に乗り換える(別の友達と仲良くしているシーン)にカイトが心を痛めるとか、なぜ、それを、恋と呼ばないのか!?不思議で仕方ない。サリーもサリーで何が「2人は親友だもんね。私も2人がギクシャクするのはイヤだし協力するよ!」よ!何ですか正妻の余裕?展開的にくっつくのがわかっているとはいえ悔しい~。でもいいわ。公式ではカイ×サリでも私の中では一生アル×カイだから。


ふっと一息つくとノックが聴こえる。返事をするとメイドのクイナがお茶を持ってきてくれた。


「お嬢様、また発作ですか?キッチンまで聞こえてましたよ」


「あらそうだったの。ごめんなさい。ちょっと、自分の考えが暴走してしまって」


「まあ、いつものことですので気にはなりませんが」


そう話しながらお茶が用意されていく。ふむ、今日はカモミールティーにスコーンか。美味しそう。用意してもらったお茶に口をつけながら小説について考える。そもそもこの世界はBLの供給が足りないと思うのだ。小説だって、男女がくっつく物ばかりであるし男の登場人物が出てきてもBL的展開はほぼないといっても過言ではない。それっぽい描写を自分の妄想で補完するしかないのだ。それでも現代日本を生きていた私にっとっては供給不足。発狂する日々を送っている、というわけだ。


私が日本からこの世界に生まれ変わった?のは今から9年前、3歳の頃だ。特に自分が死んだという認識もないまま寝て起きたらこの姿になっていた。最初はお嬢様ともてはやされるのに何かの企画か?とも疑ったがお腹は減るし、眠くもなるし転べば痛いためここが現実であることを悟った。残念ながら日本で生活していたことはわかるが自分のことや家族のこと、生活などはあまり思い出せず、唯一記憶があるのはBLや推しカプのことだけだった。


それからというもの漫画はないし、小説も恋愛(男女)しかないため泣き喚きながら小説を読み漁った。読み漁りすぎて一応貴族としての教養をまともにやらなかったためお母様の逆鱗にふれ、一時期小説禁止された。それならば何も学ばなくて良い状態になろうと、教養やマナー、自衛手段にいたるまで10歳になるまで習得し結婚するまでは自由にしていいという許可を得た。そんなこんなで現在に至る。自由最高。


巷で流行っていた乙女ゲーム転生系の体験かと思ったが私は専らやったことがないためチートはできそうにないし、女を落とすぐらいなら男を落とせ!とか思ってしまうからたぶん意味がないだろう。とりあえず結婚も16からだし後数年は自由にできる。その内自分で小説を書くか、腐女子仲間を見つけることが目標だろうか。


焼きたてのスコーンを口に入れほろっとする優しい食感と甘すぎない生地が私の心を癒してくれる。聖夜に訪れる超人の赤い服を身にまとった聖人がいるなら今すぐBL本をねだったというのに。はぁとため息をつきながらスコーンをほおばり、お茶で口を潤す。至福のひと時である。


「お嬢様に旦那様からお手紙がきておりましたが内容はお読みになられましたか?」


「あら、そう言えばそんなのもあったわね。今読もうかしら」


クイナがいってくれなきゃ忘れるところだったわ。お父様からのお手紙は定期的に届くのでそこまで気にしていなかったのだ。しかし今回はいつもと内容が違い本日二度目の悲鳴を上げることとなる。


「な、なんですって~!」


この手紙がきっかけで良くも悪くも彼女の人生が変わることになるとは今は誰も知らない。

ありがとうございました。

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