27話 2つの記憶
先程、加藤が解呪してくれた時のビジョンが鮮明へと脳内に流れる
実験室……
その映像だった
忘れたいのに、忘れられない
苦痛の記憶……
私は幼い頃
彼らの元に現れた
パパ、ママ、2人の元に……
その時から、周り3面
コンクリートの箱に入れられた
残り、一面は
鉄格子
あはは……
猛獣の様な扱いだ
その日から実験台に上り下りの生活
食には不自由無い程度の自由
彼らは紅い眼で、いつも私に話し掛けていた
ある時、私は旅行に行った
その檻から出る旅行
コンクリートの1面は
暗い……
暗い穴が、空いていた
ソコから出た私は、暗い闇を歩く……
歩いても、歩いても終わりなど無い
戻ろうにも、入り口は無い
ふと、視線の先に
人影が在った
その場に蹲る…… 同じ位の歳の少女
どうしたの?
そう私は聞いた
顔を上げた少女は、私にとても似ていた
似ているのは顔では無い
何か別の物
ソレが似ていた
少女は言った
ココから出られなくなった
そう言っていた
私もだと告げると、一緒に出口を探そうと言った
手を取り、一緒に歩いた
手を繋ぎながら……
歩いて、歩いて、歩いて
不思議な感覚を手の平から感じる
今まで感じる事の出来なかった、道順が【解る】感覚
しばらく歩くと、光の穴が見えた
喜びで走る!
繋いだ手が外れた
直後、光の穴が消えた
また手を繋ぐと、光の穴が現れる
どうゆうことかな?
そう言った私に、少女は
そういう事なんだね……
そう答えた
そして
【ウチ】はココにもう在るだけなんだ
外に出たかったけど、もう出れない、外には体が無い
そう、少女は言った
私は言った
なら私が体になるよ、と……
子供ながらに根拠は無かったけれど、そう言われた少女は笑みを溢し……
「おーきに………」
そう言って、涙を流した
少女は私の小さな胸に手を置く
「邪魔はせんから…… 少しだけ……よろしゅう……」
そして、光になった
私はその光を両手に抱え、胸に当てる
何かが言う
その子が、言う
心に響く
「ウチの名前は泉…… 忘れんといて……」
「うん」
そう答えると、私は光の穴を潜った
ソコに戻った
闇の先は
【檻】だった
実験台以外に何も無い部屋
いつも見知った光景に逆戻りしただけ
ただ、それだけ
だが、2人は……
パパとママは、私の両眼を交互に覗き込み
「成功だ」と言っていた
私は初めて、パパの腕に抱かれた
それが嬉しくて……
優しくて……
ソノ感触が忘れられなくて……
私はまたソノ腕に抱かれたくて……
頭を撫でて貰いたくて……
私はパパの言うことを【遂行】した
ある時だ
私の檻に、女の子がやってきた
とても無邪気な表情を忘れる事が出来ない
すぐ、友達になった
初めての友達
いつも一緒に遊んだ
私達の遊びは、今思えばつまらない物だ
独りよがりのサーカス
そんな感じ
彼女は笑った
手を叩いて笑った
私はまたソレを繰り返す
私達の遊びは
ホント、サーカスの様な物だ
そう、私が、ただ……
実験台を宙に浮かせて移動し、クルクル回し、鉄格子に…… こすり付けて音楽を奏でる
そんな遊びだった
そして少女は絵本を持ってきた
ドコにでも在る様な童話
サーカスのお礼にと、実験台に仲良く隣り合わせに座り、おぼつかない口調で読んでくれた
本当に楽しい時間だった
そして彼女は
いつの日か
優しい顔を赤く腫らし
ごめんね
バイバイ
そう言い……
私の前に姿を見せなくなった