25話 信用、利用
桜子が生きている……
修も生きている……
体中の力が抜けた
私は膝をつく
泣きじゃくった
泣いて、泣いて…… 泣いた
声が枯れるまで、泣いた
どれほどの時を泣いたろう
私の傍で、腰を下ろし
背中を向け
2人はただ
私が泣き止むのを
静かに待ってくれて居た
「…… 落ち着いたか……?」
龍斗が私に声を掛ける
私は
「……うん」
そう答えた
そして
「修も…… 桜子も…… 藤田先生も…… ドコかには生きているのね……」
そう、呟く
ホッと肩をなで下ろす
ふと加藤に顔を向けた私
加藤は困った表情で私を見ていた
ん?
どうしたというの?
違うの?
そう思った時、加藤は言った
「藤やんはぁー…… 別だぁ……」
え?
つまり、どういう事!?
「先生はぁー…… もう居ないぃー……」
消されただけでは!?
そう言ったハズじゃない!?
「藤やんはぁー…… 龍斗がぁー…… 【壊した】からなぁー……」
龍斗を見る
悔しげな表情が俯いた姿からも伺える
「龍斗…… 貴方…… なぜ…… なぜ…… なぜよ!!!!?」
私は龍斗の胸ぐらを掴み、力一杯揺さぶった
その姿を見ながら、加藤が静かに口を開いた
「なぁー、胡桃ぃー…… お前の家に行きてぇー」
ビクリと私の体が跳ねる
「……でも…… そうすると……」
言葉を選ぼうにも…… どうすればいいのか……
「なぁー、胡桃ぃー…… 俺はぁ何でも識ってるぞぉー」
な、何を…… だ?
次は、何を言おうとしている!?
「お前のぉー親父だけどなぁー ソレはホントに父親かぁー?」
どういう事だ!?
さっきも【父親モドキ】と言っていた
「なぁー胡桃ぃー、本当にお前がぁ俺らを倒したかったらぁ救援呼べばぁいいんじゃねぇーかぁー?」
正論だ
だが……
ソレは無理だ……
なぜなら……
「私は…… パパの携帯番号を…… 知らないもの…… 無理よ……」
加藤は体育館の天井を背伸びしながら見上げた
そして、ひとしきり伸びた体を元に戻し、私を見た
「だろうなぁー…… 信用されて無ぇーんだなぁー 悪りぃケドよぉー……」
そう、口ずさむと、加藤は龍斗に目を移す
私もつられて見た
ソコには……
目を見開き、とても切なそうな表情の龍斗が私を見ていた……
何?
私は……
おかしな事を言っただろうか……?
そんな事を思った時、彼が龍斗に声を掛ける
「なぁー龍斗ぉー…… お前は親の携帯番号知ってっかぁー?」
「…… ああ、知っている……」
「…… だよなぁー…… 俺も知っているわなぁー……」
だから何?
それが普通なのだろうか?
親の携帯番号……
知ってるのが【普通】なの?
私は龍斗と加藤を交互に見た
淡々とした口調で話し始めたのは龍斗だった
「胡桃…… プロフェッサーは…… 悪いが…… 気を…… 悪くしないで欲しいんだけど……」
龍斗は一度、言葉を区切った
そして少し目を泳がせて、また私を見る
「お前を信用してない…… それどころか、利用しているだけだ…… 僕の時の様に……」
どういう事?
パパが私を?
まさか!?
そんなわけが無い!
でも何かをストンと全て忘れている気がして……
私はソレを、否定出来なかった……